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Dear Friend  作者: 橘 零
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隼人


隼人は、教室の椅子に座り一人考えていた。この日の面談は全て終了し、もう教室にいる必要はなかったのだが。

神谷エリと佐藤美優。2人はどこをどう見ても仲が良いようには見えない。だが、美優はエリのことが大好きだと言った。言われてみれば確かに、美優がエリのことを好きだというのはわかる気がしたが、果たして、エリは美優のことをどう思っているのだろうか。

隼人が勝手に想像するには、おそらくエリも、美優のことを好きなのではないかと思う。好きじゃなかったら、退学の危険を冒してまで美優のことを庇ったりしないだろう。エリがどんな秘密兵器を持っているのかは見当もつかないが、それでもリスクが高すぎる賭けだったように思う。そう考えると、少なくとも嫌いではないはずだ。だが、実際のエリを見ていると、毎日美優にきつく当たり、全く仲が良いようには見えなかった。

2人の間に何があったのか。その答えがわかれば2人の今の関係の謎も解ける気がしたが、そんなことはいくら考えても、隼人にわかるわけもなかった。

隼人は立ち上がり、窓辺に歩く。グラウンドでは、サッカー部の生徒たちが大きな声を上げながら駆け回っていた。パスが何本も繋がり、鮮やかなシュートが決まる。隼人には一生決めることの出来ないであろう、美しいゴールだった。

いつの間にか見入っていた隼人は、ふと思い至る。何かがあったのはエリのほうだけかもしれない。今の2人だけしか見ていない為、2人の間に何かがあったのだとばかり考えていた隼人は、そんな可能性には全く目がいかなかった。だが、よく考えれば、パスを出さなくなったのも、シュートを打たなくなったのもエリだけなのかもしれないのだ。

その瞬間隼人には、エリと初めて会った日から感じていた違和感の正体が見えた気がした。

神谷エリは、神谷エリであって神谷エリではないような、そんな感じがしていた。美優にきつく当たっているエリも、知香や靖子と話しているエリも、授業中に寝ているエリでさえも、エリではないような気がしていた。神谷エリは、神谷エリをプレーすることをやめてしまったのかもしれない。

自分自身をプレイすることをやめてしまった少女は、これからどうなるのだろう。肉体だけが残り、誰も操縦席に座っていない少女は、あまりに呆気なくこの世界から消え去ってしまうんじゃないか。そんな絶望感を感じ、隼人は無意識のうちに拳を握りしめていた。


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