第三話
ちゃんとした戦闘シーンは次回です。
シュラウドたち3人は王都から北にあるミスカの森にいた。ミスカの森は王都と北の町テプトルをつなぐ道になっている。最近ではここらに盗賊が住み着いて、この道を通るものを襲っているとアリシアが話してくれた。盗賊による被害は相当なもので、近々ハンターたちを募って討伐にでるらしい。しかし、盗賊がでるのは、シュラウドたちがいるところより、もっと奥だということだ。
少し歩いて、すぐにホビーラビットは見つかった。ホビーラビットはFランクの魔物で、ピンク色のふさふさした毛皮していて、前歯が大きく出っ張っている。たいした攻撃力はなく、足もそれほど速くはないので、倒すのはたやすい。
シュラウドは、レイネをアリシアにまかせ、1人前に出る。そして、腰に差してある鞘から刀を抜く。抜かれた刀の刀身は黒く鈍い輝きを放っている。
すばやくホビーラビットに近づいたシュラウドは、刀を一閃させる。その太刀筋は見事なもので、何より早かった。シュラウドは次々とホビーラビットを切り伏せていく。
アリシアはそんなシュラウドの戦いに見入っていた。腕があることは分かっていた。シュラウドが放つ雰囲気や歩き方からそれはみてとれた。いままでいろんな剣士をみてきたアリシアだったが、これほどまで鮮やかで、洗練された剣技というものを見たことがなかった。
ホビーラビットはFランクの魔物であり、ただの雑魚だ。彼女はBランクのハンターで、ホビーラビット程度ならどれほど数がいようと傷一つ付かずに勝つことができるだろう。それでも、彼女はシュラウドの剣技に魅了されていた。
シュラウドはホビーラビットを倒し、王都を出るときに借りてきた荷車に乗せた。ここで皮を剥がないのはあとに残る肉がもったいないからだ。王都に戻り、肉屋にホビーラビットを持っていき、そこで皮を剥いでもらい、残った肉は買い取ってもらえばいい。皮を剥いでもらうための代金は取られてしまうが、それでも買い取ってもらった肉の代金と依頼報酬で儲けが出て、肉は余さず食べられることだろう。それに何よりずっと旅を続けているシュラウドはそれほど金を持ち合わせたはいない。いままでは傭兵の真似事をして稼いできたが、レイネと旅を続けるならハンターになったほうがいろいろと便利だと思いハンターになったのだ。
シュラウドはホビーラビットを荷車に乗せ終わり、レイネとアリシアに近づいていく。
「シュラウド。おつかれ」
「おつかれ。見事だった。あれほどの剣技はいままで見たことがなかった」
「何言ってんだ。あんなのどうってことないだろ。相手が雑魚だっただけだろ」
「いや、それでも私はシュラウドの剣に圧倒されてしまったよ」
感心したように自分を見つめる宝石のような碧眼に、シュラウドはどこか照れたように頭をかきながらアリシアから目をそらす。実はシュラウドは褒められることにあまり慣れていない。それゆえに褒められるとむず痒くなってしまう。
「シュラウドには師匠はいるのか?それは刀のようだが、トウショウ国で剣術を学んだのか?」
「あれを師とは呼びたくないが、ある人物から戦い方を学んだ。刀を使ってるのは、以前トウショウ国にいったときにこの刀に惚れ込んだからだ。」
そう言ってシュラウドは、刀を抜きアリシアに見せるように刀を上に掲げた。黒い刀身に切っ先は鋭く、刀身にみられる波紋は魔力を秘めているような怪しい波並をしている。刃渡りは80センチと長く、刃はとても鋭く触れるものすべてを切ってしまいそうなほどで、「折れず、曲がらず、よく切れる」といった、3つのそう反する性質を達成し、さらによく切れるを究極まで高めたような刀である。
「こいつの名は黒刀『斬』。黒刀というだけに頑丈で、なにより斬ることに特化させた刀だ」
「魔力を秘めてるように見えるが……」
「その刀にはね……とても強い想いが込められてるの」
「レイネの言うとおり、この刀には作った刀匠の強い思いが込められているみたいだ。魔力を帯びているのは、この刀が自身を劣化から守るために、使用者から魔力を吸収するためだ」
