1.携帯電話
タイムマシンもなくて
ただ、電話で会話するだけだけど
見えないあなたに恋をしました。
あなたは今どこにいますか?
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。6時には帰ってくるのよ。」
私は勢いよく家を飛び出し、駅に向かった。
東京に引っ越してきて二週間、高校でできた友達と早速東京見物に行くことになった。
お互い東京に引っ越してきたということですぐに打ち解け、今日にいたるわけである。
「遅いよ千紗!」
「ご、ごめん楓!」
私は息を切らしながら謝る。
「今日すっごく楽しみだね。私東京親なしで回るの初めてなんだ~。」
「ウチもよウチも!てか電車大丈夫かな!?」
電車の出る音が聞こえる。
私と楓は急いで電車に乗った。
そして……迷った。
「東京…電車多すぎでしょ……。」
「いいところであり悪いところだよねぇ。」
私と楓は顔を見合わせ、思い切り笑った。
「とりあえずどーする?」
楓が聞いてきた。
「母さんに電話してみるから待ってて!」
トルルルル……トルルルル…ガチャ
「あ、お母さん?電車間違っちゃった。どうしようか…。」
返事はない。
「おーい!お母さん!!」
「あの…。」
母とは違って低い男性の声が聞こえた。
「間違い電話だと思うんですけど…。」
「あ、ごめんなさい。」
そう言うと相手は電話を切った。
……電話帳からかけよっと!
……トルルルル…ガチャ
「あ、お母さん?私だけど?」
「…さっきからなんなんですか、いったい!?」
さっきと同じ男の声が聞こえた。