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未来の君への贈り物  作者: 宮渡 暁
二つの日常
33/41

…………。

「千紗!起きて!起きてってば!」

「んー?どーしたの真紀?そんなに慌てて。」

「何言ってるの!もう9時だよ!完全に寝坊じゃん!」

私は時計に目をやった。時計の針は9時どころか10時を示していた!

「な、なんで誰も起こしてくれないの!?」

「おばさん、7時くらいにどっか行っちゃってさ、私、学校行きたくなかったから起こさなかったんだけど、さすがに罪悪感みたいなものが出てきて……。」

「出てくる前に起こしてよ!」

「てか、携帯鳴ってたよ?」

私はピタッと動きを止めた。そーいえば昨日電話するの忘れていた気がする……。

「真紀!今日は学校サボるよ!電話取って!」

「あいよっ!」

そう言うと真紀は私に携帯を投げた。

「も、もしもし康太くん!?」

「千紗〜。いつまで寝てるんだよ〜。」

電話の向こうから、康太の待ちくたびれました〜とでも言わんばかりの声が聞こえる。

「ご、ごめん。いろいろあってさ。」

「わかってるよ。夜中に真紀ちゃんから電話かかってきたからね。」

私は真紀の方を見た。私の視線に気づいた真紀はピースして私に返す。

「まぁ、俺も無責任なことしたし、楓ちゃんには悪いと思うけどさ、どうしようもないじゃん?」

「う、うん……そうだけど……。」

「あ、そうだ。今日のこと決めないとな。そっち行っても会えなかったら意味ないし。」

康太は無理やり話をそらした。

「もう少しでコッチからそっちに行くんだけど、待ち合わせ場所どこにする?」

「え……あ……えっと……AKマンションの康太くんの部屋はどうかな?」

「わかった!じゃあそこに5時な!今度は寝てましたぁ、は通用しねぇからな?」

「も、もう寝ないわよ!」

康太は少し笑うと、最終準備があるからと言って、電話を切った。

「いよいよなんだね!」

なぜか真紀も興奮していた。

「真紀は楓のとこ行くの?」

「うん、ちょっと心配だし。まぁ、千紗が帰ってくるよりは多分早く帰るかも。」

苦笑いをしながら真紀が言った。

「そっか。まぁ、後で様子教えてよ。何か食べる?」

「パプリカ食べたい。」



…………え?パプリカ?

なんかいい感じにここまで来てたのに、なんでいつも最後はこういう感じになるのだろうか。



「そのままでいい……?」

「うん。」

私は台所に行き、冷蔵庫を開けると、2.3個パプリカを取り出し、真紀に渡した。

「ありがと!今これの気分だったんだ!」

そう言うと真紀はパプリカにかぶりついた。

……パプリカの気分てどんなのだろうか。

そうこうしているうちに時間は流れ、私と真紀は出かける準備をし始めた。

「はぁぁ、緊張するねぇー!」

「真紀は別にしないでしょ!」

「想像だけでも興奮するよ!どんな人なんだろー、とか。写メって来てよ?」

「はいはい。」

そんな会話をしながら私たちは家を出た。


「…………もしもし康太くん?今からAKマンションに行くの!たぶん先に着いてるから中で待ってるね!」

「あぁ、こっちも予定通りに行きそうだから5時まで待っててくれ。」

そう言うと私たちは電話を切った。

康太くんが来るまであと30分。待ちきれないなぁ……。


AKマンションに着いた私は管理人に事情を説明し康太くんの部屋に入れてもらうことができた。

時計を見る……5時まで残り15分。あれからまだ15分しか経っていないのか。私は畳の上をグルグル円を描くように歩き始めた。また時計を見る……残り14分。

「まだ1分しか経ってないじゃん!」

もう一回同じことをやってみる。粘ったつもりだったが、今度は45秒しかもっていなかった。

「て、テレビでもつけよう!」

最近のテレビはいろいろあるが、今日はどれも見る気にならなかった。

まだ12分ある……。長いなぁ……。


…………ガチャッ


扉の開く音が聞こえた。

もしかして康太くん!?

私は一目散に扉の方へ向かった。

「康太くん!!」

けれどそこにいたのは康太ではなく楓だった。

「か、楓……。なんでここに?」

「い、いや……ここにきたら康太くんに会えそうな気がして……。」

楓は俯いた。

「ご、ごめん!」

楓は反対を向くと走り出した。

「ちょ!楓!待って!」

私は逃げる楓を追いかけたが、やはり楓には敵わない。マンションを出ると、すぐに見失ってしまった。

「……とりあえず、部屋に戻ろっ。」

気がつけば5時になっていた。部屋に戻りながら、私は康太に電話をかけてみることにした。


この電話番号は電波の届かない場所にあるためかかりません。


あれ?


もう一度かけてみる。


この電話番号は電波の届かない場所にあるためかかりません。


やはり繋がらなかった。まぁ、部屋で待ってればいつか来るだろう。

そう思った私はマンションの部屋で待つことにした。

「康太くん、遅いなぁ。」

待っている間に数回電話をかけたがやはり繋がらない。その間にも時間は過ぎてゆき、7時を回った。


康太くん、何かあったのかな。

「千紗いるー?」

真紀の声が聞こえた。

「あ、真紀……。」

「康太くん、来なかったの?」

「う、うん……。」

私は俯いて答えた。

「さっき楓に会ったんだけどさ、なんか口聞いてくれなかったよ……。」

「楓、さっきここにきてたよ。ここに来れば、康太くんに会えそうな気がするって言ってた。」

「とりあえず、今日は帰ろうよ。千紗のママさん、心配してたし。また明日来てみたらいいじゃん。」

そう真紀に言われ私はゆっくり立ち上がる。

「明日、早起きしなきゃだね。」

「真紀はどうせ徹夜じゃん。……ついてきてくれる?明日。」

「もちろん!」

真紀が笑顔で答えてくれた。

外はもう真っ暗になっている。

康太くんは今どこにいるんだろう。そんなことを考えながら、私は自分の家へ歩き出した。

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