初めてこの刀を手にしたとき、刀匠だろう人物と使用者であろう者たちの記憶と感情が流れ込んできた。刀が見せた光景は凄惨で悲しいものであった。流れ込んでくる感情は悲しみと怒り、そして、強い憎しみだった。
この刀を手にしたものは殺戮衝動に駆られ、自らを見失い、周囲の者を殺し、自らもその刀によって死ぬとこの刀を知っている者は言っていた。
おそらく流れ込んできた強い憎しみに当てられて自我が崩壊したのだろうとシュラウドは思っている。
「つまり使用者から魔力を供給できるかぎり、半永久的に切れ味を保っていられるということか?」
「まぁ。そうだな。」
彼女の言うとおり、魔力を与えつづけるかぎりこの刀は刃こぼれつらすることがない。ただ、いままでに吸収してきた魔力をすべて劣化を抑えるためだけに使っているわけではないだろう。
使わずに保持してある魔力がどれほどのものかシュラウドも知らないでいる。
「アリシアの剣にも魔力があるな……魔法剣か」
「!……よくわかったな!」
魔法剣であることを言い当てられて驚きながら、シュラウドが自分の腰にある剣を見ていること気づき、自らの剣を抜いてシュラウドとレイネにみせる。
「すごく綺麗な剣だね」
「あぁ。トウショウ国にある桜と同じ色をしているな。剣が発している魔力といい、相当な名剣だな」
アリシアの剣は細く、刀身が鮮やかな淡紅色をしている。桜はトウショウ国にのみ存在する樹で、春になると綺麗な白色や淡紅色の花を咲かせる。
淡紅色の桜のほうが白色の花を咲かせる桜より多く存在していて、昨今では春になるとトウショウ国に花見をしに訪れる者が多い。それは貴族や王族でも例外ではなく、トウショウ国の桜を絶賛している。
「ん?この剣、刃のところにつなぎ目が……」
「気づいたか。この剣はトウショウ国で修業したという鍛冶師に作らせたもので、刀身を複数の刃でつなぎ合わせて鞭のようにしなり、伸び縮みできるように刻印を施してあるんのだ。伸ばせる距離は10メートル程度だが、この剣に施されている風の魔法で剣の周りに風の刃を発生させ、それで敵を切り刻むことができるのだ」
どうだすごいだろう、と言わんばかりに自慢げに口元を笑みにした表情で剣を鞭のように振り回す。
彼女の言った通り、剣を振るうと鞭のようにしなり、伸び縮みする。振るった剣からは風の刃が発生し、空気を切り裂く。
剣を振る彼女は凛々しく、華麗で、男なら惚れ、女ならその姿に憧れるだろう。げんに隣にいるレイネは彼女の凛々しい姿に憧れや感心の眼差しでみつめている。
レイネの身体能力はさほど高くない。同年代の少女より低いかもしれない。細い腕は非力であり、剣を持ち上げるのがやっとなのではないかと思う。それでもレイネにも少年少女が抱くであろう、勇者や美しく強い女剣士の英雄譚に関心があるのかもしれない。
剣など振って綺麗な手にまめを作ってほしくないとシュラウドは思っている。
身体能力はなくとも強い力をレイネは持っている………
やっと剣を収めたアリシアにレイネはすごいと褒め、アリシアはレイネに褒められたことが嬉しのか笑顔を見せている。最初は凛々しい姿から騎士のような固いやつなのかと思っていたが、思ったより表情は柔らかく、よく笑みをみせる。
よく考えれば、ハンターをやっている時点で、騎士のような固さを持っているはずがなかった。そうでなければハンターなどやっていないだろう。
アリシアが笑顔を見せるとレイネも笑う。あまり表情を変えないレイネではあるがアリシアに会って、彼女に感化されたように表情を変えるようになった。
(まぁ、俺の前ではいろんな表情をみせるけどな。それにレイネのことを一番理解しているのも俺だろう)
と、アリシアに対して対抗心を燃やすシュラウド。
「さて、そろそろ王都に戻ろうか。暗くなれば危険がます」
