徹夜で遅刻
現在の時刻は午前五時。あのあと私は一睡もしてない。よくよく考えれば、こんなに自分の意思があるのに、夢であるはずがなかった。
……寝よう。
私は布団に潜り込んだ。
ピロピロピロ…ピロピロピロ…
なんなんだろうこの着信音は……。携帯にまたもや異常事態か!?
「おっはよー!!起きろー!朝だぞー!」
康太だった。さっきまでバイトだったのだろうか…。
「お、おはよう…。じゃなくて、一睡も寝てないんですけど……。」
「あ、俺も俺も!今帰ってきたところだし!」
「その割には元気だけど、どしたの?」
「え?聞きたい?聞きたい?」
「いや、別に」
「聞いてください、お願いします。」
「…どうぞ。」
「よくぞ聞いてくれました!」
いや、特に聞いてはいないんだが…。
「なんと!バイト先の女子大生のメアドゲットしちゃいましたー!
………………。
……………………。
「おやすみなさい。」
「じょ、冗談です…。ごめんなさい。」
「で?ホントは何なの?」
康太は黙り込んだ。
「おーい、切るよー?」
「なんでだよ!?まぁ、この話はまた今度な!」
「な、なんでよ!?」
「とけい、見てみ?」
私は机の上にある時計を見た。時刻は午前7時半。
……遅刻する!!!
「か、帰ったらまた電話するから!」
「お、おう!待ってる。」
私は電話を切った。
「お母さんおはよー!」
「何がおはよーよ!」
なぜか母が切れている。
「な、なんで怒ってるの、お母さん?」
「怒ってはいないけど、あんた今日寝てないでしょ。」
ギクゥ…
「な、なんでわかったの!?」
「あんた、声大き過ぎなのよ!それに楓ちゃんにも迷惑かかってない?」
「あ、大丈夫!楓じゃないから!」
「え?あんた他に友達いないでしょ?」
…………!!しまった。
「もしかして男!?男なの!?お母さん何も知らないわよ!?なんで言ってくれないのー?お母さん応援するのにーー!で、どんな子なの?カッコイイの?身長は?体重は?好きな食べ物は?今度ウチに連れていらっしゃい。お父さんと四人でご飯食べましょう!あ、でもまだ高校生なんだから、不純な行為はしちゃダメよ!わかった!?」
「わかった!わかったから早くご飯作って!!」
こうなると母は止まらない。そんなに私を嫁にやりたいのだろうか。
「今日お父さん早く帰ってくるから、今日食べる?彼氏に聞いてみなさい!」
「ま、また後でするから!」
こうして、康太は私の彼氏になったのであった……。というのは、私がかわいそうだからやめておこう。
「それよりあんた遅刻じゃないの?」
「母さんがうるさいからでしょ!!」
私は身支度を済ませ、家を飛び出した。