私たち付き合っちゃおうか
康太くん、今何してるんだろ…。
私は枕に頭を押し込みながらそんなことを考える。
てか、あの康太くんの言葉って、ホントに付き合ってほしいってことだったんだろうか。もし向こうはただ好きなだけで、付き合うとか全く考えてなかったら…。
その時のことを考えると、私は顔から火が出るほどに恥ずかしかった。
と、とりあえず電話をかけて確かめよう。
電話が鳴ったのはそんなことを考えている時だった。布団から飛び起きた私は、その勢いで床に落ち、さらにその勢いで机の上の物が全部落ちた。だが、そんなことは御構いなしに電話は鳴り続けている。
「も、もしもし?」
少し声が上がってしまった。もうこの時点で恥ずかしい。
「ど、どうした?声上がってるけど?」
やっぱ気づかれたか。
「全部康太くんのせいだから安心して。」
「いや、そんなこと聞いて安心するやついねぇだろ。」
と、康太が突っ込む。やっぱこのままの関係でも楽しいし、別に付き合う必要なんて…。
「あ、千紗。」
康太ご口を開いた。
「そーいえば昨日、俺好きってことしか伝えてなかったから言っとくわ。俺と付き合ってください。」
「…え?」
いやいや康太くん、今私このままでいいかなぁなんて思ってたとこなのにさ、急にそれはずるくない?
「あーもう!康太くんがこっちに来られたら考えてあげてもいいよ!」
「え?まじで!?」
甲高い声が電話から響く。
「じゃあ、明日にでもタイムマシン完成させよっかな。」
「え?明日?」
「うん。俺明日からアメリカだし。」
「そんな…急すぎるでしょ!?」
「しゃーねぇーじゃん。」
「1秒でも早く千紗に会いたいからさ」
こんなこと言われてキャー!ってなる女の子は日本人女性のうち5割、残りの半分は「何キザってんだよ!」とかかもしれない。私は前者だった。
「そ、そんなこと言われても…、ウチは何もときめかないから!だ、大体!あったこともない人によくそんなこと言うよね!もしかしてそっちの女に何人にも手をかけてんの?」
「まぁ3人くらいだけど?」.
康太は千紗の発言に平然と答える。
「ほうほう、私はその四人目ってことですか?…死ね!」
「冗談だって!これは千紗の興奮を抑えるためのものであってだな…」
「今は違う意味で興奮してるんだけど?」
そういうとお互い笑い始めた。理由を聞かれると、何がおかしいとか多分わからないのだが、それでも自然と笑ってしまった。
「やっぱ千紗最高だわ。」
「いやいや、康太くんには負けるよ。」
そしてまた二人とも笑い出す。ヤバい、私たち絶対病気だ。
ようやく笑いが収まった頃には、時計の長針はもう一周していた。
「アメリカ行っても電話できるよね?」
「え?したいの?」
こういう時の康太は意地悪だ。私に選択肢なんて限られているのに…。
「あー、うん。したいですー。」
「聞こえなーい。」
「させてください、お願いします。」
「こちらこそ不束者ですがよろしくお願いします。」
そして二人とも笑い出す。一体何が面白いのかもわからないのだが…。まぁ意のままに任せてみよう。
「康太くん。」
私は少し笑いをこらえて彼の名前を呼んだ。
「私と付き合ってください。」
電話の向こうで聞こえてた笑い声が急にとまる。
「お、俺は千紗と違ってモテるからな。予約候補の10個のうちには入れといてやるから。」
「じゃあ、他の人にも悪いしキャンセルを…。」
「ごめんなさい。お付き合い受けさせていただきます。」
こんな感じで私たちは付き合うことになった。なんか理想と遠くかけ離れている気がしないでもないがこの時の私はすっごく幸せだったから、それはそれでよしとしよう。
「あれ?急に眠気が…。」
「寝ろよ。」
「いや、でも時間がもったいないし。明日康太くんアメリカ行っちゃうし。」
襲ってくる睡魔の中私は必死に話した。
「別に夜には向こうについてるから電話できるよ。それより千紗あんま寝てないんだろ?ホント寝ろよ?」
「で、でも…」
その後のことは覚えていない。多分そのまま寝落ちしたのだろう。朝になって電話をみたときにはもう電話は切れていた。