43:勘
今週分少ないので今日明日に少し追加で更新するかもです。
俺が戦ったゴブリンの群れ、ゴブリンの繁殖力を考えれば他にも小規模な群れやさらに大規模な群れが居てもおかしくない。俺に必要とされる感覚は死線を行く度も経験して身に着けるもの、山に再び入り、探して、挑んで、ボコられる。サーチ&デストロイならぬsearch&defeatだ。
防ぐべき攻撃、避けるべき攻撃、ダメージの体への影響、攻撃に込められた害意とその察知、死を実感しながらの極限戦闘でなければ身につかない感覚を、ポートから帰った後も各地を巡り、ゴブリンの群れ時々フォレストウルフの群れと戦いながら培っていく。複数に囲まれる戦いは意識しなければならないことが多く、最初は魔法の制御も数も普段通りとはいかなかったが、感覚が身に着いてくるにつれて少しづつ普段通りに扱えるようになってきた。
まあ慣れてきたところでより大きい群れを目標にするから最後の群れ以外、毎回あと少しの所で負けるのだが。最後の方なんて常時四方八方から矢が飛んできながらの戦闘、前世の高難易度弾幕シューティングをやってる気分だった。
そんな訓練も無事完了し、久しぶりにステンの自室でゆっくりしているとガーランドが次の訓練について話があるとやってきた。
「坊主もだいぶ気配や視線に込められた感情を感じ取れるようになった、これでひとまず第一目標は達成だ」
「ここまでやって第一目標なんだね…」
「これは前提条件だからな、勝負の舞台に上がるための」
「まだ舞台に上がる段階なんだね」
「ああ、まだ舞台に上がっただけだ、勝負にはならん。次の訓練で勝負になるように鍛え上げる」
「次はなにをすればいいの?」
「ダンジョン探索だ」
「え?もっと強い敵じゃなく?」
「ああ、ダンジョンだ。そこで坊主には勘を鍛えてもらう」
「え、そんなあやふやなものを鍛えるの?というか鍛えられるの…?」
視線や気配などを感じるのはまだ理解できる、死線を経験した今なら特に。なんか見られてるなというぐらいならダンスの時もだし、なんなら前世でも感じることはあった。それが今回の訓練で研ぎ澄まされ肌にピリピリと感じるし、気配ならばあのあたりにいるなと感じる。だがそれは感じた瞬間、いうなれば今現在の話。
前者2つと勘、共に不確かなものであるが決定的な違いがある、それは観測している時間だ。視線と気配は"現在"を観測するが勘は"未来"を観測する。人間に未来を知る術なんてない、そりゃ天気予報や地震速報などで知ることはあるがそれは既に起こっている事象からの予測でしかない。だが勘はなんとなくいい予感がする、悪い予感がする、なんていう現在にヒントがないまま未来を観測する感覚。不確かなんてレベルじゃない。
「一流の冒険者になる条件は勘がいいことだと言われている。だが俺の経験からしてこれは間違いだ」
「え、そうなの?」
「一流冒険者は確かに全員勘がいい、だがそれは順番が逆なんだよ。勘がよかったから一流になったんじゃねえ、一流になるにつれて勘がよくなったんだ」
ああ、そういうことか。勘は鍛えられる、だからこそ一流となった人間は全て勘がいい、結果としてそれが条件だと思われるようになったしまったと。
「それに最初から勘がいいやつは逆に一流になれねえんだ」
「どういうこと?」
「この依頼を受けたらヤバいとわかっていて依頼を受けるやつはいない。だから死線を経験しない、死線を経験しないから強くなれても一流には届かない。ただ後から勘が鍛えられた奴は死線を潜った後だからヤバくてもなんとかなると思ってる」
一流冒険者になる条件だと思われていたものが実は足枷だったとかいう事実。だが確かに考えればその通りだ、いくら命賭けが当たり前の冒険者と言っても死んだら終わり、だから冒険者は勘を大事にするし、人によってはジンクスやおまじないなどの願掛けだってやる。
「でも勘を鍛えるのになんでダンジョン?」
「坊主は視線や気配を感じ取れるようになった、だがそれらは生物が出すものだ。無機物には存在しない、ダンジョンに仕掛けられた罠、仕掛け矢、落とし穴、毒ガスの宝箱なんかには当然ない」
「それはそうだね」
「だから坊主にはサーチなどによる探査無しでダンジョンに潜ってもらう」
「探査なし?」
「風魔法のサーチは空気の流れで探査するからな、仕掛け矢なんかの一部の罠がわかっちまうんだよ。仕掛け矢の穴を見て気付いた、ぐらいなら構わねえけどな」
「つまり罠にかかれと」
「簡単に言えばそういうことだな、ダンジョン初心者が警戒をいくらしたところで罠に全部気付くなんて無理だ。不意を撃たれる必要があるからわざと罠を踏む必要もない」
ダンジョン探索自体は興味がある、むしろ1回ぐらいはやってみたいなという気持ちはあった。けどそれはパーティーのみんなで攻略を頑張る!みたいな感じなのだ、死ぬかもしれないアスレチックとかそれなんてデスゲーム?みたいな気分で行きたかったわけじゃない。
「今回は即死だけ避けられるように防具を用意しておく。致命傷ぐらいならマチルダが回復できるからな」
「致命傷も普通に嫌なんだけど…」
「ま、そこは我慢だな。死が近いほど感覚が鍛えられるのは経験しただろ?」
「三途の川に行き過ぎて川遊びにももう飽きたよ」
「ははっ!そいつぁ上々だ!次は対岸まで泳いでから帰ってこい」
「えぇ…それ一回死んでるじゃん…」
そうして11歳となった俺は、異世界にてデスアスレチックへの参加が決定した。普通に攻略させてほしかったなあ…




