受験シーズン
受験を前にピリピリとした空気が流れていた。
と、いうことはなかった。
始めの方に書いたよう頭は中の下、進学校ではなかったのだ。
「進路希望なんて書いた?」
「出してないよー」
「やっぱ?あたしも~」
ケラケラと笑いあい、化粧品の話題に花がさく。
真面目なグループの女の子たちは進学希望で勉強もしていたようだったが、私の女子高だと私立短大がいいとこで四大など指で数える程度だった。
では就職活動はというと、
「フリーターでいいよねー」
これまた気楽なものだった。
良くも悪くも私たちにはプライドがなかった。
いい学校に入って、いい企業に入って。
そんなことより彼氏との関係だったり、洋服や化粧品のことの方が一大事だった。
そしてなによりのステイタス、18になり彼氏が車を買ったかどうかが一番の関心事だった。
「年代物のベンツ買ったんだよね」
「えー!今週大黒来る!?」
「あたしも彼氏と行くよー」
「誰か乗せてくれないー!?」
大黒とは神奈川県にあるパーキングエリアだ。
走り屋、改造車の聖地でもあった(当時は)
受検より就職活動より、彼氏の車。
そんなことが重要だったのだから私たちは平和な時間を過ごしていたといえる。