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Dear Friend  作者: 橘 零
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麗子


エレベーターは1階に止まったまま一向に上がってこない。下で誰かがもたついているのかもしれない。麗子はエレベーターに乗るのを諦め、階段に向かって歩く。

「何か納得出来ないですよね」

近藤は麗子の横にピッタリとくっ付いたまま、独り言のように呟く。

「何が?」

「槙村さんは被害者が言った証言を信じるんですか?」

「被害者じゃない。事故なんだから」

そう言うと、近藤はあからさまに不服そうな顔をする。

「それなんですよ」

「それって?」

麗子は近藤が何を言いたいのかわかっていたが、敢えて聞いてみることにする。

「事故じゃないって、槙村さんが言ったじゃないですか。事故なら携帯が落ちていた位置と、被害…、佐藤さんが倒れていた位置の説明が着かないって」

50点。不合格。

「持っていくのを忘れたのよ」

「今時の高校生が公園のど真ん中に携帯を忘れますか?」

近藤は珍しく食い下がってくる。60点。

麗子は階段を下り始める。近藤に残された時間は何分くらいだろうか。3分がいい所だろう。

「清水宏樹たちの行方は?神谷エリと電話で話した後に消えました。その神谷エリは事件…じゃなくて、事故のあった時間に佐藤さんに電話し続けてる。その理由もわかってない」

70点。不合格。

「今時のガキが消えることなんてよくあることじゃない。その内出てくるわよ。それに、神谷エリが佐藤美優に電話を掛けた理由は、デートの首尾を聞く為」

ようやく1階に着いた麗子はそのまま正面玄関に向かう。

「そもそも駅からあの公園を通るルートは近道じゃなくて遠回りですよ。完全におかしい」

80点。タイムアップの為不合格。残念。

麗子の目は正面玄関を抜ける見知った顔を捉えた。知りすぎた顔。30年以上も見続けた顔。

「先に帰っていいわよ。車は置いて行って」

近藤も隼人の姿を見つけたのだろう。

「じゃあまた連絡してください」

そう言い、歩いて行こうとする。従順で、素直。90点。

「近藤」

「はい?」

「日本の法律は知ってる?」

「当たり前じゃないですか」

「じゃあ…わかるわね?」

近藤はしばらく考えていたが、やがて顔を上げ、小さく頷く。

「疑わしきは罰せず。ですか。灰色…ですからね」

100点。合格。

「また連絡するわ」

麗子は、少しだけ成長した可愛い相棒から、中学の頃から何も変わらない見飽きた弟へと、視線を移した。


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