合コンもどき
あ、暑い……暑すぎる……
今って冬なのになんでこんなに暑いのだろうか……。
「それは千紗がわたしに密着してるからです!」
私の上から声が聞こえてきた。
「……あ、真紀。なにしてんの?」
「千紗が抱きついてるから動けないんだけど……。」
「いやいやいやいや、誤解されるようなこと言わないでよ。これは真紀が逃げないようにしがみついてるだけだよ?」
「同じでしょ!」
真紀は私を蹴ると、ベッドから飛び退いた。
「ちょ!何すんのよ!?」
「どっちが悪いか考えてみてよ!」
…………多分私だ。
「ごめん……。」
「わかればよろしい。」
「あら起きたの?」
奥から先生が顔を出した。
「なんかお腹空いちゃったんで……。」
時計を見ると昼過ぎになっていた。
「じゃあ、弁当でも食べなさい?持ってきてるんでしょ?」
「あ!忘れた!」
「私も……。」
まぁ久しぶりの学校だからね……。
「じゃあ、先生結構作ってきたけど食べる?」
「あ、じゃあ遠慮な……」
「すいません先生!学食行ってきます!」
私は真紀の首根っこを掴むと保健室を飛び出した。
「な、何すんのよ千紗!先生のお弁当食べたかったのに!」
「私はあれ食べて倒れちゃったの!!」
「真紀が体が弱いだけでしょ!」
真紀はそう言うと頬を膨らませる。
私がおかしいんじゃなくて、真紀がおかしいはずなのに、なんで言い負けてるんだろう……。
「と、とりあえずお願いだから学食ついてきてよ……おごるからさ……。」
「いいけど、私への貢物は高いよ?」
なによ貢物って……
「コレとコレとコレ!」
「はいはい。カレーと日替わり定食とデザートのパフェだね?代金は1700円よ?」
「あ、後ろの彼女が払ってくれるんで!」
そう言いながら真紀は私を指差す。1700円て……友達と思ってくれているなら少しは遠慮なして欲しい……。
「あ、あそこ空いてるから座ろっ!」
真紀は両手でお盆を持ったままテーブルに駆け出す。
なんで何も持ってない私より早いんだろう……。
「よかったよかった!最後の席だったね!」
「う、うん……。」
座った途端に、真紀は勢いよく目の前の食事にがっつき始める。よくよく見ると、パフェをもオカズにしていた。
「それにしてもよく食べるよね……。」
私の言うことなど聞くことなく、真紀は食事を続ける。
「あ、あのー?」
私の背後から高い声が聞こえた。
「あ、千秋ちゃん!」
振り向くとそこには弁当を持った千秋がいた。
「わ、私も一緒に食べていいですか?」
「い、いいけど友達は?」
「わ、私普段学校来ないから友達いないんですよ……。」
一瞬かわいそうだなと思った私だったが、友達と言える友達はこの学校に真紀しかいない私だった。
「今日はバイトないんだ。」
「いえ、休みもらってるんです!保健室の先生が今日二人が来るって教えてくれたから。」
私と真紀は顔を見合わせた。
「私たちに何か用があったの?」
「あ、はい!合コン行きませんか!」
「はい?」
「行きます!行かせてください!」
私の返事とは裏腹に真紀は目を輝かせて立ち上がった。
「ち、千秋ちゃん、合コンて?」
「ご、合コンじゃないんですけど、他校の男子にナンパされちゃいまして、今度複数で遊ぼって約束しちゃったんです……。」
「そ、それはまたすごいことになったね……。」
「だから一緒に来てください!」
「もちろん!」
「ちょ、ちょっと待ってよう真紀!相手がどんな人かもわかんないし……。」
「じゃあ、お願いしますね!」
私の意見が聞かれることなく、行くことになってしまった。
「でさ、いつ行くの?」
真紀が残りのパフェを食べながら聞く。
「今からです!」
「…………え?今から?」
「はい!今からです!先生には二人の早退届も出しておきましたから大丈夫ですよ!」
なんで、私らに聞く前に出してんのこの子……。
「そうと決まれば行きますよ!」
「おぉー!」
テンションの高い二人についていけない。
「何してんの?早く行くよ?」
首根っこを掴まれ私は引きずられるように学食を出た。
「で、どこに集合するの?」
「アキバです!」
「お?いいじゃん!」
「……わかったからそろそろ離してよ!」
校門を出ても真紀は私の首根っこを掴んだままていた。
「あ、ごめんごめん!完全に一体化してたよ!」
真紀は手を離した。
「じゃあアキバ早くいこっか!」
真紀と千秋は地面に座っている私を置き去りにしたまま歩き出す。
「ま、待ってよ!」
私は二人を追いかけて走り出そうとしたが……こけた。
「な、何やってんの千紗?」
「あ、アキバへの拒絶反応かもね……。」
そんなありもしない反応名を言いながら、私は真紀と千秋のもとへ歩き出した。
「ここで待ち合わせしてるんだ。」
ついた場所は真紀が働いている場所だった。
「ねぇ、まさかとは思うけどさ、相手ってキモオタとかじゃないね?」
「そ、そんなことないよ!ちゃんとした人間だよ!!」
そりゃ、人間だろうね……。
私たちはドアを開けて中へ入った。