7、康太くんは死んでません!
「ぎ、ギリギリセーフ!!」
「千紗!遅いよ!」
楓が私の机に落書きしながら待っていた。
「いやー、今日徹夜しちゃって…何書いてんの??」
「坂口の予想似顔絵図。」
「多分、そんなにヒゲとか生えてないし、髪薄くないし、短足じゃないと思うけど?」
「そうかなぁ?まぁいいんじゃない?」
「私は康太君のこと好きだけどなぁ。」
気付いた時には遅かった。口を滑らせてしまった。
「え?何々?あいつと何かあったの?もしかして徹夜もそれが原因?へぇ…親友に連絡もせず男と話してたなんて、これは取り調べの必要があるね…。おーい!真紀ー!ちょっとこっちきてー!」
私は真紀という人とは面識がなかったが、それらしい人物がこっちに近づいてきた。
「どーも、真紀です。楓がお世話になってます。」
お世話になってますって、、この子楓とどういう関係なのよ…。
「違う違う!私がお世話してあげてんの!」
そこは突っ込まなくていいから。
「この子は真紀。私のいとこなんだぁ。もともとこっちに住んでてねー。
」
「あ、もしかしてあなたが千紗ちゃん?」
真紀が口を開いた。
「ずっと話してみたいと思ってたんですー!なんかショートヘアの可愛い子いるからキャー!ってなってたんですけど、やっぱ恥ずかしいし、ずっと楓に話聞いてたんですよー!」
あー、いとこって似るもんなんだなー。てか、楓から今日真紀のこと聞いたし。
「あ、うん!よろしくね!」
「じゃなくて!真紀、聞いてよ!千紗、彼氏できたんだよ!しかも26歳!!」
「えー!10歳も年上なんですか!?千紗ちゃんやりますねぇ!」
「ちょ!楓ったら何言ってんのよ!26ってそんな人…」
「計算したらそうなるでしょ。」
あ、そうか。康太くん、こっちの世界では26歳なんだ…。
「じゃなくて!付き合ってないんだってば!!」
「でも徹夜して、電話してたんでしょー?」
「そ、それは…この電話が夢じゃなけりゃいいなーって…そしたら寝ないでおこうって思っただけで…。」
「もうそれ恋じゃん。」
「ち、ちが…」
「あ、あのー?」
黙っていた真紀が口を開いた。
「話の流れが掴めないんですが…。」
あ、そうか、真紀には何も話してないんだっけ。でも言っていいのかな…。
「あぁ、そうだったね。千紗、10年前の人に恋をしてるのよ。」
言っちゃったよこの人!しかも絶対にわけわからなくなってるよ!!
「ご、ごめんなさい!」
真紀が突然謝った。
「ど、どうしたの急に!?」
「まさか、亡くなっているとは思わなくて…でも10年前に亡くなった人をまだ好きでいるなんて、よっぽど好きだったんですね、その子のこと。」
「ち、違うから!死んでないから!多分今でもすっごく元気だから!!!」
楓には任せられないので、私は自分の口で全てを語った。
「まぁ、こういうことです。」
「へぇ、世の中不思議なこともあるもんですねー。」
「あんまり驚かないんだね、真紀ちゃん。」
「だって信じてないもん。」
さすが楓のいとこ。似てますな。
「その子の言ってること本当だよ、真紀。」
楓が口を開いた。
「その子の携帯、どこにかけても坂口康太って奴にしか繋がらないから…。かけてみれば?」
「あ、それいいね!」
そういうと真紀は私のカバンをあさり、携帯を取り出した。
…どこまで似てるんだ。この二人は。
そして真紀は123456780と数字を打ち込んだ。
「さすがにこれはかからないかな…。」
「…もしもし。」
「キャー!!」
真紀は私の携帯を上に投げた。それは運良く私の元に落ちてきた。
「な、何?今の悲鳴?」
「康太くんのせいだから大丈夫!」
「それって大丈夫じゃないじゃん!」
「てか、寝てたでしょ!授業は?」
「今自習中。まぁ、みんな遊んでるけどね。」
「そーなんだ。今から授業だから切るね。」
「お、おう。そんじゃー。」
康太は電話を切った。
「ほ、ホントだったんですね。」
「やっと信じてくれたんだ。」
「そんなの、信じる方がどうかしてるじゃないですか!」
確かにそうですね…。
授業のチャイムがなった。
「そんじゃ、また後でー!」
そういうと楓と真紀は私の教室から出て行った。