表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

ななせさまって知ってる?

ねえねえ。ななせさまって知ってる?

知ってる。と言うかもう最近その話ばっかじゃん。旧校舎に暗くなったら近づいてはいけません。

七不思議に取り込まれてしまうから……ねえ、また出たの?

そう! 戻ってこれたけど、酷い目に遭ったらしいよ?

救急車が来てて。警察も。

わあー。

でも行方不明じゃなくて戻ってこれたんだ。よかったじゃん。

これで何人目?

知らなーい。もう10人は越えたんじゃないの?

最初は……なんだったっけ。

ヒロセ。

そう、広瀬って不良が子分たちと一緒に帰ってこなくて?

目撃者がいたんだよね。夕方山を登っていったって。

だから昼の校舎に見に行ったんだっけ? そしたら。

そうそう。……校庭と、理科室と、屋上に。

持ち物だけが残ってた!

きゃああああ!

噂の通り! 失敗したら、服の切れ端とかだけが戻ってくるって!

場所がその三つってことは。

校庭の墓地で一人、理科室の標本で一人。

屋上のななせさまで、一人。

あと、一人生存者がいたんじゃなかった?

そう、最初の成功者。

はじめちゃん。

ね、はじめちゃん。

帰ってこないから捜索願が出されて、見つかったのが校舎前。

マジうけるんですけど。完璧じゃんね。

だけどもう引っ越しちゃったんだよねー。つまんないの。

話聞けたかもしれないのに。

いや、無理っしょ。廃人になっちゃったって話じゃん。ずーっとね、「ななせさまごめんなさいいい子にします殺さないでお願いします」って言い続けてたって。

やばーい!

ななせさまやばーい!

あれ、でもさ。屋上で見つかった服の切れ端って、屋上まで行けたんならお願い事叶えてくれるんだよね?

不良だし、怒らせたんでしょ? ななせさまって性格は子どもだって話じゃない。

そうよ。裏旧校舎に入ったら、七不思議のテリトリーだから。

怒らせたら願い事を曲げられてしまう。だからいい子にしないと、ってね。

ちょっとさー。なんかマジで? やばくなーい?

でも、取り壊しの話はどうなったの?

ダメだって。心臓麻痺で現場の人が死んだからまた中止。お祓いの人が来て封鎖して、それで終了。

偶然でしょ?

立て続けに三人も逝っちゃうと思う?

嘘ー!

すごーい! ななせさまつよーい!

ちょっと、不謹慎じゃない?

でもでも、だって、ねえ。

そうね。やばくない?

ななせさま、いたんだ。

本当に、いたんだ。

見たって話、嘘じゃなかったんだ。

……じゃあ。

そうね。

お願い事、叶えてくれると思う?

他の七不思議をなんとかしないといけないんでしょ?

なんとかなるわよ。ルールは覚えてるでしょ?

覚えてる、覚えてる。小学校の頃、皆で唱えてたんだから。

時間は?

夜じゃなかった?

逢魔が時にも出てこられるらしいよ?

日が沈んでる間でしょ?

もー、これだから七星小学校の七不思議は。噂、噂でどれが本当なのかわからないし。

いくつかバージョンあるもんねー。

そうだ、ノート。ノートがあったはずよ。七不思議ノート!

何それ。

皆で話し合ったこと、一冊のノートに書いたんだよ。

ウッソそれ見ればいいって事?

どこにあるの?

新校舎のどこかに隠したんじゃなかった?

んー、どこだったっけなあ。

今度内緒で探そうよ。

そうね。

そうよね。

だって。

……面白そうだもんね。






 * * *


 七星小学校には旧校舎が存在する。閉鎖され、封鎖された進入禁止の校舎だ。

 いつからだろうか、こんな噂がみんなの間で流れるようになった。


 七星小学校の旧校舎には七不思議が存在する。夜の旧校舎に近づいてはいけない。彼らの世界に引きずり込まれてしまう。

 一つ目は校庭の墓地。

 二つ目は四階西の十三階段。

 三つ目は二階東女子トイレの合わせ鏡。

 四つ目は廊下の猫。

 五つ目は理科室の動く標本。

 六つ目は音楽室の勝手に鳴るピアノ。

 六つの不思議には、それぞれ対処法が存在する。出会ってしまっても正しい方法を知っていれば死なない。知らないと、殺される。


 六つの不思議すべてに出会ったものは、七つ目の不思議に会うことができる。

 見た目は10歳ぐらいの女の子。屋上で待っている彼女は、六つの不思議を克服した者の願いをなんでも一つ叶えてくれる。

 けれど七つ目の不思議はあまりに強力すぎる。平和に過ごしていたいのなら、名前を唱えてはいけない。


 彼女は大層耳がいい。自分を呼ぶ声をけして聞き逃さない。

 彼女をよんだ人間は、旧校舎に呼ばれる権利を得るのだ。




 ななせさま。




 その名前を呼んではいけない。何かを代償にしても、願い事を叶えたいと望む人間以外は。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