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46:ダンジョン訓練

「マチルダ、俺にだけあんな思いをさせないよね?」

「悪いね坊や、リースを待たせられないからもう宿に戻るよ」

「ふっざけやがてクソダンジョンがあああああ!!」


 ドッペルゲンガーとの戦闘も終わり、俺達は帰還の魔法陣を使ってダンジョン入口に戻ってきた。俺と同じことが出来る魔物だが俺よりも力は強いが技量は拙いという特徴があった。魔物特有の膂力はあるが、知恵は人間よりも低い、それに加えて俺の戦闘スタイルは俺が鍛えてきたもの、魔物の知能では初級魔法を有効に戦闘に使いこなし切れてはいなかった。


「まあ水晶を起動するとああなるからな、不死の回廊をクリアしたパーティーの結束は高まると言われている」

「そりゃみんなであんな目にあったら結束も高まるでしょ…」


 不死の回廊はおそらく1層以降もあんな調子だろう、全員があんな恥をかかされたら心の壁なんてぐずぐずに溶けてなくなり、パーティー補完計画は滞りなく遂行される。


「なんで不死の回廊はあんな性格悪いダンジョンになってるんだよ…」

「まあ坊主とマチルダが入ることはもうないだろうから教えてやるか」

「なにかわかってることがあるの?」

「本当は踏破したらわかるんだけどな、不死の回廊は人工ダンジョンなんだよ」

「は?人工?」

「メイズのダンジョンな、最初はB~Dの3つだけだったんだが、どうせなら冒険者の育成に使えないかってことでギルドが作ったのが不死の回廊」

「ってことは…」

「ああ、不死の回廊の構造な、本部のやつらの趣味と悪ノリだ」


 そうか、この怒りをぶつける先があるのか、それはよかった。で、責任者はだれ?今の本部長?わかった、貴族の力も全部使って一発ぶん殴る。


「坊や、その時は私も噛ませてくれるんだろうね」

「当然だよ、怨敵に一矢報いるのに戦友を連れて行かないわけにいかないからね」

「ははっ!やってやれやってやれ!あのいけ好かない奴も一回ぐらい痛い目見といたほうがいいんだ」

「…あの狸野郎、いつも立場を盾におちょくってくるからアーくんが貴族の立場を盾にやり返しておいて」


 そう、何も心を一つにするのはお互いの恥をさらけ出し合うだけじゃない。共通の敵を作ることでも心は一つにまとまるのだ、絶対に許さねえ。


「皆様、おかえりなさいませ。明日の準備は出来ています、頼まれていた物資等部屋にありますのでご確認いただけましたら」

「ありがとうリース、結構騒がしい街だけど問題はなかった?」

「はい、貴族の使用人とわかる相手に粗相をする方はいらっしゃいませんでした」

「それもそうか、明日から一人の時間が増えるけど大丈夫そうだね」


 宿に戻った俺達は各々リースが調達してくれた物資を確認し、明日に備えて早々に休むことにした。正直不死の回廊で色々と疲れすぎたし…。


 そして翌朝、俺達は危険度Dランクダンジョン:メイズの洞窟の前にいた。ここはこの土地で見つかった最初のダンジョン、そして最初に踏破され、迷路の様に入り組んだ洞窟の構造から管理を行う街の名前はメイズとなり、ダンジョンの名前もそのままメイズの洞窟となったそうだ。


 ダンジョンに入れば簡単に出てくることは出来ない。フロアボスを倒して帰還の魔法陣を使うか、踏破するかだ。しかもフロアボスを倒しても帰還の魔法陣がないダンジョンだってある、泊りがけでの攻略もザラ、事前の準備確認は疎かにできない。


 ヘルメットのような鉄兜ヨシ、胸当て入りベスト型防具ヨシ、鉄板入り安全靴ヨシ、ダンジョン訓練用装備の装着はヨイカ、ヨシ!今日も一日ご安全に!


 …最低限ということでガーランドが用意した防具一式、これどう見ても現場作業着だよね?いやまあ動きの邪魔にもならないし、重くもないからいいけど。


「全員装備の確認はいいな、攻略は基本坊主単独、俺らは付いていくだけ。生死にかかわる場合のみ助けに入る」

「…わかった」

「了解したよ。坊や、罠に巻き込まないでおくれよ」

「それはメイズの洞窟に言ってくれないかな、大怪我したら頼むよ」


 そして俺はメイズの洞窟攻略を開始した。ぱっと見はただの洞窟だがちらほらと戦闘の跡があり、時折魔物も襲ってくるし、気配の数も多い。確かに普通の洞窟とは全く違う。


「でも今の所罠はないか」

「まあ序盤も序盤、メイズの洞窟がらしくなるのはこっからだ。ほら、目の前に見えてきたぞ」

「ああ、分かれ道だね。こっからかあ」


 右と左、2つの選択肢。うーん、ぱっと見なんも違いないしな、決める基準がない。これはあれか、こういう時こそ勘か。


「よし、右にいこう!」

「…その心は?」

「勘!」

「ははっ!趣旨に合ってていいじゃねえかいけいけ!」

「勘を鍛える訓練だからね、どう曲がったか記録取っておけば迷子にもならないし。それじゃあアルク!行きます!!」


 そして俺は右の道へと勢いよく進みだし、カチッ!となにかを踏みぬいた。…やったわ、これ。


 確かな安心感を与えてくれていた地面がなくなり、ぐるぐると俺の体が転がり落ちる。冷静にこの後どうなるのかなあ、なんて考えるぐらいには長い間転がり続け、唐突に無重力を感じる。ああ、これ出口から放り出されたわ。


「ぐえっ!」


 そこそこ高い所から地面に打ち付けられ、肺に受けた衝撃で呼吸が止まる。けれどそんなことでゆっくりしている余裕はない。転がりながら多数の魔物の気配は感じていた、恐らくモンスターハウスだろう、強制的に魔物ひしめく部屋に閉じ込め数の暴力で殺すという罠。


 治療魔法をかけながら、即座に体勢を整える。ケイブバット、ホールスパイダー、ゴブリンとまあいるわいるわ多種多様な魔物達。しかし最後に戦ったゴブリンの群れより全然少ないし、種族が違えば連携も取れない、油断をしなければそんな烏合の衆に負ける道理はないし、魔物に囲まれて油断できるほど、ぬるい経験はしていない。


 ガーランドは気配で、サラはサーチでこっちの状況は把握してるんだろうし。部屋掃除が終われば迎えにくるでしょ。


「それじゃ部屋掃除、気張って行きますか!」

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