5:魔法講義
せっかくサラのような魔法使いが講義をしてくれるならば、エリック兄さんも一緒に教わった方がいいのではないか。かわいい次男の提案は道理と実益をもって父と兄に受け入れられた。講師には性癖をもって受け入れられた。
エリック兄さんも今年11歳、来年から学園に通うことになるがそれまでの間はエリくんティウスとしてかの邪痴好色のサラへの人質を果たしてくれるはずだ。大切な兄が稼いでくれた時間を使い、サラから逃げ切れる体力、スピード、技術を身に着けるのだ、走れアルク。
この世界における魔法は6属性に分かれており
火:火を操り、ものを熱する
水:水を操り、ものを冷やす
土:土を操り、鉱物を生成、成形できる
風:空気を操り、風を起こせる
光:光を操り、治癒、強化、浄化ができる
闇:闇を操り、毒、精神系魔法が使える
魔法を使える人はだいたい国民の1割程度で、使えるかどうかには遺伝性があり、貴族は使える人が多い。適正や魔力量、出力には遺伝性がなく完全に個人差とされている。カイル父さんは土、シルク母さんは光、エリック兄さんは水で俺が全属性、バラバラである。
2属性以上使える人となるとさらに2割程度に減り、3属性以上使えるのは年に数人、全属性となると100年に一人の逸材というやつだ。(※中級程度でも使えれば)
この国では魔法使いの育成、発現には力を入れていて本洗礼は国民全員が無料で受けることができる。どの属性であっても初級程度使えれば様々な分野で活用できる。魔法適正を示した人間は12歳になる年で王都のベルデ学園魔法科に3年通い、成人となる15の年で卒業、それぞれの進路に進んでいく。エリック兄さんは来年、俺は5年後に通うことになるわけだ。
「…基本の確認もできたから2人の今の実力を確認したい。」
俺とエリック兄さんの間に座っているサラが次の方針を示す。先生教壇に立って教えていただけませんか…?間の方が教えやすい…?二人両方のテキストを確認しながら講義ができる…?本当にそれだけですか?他意はありませんね?ある…?そう…。
「では行きます」
俺たちは演習場に出るとエリック兄さんが初級のウォーターバレット、中級のアイスランスを用いて的を撃ちぬいていく。それを確認するサラの表情は真剣そのものだ。さすがに自分の食い扶持であり命綱である魔法に対しての向き合い方は真摯だ。ただし性癖に対する向き合い方も真摯なため今の視線に他意はある。
「…だいたい分かった。その年でそれだけできれば十分、けど魔力操作が甘いからそこを練習すれば発動時間も短縮できる。上級魔法は使える?」
「出力は足りていますが、上級となると練習機会がなかったため学園に通ってから学ぶようにと言われています」
「…詠唱は私が教えられる。今年のうちに数度安全なところで練習したほうがいい。…カイルさんには私から伝える」
「ありがとうございます!」
「兄さんよかったね!」
魔法はイメージを用いて発動する。生活だけでなく、戦闘技術でもある魔法は初級、中級までは詠唱を用いない、水飲みたいなといった生活中、白兵戦などの戦闘中にわざわざ詠唱なんてしてられない。だが上級では詠唱を用いる。それはなぜか、上級魔法は範囲が大きすぎるのだ。
上級魔法はその効果範囲から対軍として使用される。軍と軍がもうすぐ激突というタイミングで突然広範囲魔法が飛んで来たら被害は敵だけに留まらない。水の上級魔法ならばタイダルウェーブが代表的で津波を起こし相手を攻撃する魔法である、当然制御を誤れば大損害は免れない。
詠唱は味方への魔法使用勧告であり、上級魔法のイメージを補強し、制御を誤らないための安全装置なのだ。白兵戦で用いる魔法でもないため詠唱のデメリットもない。土俵の中でロケットランチャー撃とうものなら自分もやばいのである。
「…次はアーくん、多重発動も使ってみて」
「わかった」
ウォーターバレット、ファイアボール、ストーンバレット、3属性の初級魔法を多重発動で同時に発動させ、3つの的を破壊する。今はまだ3個までしか同時に扱えないが多重発動数をさらに増やしていきたい。
「…その年でそこまでできれば魔力操作は天才と言ってもいいレベル。混合魔法や持続発動はできる?」
「できるよ」
そう言って俺は手からお湯を出し続ける、アルクくんの源泉かけ流しだ。混合魔法は属性を組み合わせる魔法。水を出す魔法とものを温める魔法を同時に発動させ、お湯を作り出す。2つの魔法を用いて1つの減少を引き起こす技術だ。
持続発動は魔法を発現させ続ける技術、水を出す、ではなく出し続ける。魔法現象を作り出して終わり、というわけにはいかず魔法現象を作り続ける継続的な魔力操作が必要になるため集中力を持続させる必要がある。
「…そこまでできるなら実戦訓練をしたほうがいい。エリくんとウォーターバレットだけで打ち合って。相手のウォーターバレットを避けながら自分のウォーターバレットを制御する。発動速度、魔法制御、意識の配分や無意識下での魔法制御を鍛えてもらう」
そうしてサラから白い服を渡される。これには魔法の威力を弱める効果があり、ウォーターバレットに当たってもそこが濡れるぐらいで済むそうだ。また、当たったウォーターバレットの威力によって色が変化する。それにより魔力制御をどれだけできているか可視化されるため、どれだけ指定の色で相手に攻撃を当てられたか、それを得点とする魔法戦だ。
俺とエリック兄さんは着替え、魔法戦の訓練が始まった。戦いながら俺も兄さんもサラから一定時間毎に色の指示を出される、それに合わせて魔法の威力を調整し、発動しなければならない。それを戦いながら行うのだ。当然早く、多く発動できる方が有利だし、かと言って色の指定を間違えると得点にならない。複数の鍛錬が共存した素晴らしい訓練であると認めよう。濡れる美少年を見れるサラと濡れてサラに見られる俺達という利と害も共存してしまっているのが一番の問題だ。
リース、君はサラのストッパーとして控えてもらっているんだ、一緒になって俺達をガン見するんじゃない。




