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37:治療魔法使い

 ゴブリン討伐に行く前に、ヘルプに入ってくれる治療魔法使いを見つけないとならない、俺も初級ならば使えるが今回の訓練目的を考えるとボコボコにされるのは必至、中級の治療魔法がなければ最悪のケースも考えられる。


「というわけでリンダ、治療魔法使いで紹介できる人いる?」

「そう言われてもねえ…。そもそも治療魔法が使える人が貴重だから…」

「そうだよねえ…」


 リースと共に冒険者ギルドに来た俺はリンダに相談をする。しかし魔法使いはそもそも10人に1人、そこから光適正を持ち中級が使えるような人は冒険者になるよりも外科医師にでもなったほうがいい。まあそれでも冒険者を選ぶ人はいるのだから冒険の浪漫というのは異世界であっても変わらない。


 母さんに頼む手もあるが流石にゴブリンにボコボコにされる女装した息子を見せるのは酷じゃない?という話でそれは最後の手段だ。


「ああ、一人だけ紹介できる人がいたわ。基本ソロで活動してるし、気に入った仕事しか受けないからそこはアルク様次第だけどね」

「そうなの?紹介だけでもお願いできる?」

「いいわよ、いつもならそろそろ依頼を探しにくる時間だから少し待ってれば…とか言ってたら来たわね。マチルダ!ちょっといい?」

「あん?なんだいリンダ、なんか用かい?」


 リンダが呼んだのは赤みがかった茶髪をベリーショートにし、最低限の防具のみの軽装、露出した腕や腹部からはしっかりとした筋肉が見える、均整の取れたスタイルをした姐さん!って感じの女性だった。


 ・・・えっ?治療魔法使い?拳闘士じゃないんですかこのお方?


「用があるのは私じゃなくてそこの男の子、アルク様」

「こっちの坊や?」

「はじめまして、アルク・スティングと言います。中級の治療魔法が使える方を探していまして、リンダさんにお話した所マチルダさんを紹介されました」

「スティングと言ったらここの領主じゃないか、その息子がなんの用だい?」

「実はですね…」


 自分の訓練のためゴブリンの群れに単独で挑みたい、しかし自分は初級魔法しか使えないので間違いなくボコボコにされること、それを治療できる人が必要なこと。


「要件はわかった、けど理由がわからないね。なぜ単独で挑む、なぜわざわざボコボコにされる、そこにどんな意図がある。それがわからないんじゃ仕事を受ける選択なんてありえないよ」

「あの~アルク様?流石にDランクが単独でゴブリンの群れに挑むとか聞かされたら私も止めないといけないんだけど?それにアルク様はパーティーで受注するって記録してるし…」

「いやまあ、リンダにはちょっとそこに目をつぶってほしいんだけど…。理由の部分はちょっと俺が恥ずかしいのもあるし、貴族的にもあんまり広まってほしくないから、ちょっと二人ともいい?」


 そういって二人にかがんでもらって内緒話の体勢をとる。一応風の遮音魔法を発動しておき俺達以外に話が聞こえないようにしておく。これ広まるとレイン家に迷惑かかるし。


「とりあえず今からする話は内緒でお願い。聞いたからって絶対依頼を受けてくれとも言わないしそこは安心して。ただこれが広まると二人にも貴族的に対処しないといけないから気を付けてね」

「あれ?私受付の仕事してただけなのに脅されてる?」

「くくっ、坊やも年の割にいっぱしの貴族じゃないか。何を聞かせてくれるんだい?」


 そして俺はこっぱずかしい理由を伝える。公爵家の次女に惚れたこと、その場でプロポーズしてしまったこと、結婚を認めてもらう条件が英雄を倒すこと、そのために強くなりたいこと。最後に、公にしていない貴族同士の話だからこれを公表しないこと。…まあ俺が恥ずかしいからという理由もあるが。


「え?何その条件…?ていうかそのためにアルク様はゴブリンに単独で挑むの?」

「そうしないと英雄に届くほどは強くなれないって言われてるからね」

「うわぁ…苛烈ぅ…」

「坊や…」

「どうかな?マチルダさん協力して…って泣いてるの!?」


 マチルダに顔を向けると静かに涙を流していた。そんな感動秘話みたいな話何もなかったよ!?


「あぁ…すまないね。よし!坊や、いいや、アルクの漢気に応えて協力しようじゃないか!私はCランク冒険者のマチルダ、私のことはマチルダでいいし、リンダと同じように接してくれて構わないからね!」

「そう?ありがとうマチルダ、よろしく頼むよ」


 無事にマチルダの協力を取り付けることができた。なぜ泣かれたのかはわからないがすっかり笑顔だし、俺に心を許してくれた。これなら安心して協力をお願いできるし、俺の訓練方針では今後もお世話になるのは間違いない。


「はぁ…本当は止めないといけないんだけど、理由聞いちゃうとねえ…。それにちゃんとあの二人も一緒なんでしょ?」

「それはね。死にたいわけじゃないし」

「ならいいわ、目をつぶっておいてあげる」

「ありがとうリンダ」

「あの二人ってのは誰のことだい?」

「ああ、そうだね。俺の武術の師匠と魔法の師匠なんだけど、出発するときに紹介するよ」

「そうかい、まあアルクが信頼してる相手なら変な奴じゃないんだろう。その時を楽しみにしておくよ」


 マチルダの協力を取り付けた2日後、俺達はギルド前でマチルダと合流しての顔合わせだ


「ガーランド、サラ、今回協力をお願いしたCランク冒険者のマチルダだよ」

「おう、ガーランドだ、よろしくな」

「…サラ、よろしく」

「……」


 二人の挨拶にマチルダが固まってしまっている、どうしたのだろう。


「マチルダ?」

「あ、ああ!ご、ごめんなさい…。あ、あのガーランドさん、私のことを覚えていませんか…?」


 硬直から立ち直ったマチルダは、先日の豪快な姐さんキャラは何処へ行ってしまったのか、顔を真っ赤にしてもじもじと、まるで花も恥じらう乙女のように上目遣いでガーランドの事を見つめていた。


 え…、誰…?

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