空はいつの間にか闇にそまってきていた。もっと暗くなってくれば夜行性の魔物が活動しだしてくる。 ミスカの森には危険な夜型の魔物は生息していないが、それでも人に存在が認知されていない魔物もいるかもしれない。なにより、襲ってくるのが魔物ばかりとは決まってはいない。残念なことだが人にとって危険な存在は自然と魔物。そして、人間なのだ。人間は、家族、友人、恋人または国や誇りといったものために戦うことができる。誰かを愛すことができる。知能が高く、手先が器用で、魔法を剣を扱い、さまざまなものを生み出すことができるのが人間だが、自らの欲のためなら同じ人すら殺し、欲のためにどんなひどいことでも行えるのも、また人なのだ。
この辺りには盗賊がいる。盗賊はミスカの森を通ろうとするものを襲う。食糧・財宝などを奪い、邪魔なものは殺し、女なら犯し殺すか、奴隷として売りつける。それが盗賊だ。力で何もかも奪おうとする、野蛮なものたちだ。
ヴァルバ王国では人であろうと、亜人であろうと奴隷にすることを禁じている。禁じているのだからといっても、奴隷商はこの国にも存在する。無論、王家と騎士団は奴隷商の摘発に積極的に乗り出している。だが、その目をかいくぐってる者たちもいる。
国王のダグラスは奴隷商を嫌い、徹底的につぶすよう騎士団に言いつけているが、騎士の中には金をもらい奴隷商を見逃している者もいる。貴族の中にも奴隷を飼っている者もいるだろう。
シュラウドのことばにレイネとアリシアは頷く。シュラウドは荷車を引き、レイネはアリシアと手をつなぎ、その前を仲良く歩く。
シュラウドが、なぜ馬車ではなく荷車を使っているかは、単純に金があまりなかったからだ。数日分の宿代と飯代しか持ち合わせていなかったからだ。この依頼をすませれば少しではあるが金が入るなと考えていると、突然シュラウドの耳に悲鳴が聞こえてきた。
「なんだいまの悲鳴は!!」
アリシアが叫ぶ。2人も同じく悲鳴が聞こえていたようだ。
「女の悲鳴だったな。さて、どうしたものか」
「どうしたもこうしたもあるか。助けに行くにきまっている」
アリシアは何を言っているんだって顔でシュラウドをにらむ。その視線をさらっと流しシュラウドはレイネを見やる。
「俺にとってはレイネの安全が一番だ。他のやつがどうなろうと知ったことじゃないな」
「……む。だが、ここには盗賊がいる。誰かが襲われていると分かっていてほって行くわけにはいかない」
レイネのことを考え少し声を弱めるが、アリシアの目には助けに行くという意思が見て取れる。
「だが、レイネのことが心配なのはたしかだ」
「なら、……どうする」
「シュラウドはレイネと一緒に王都へ戻ってくれ。私一人で助けに行く」
シュラウドは興味ぶかそうに問うてみた。アリシアはシュラウドの問いに即答する。いうが早いか、すぐに行動に起こした。乱立する木々の中を悲鳴のした方向に向かって走っていく。
「はぁ~。誰も行かないとは言ってないのに、1人で行きやがった。……レイネ、どうする?アリシアは助けに行ったようだが……」
鬱蒼した暗い森の中で揺れ動く綺麗な金の稲穂色の髪が見えなくなったところでレイネに声をかける。
「アリシアは初めての友達。何かあったら嫌だよぅ……。」
「そうか。わかった。…なら助けに行くか」
「うん」
レイネの言葉とその心配そうな表情をみれば、どうすべきかすぐに決まる。シュラウドにしたら初めから悲鳴を出したであろう女を助けに行く気だった。アリシアがどう行動するかなど、いままでのアリシアの言動と性格からわかる。そして、そんなアリシアを心配するであろうレイネのことも分かっていた。それでも、あえて二人に問うてみた。結果シュラウドの思った通りだった。
シュラウドの言葉を聞きレイネは笑顔を見せる。
(あ! 荷車は……まぁ、いいか)
シュラウドは荷車をみやるが、諦めたように首を降る。
2人は鬱蒼する暗い森をアリシアを、そしてその先にいるであろう悲鳴の女のところへ向かって走り出す。
2人が去ったところには、ホビーラビットの死体が積まれた荷車だけが残っていた。
ふぅ………文才がほしいな。
いまは勉強中ですので、書き方が途中で変わりますがどうぞよろしくお願いします。




