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未来の君への贈り物  作者: 宮渡 暁
二つの日常
31/41

転校?

ね、眠い。完全に寝不足だ……。なんで、わけがわからないゲームに一日費やしたのだろうか。

「ま、真紀……起きて。学校遅刻しちゃうよ。」

「あと6時間くらい寝ないと無理ー。」

ホンキでシバいてやろうかと思ったが、そんな力は私のどこにも残っていなかった。

「そーいえば今日から新しいアニメが始まるって楓が言ってた気がするけど……。」

「……な、なんだって!?」

アニメパワー恐るべし。真紀は飛び起きると、すごい音を出してリビングへ行った。


「お、おはようお母さん。」

「……また徹夜したんでしょ?」

「……ごめんなさい。」

「でも真紀ちゃんはすごいわよねぇ。徹夜してるっていうのに、あんなに目を輝かせてアニメ見てるんだから。」

母の視線を追いかけると、アニメの世界に完全に入り込んでいる真紀の姿があった。

「真紀はコレが本職だから。」

「それ、ニートってことよね?」

あ、じゃあ違うかもしれない。

「早くご飯食べて学校行きなさい。楓ちゃんの様子も気になるし。」

そういえばあれから楓の連絡は一度もなかった。

「まぁ、学校行ったらどうせ会うでしょ。」

「だといいんだけど……。」


家を出ても私はフラフラしていた。もうこのまま立って寝れそうだ。それに自然の顔が笑ってしまう。何がおかしいんだろう。てか、多分今の私は他の人から見たら、ただの変態に見えるかもしれない。

「千紗!足元ふらついてるけど大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃないかも……。」

なんで私と真紀はこんなにも違っているのだろうか。真紀は私の前でアニメキャラクターのポーズの練習をしながら歩いているが、私より歩くペースが早い。

「真紀って人間の限界を超えてるのかもしれないね。」

「へ?どういうこと?」

私のさりげない一言に真紀が反応した。

「いや、だって私と一緒に徹夜したのにさ、メッチャ元気だもん。凄いよそれ。」

私がそう言うと、真紀は笑いだした。

「よく言われるけど違うよ!徹夜してるけど脳からの神経はしゃっとだうんしてるから脳使われてないんだぁ。だから寝たことになってるんだよね!」

「何それ?医学で実証されてるの?」

「んーん、私の考えだけど?」

やはり真紀の考えはイマイチ読めない。

「あ、早くしないと予鈴鳴っちゃうよ!」

そう言うと真紀は全力疾走で校舎に向かって走り出した。

「ま、待ってよぉ〜……。」

足をフラつかせながら、私は真紀の後を追った。


「ぎ、ギリギリセーフ……。」

教室に着いたとたん、一気に力が抜けた。自分の机にうつ伏せになった私は、当分の間この状態から動くことはないだろう。

「千紗ちゃん!」

話しかけてきたのはアキバのメイドカフェでバイトをしている千秋だった。

「グッタリしてるけど大丈夫?」

「千秋ちゃん、私、もう無理かも知れない……。」

「そ、そんなこと言っちゃダメだよ!高校で別れたとしてもずっと友達でいられるでしょ!」

もしかして康太のことを言っているのだろうか。

「誰から聞いたかはわからないけど、今の彼氏とは別れないよ?」

「へ?なんのこと?」

「え?じゃあそっちこそ何言って……。」



「楓ちゃん、転校するんでしょ?」



ガタガタッッッッ!!

「ど、どういうこと?」

「え、今日先生たちが話してたの偶然聞いたんだけど、楓ちゃん今日突然退学届出して学校辞めたんだって。……え?知らなかったの?」

私は勢いよく立ち上がると真紀のクラスに走った。

「ちょ!千紗ちゃん!」

千秋が私を呼んでいたが私は止まることなく走った。

「ま、真紀!どういうこと!」

クラス中の視線が一気に集まる。

「ち、千紗ぁー!私も何が何だかわかんないよぉ〜!」

真紀も完全に困惑した表情だった。

「と、とりあえず保健室に行こう!先生なら何か知ってるかもしれない!」

私は真紀を連れると、保健室へ走り出した。


「せ、先生!」

「ど、どうしたの千紗ちゃん!そんなに慌てちゃって。」

「楓が……楓が学校辞めちゃったんですけど……。」

先生はふぅー、と一呼吸つくと、私と真紀をベッドへ座らせた。

「昨日楓ちゃんから電話あってね、2人のことをよろしくお願いしますっ!って言われたわ。私も最初は意味がわからなかったんだけど、楓ちゃんの話を聞いているうちに止めるに止めれなくなっちゃって……。」

「楓が学校辞めた理由ってなんなんですか!」

私は先生を問い詰めるように聞いた。

「……楓ちゃん。やっぱ康太くんが好きみたいなのよ。」

「…………はい?」

「おかしいわよね?まだ会話も全然してないのに、一度や二度話しただけで自分の理想の男性だ!って言うんだから。」

先生はフフッと笑うとアップルティーを入れ始めた。

「でも好きになったもんは仕方ないわよねぇ。じゃあ当たって砕けるの?って聞いたらなんて言ったと思う?」

アップルティーを私と真紀に渡しながら先生は言った。

「そんなの嫌だから忘れることにします!だって。でも明後日にはこっちにくるんでしょ?って聞いたら、会わないようにします!って言っちゃってさぁ。まさかこういう方法で会わないようにするなんてねぇ。」

「わ、私ら何も聞いてないんだけど……。」

「言えるわけないでしょ。あなたたち2人に話してもどうせ止められるだけじゃない。それで千紗ちゃんとの関係も壊したくないって言ってたわ。」

「そ、そんな……。」

「まぁ、真紀ちゃんは親戚だしいつでも会えるでしょ。また様子とか聞かせてよね。」

「は、はい……。」

「先生、1時間だけ寝てってもいいですか?ちょった体調が優れなくて。」

「あ、私もお願いします。」

「今日は特別よ。」

いっつも特別な気がしたが、突っ込む気になれなかった。

私はベッドの毛布を深くかぶると、そのまま眠りについた。

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