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33:2つ名

Xアカウント@PM3G8を作り、カクヨムの方にも投稿しました。また試験的に感想受付をログイン制限なしにすることにしました。なにかしらのリアクションが貰えるかはわかりませんが、アクセス解析からこの作品を読んでくれている人が居そうだな、と感じるのはとてもありがたく思います。(BOTの可能性などからは目を反らして)

 レイン公爵から課された条件、その内容はその場にいた全員を驚愕させるに十分な内容だった。いや、驚かない人はいないだろう、要するにこの人は娘が欲しければ力づくで奪って見せろと言ったのだ。4属性で上級魔法を操る、王国随一の剣の使い手と言われる英雄が、若干10歳の子供相手に課すような条件ではない。


「当然今すぐ戦う必要はない、そうだな、10年以内としよう。10年経つとアルクくんは20歳、私は42歳、それ以降では体力の差が開く一方になってしまう」


 何を考えているかわからない。しかし、結婚を認めたくないがために無理難題を出したいという印象も受けない、もしそのつもりなら10年なんて期間を設ける必要はないからだ。今、この場で、俺を叩きのめせばいい。


「冗談で言っているわけではないですよね?」

「ああ、娘の婚姻がかかってるんだ、本気だとも」

「わかりました、10年以内にレイン公爵と戦い勝利する。その条件を受け入れます」

「よろしい、君なら受け入れると思っていたよ。もし別の条件や緩和を求めるようなやつなら条件を課すまでもないからな」


 レイン公爵はこの条件を俺のウォーターショーを見て決めた、恐らく多重発動とその制御、さらにバイオリンを弾いているときの俺の体幹などから、この先研鑽を積んだならば不可能な条件ではないと判断したのかもしれない。


「コンラート、そんな条件を出してどういうつもりなの?」

「そうだな、プラムとスティング夫妻には話しておこうか。セバス、子供たちを頼む」

「かしこまりました」


 そう言って、大人組は屋敷の中に向かった。俺達子供組は4人で客間の方に案内され、大人たちの話合いが終わるまで、お茶とお菓子を頂きながら雑談をして過ごすことになった。


「ねえねえ!アルクお兄ちゃん!なにか他に面白いことできる!?」

「んー、多重発動の練習でやってた遊びでいいなら」


 失敗してもいいようにスペースを取っておく、お高いものを損傷でもしたら目も当てられない。その後魔法で作り出した水の猫や熊などの火の輪くぐりやボール乗り、土で作った兵隊人形の行進など、前世のサーカスや軍事パレードを再現していく。


「そうだ、プリムさんは何か好きな海の生き物はいますか?」

「海の生き物ですか?アザラシが好きです。まるまるとして可愛くて」

「アザラシですか、わかりました」


 これで3人の好きな生き物が分かった、ペンギン、アザラシ、イルカを水で模した魔法のアクアリウムを作り出す。


「よくここまで緻密に操作できるわね」

「水は練習の時に一番使いやすかったからね、失敗しても危険はないし、濡れた場所は乾かせばいいし。流体だから魔力操作の影響が顕著で乱れなんかもわかりやすい」


 一方魔法の練習で一番使いにくいのが風だ。自分の操作範囲が目視で見えないので乱れを知覚しにくい。


「アルク様、少しいいでしょうか」

「プリムさん?どうしました?」

「その…できれば私のことはプリムと、私の方が年も下ですし、姉さまとお話するように接していただけると嬉しいのですが…」


 そうか、プリムに嫌われたくなくて、でもどんな距離感で接したらいいのかわからなくて、無難に礼儀正しくしていたけど、自分にプロポーズしてきた男が自分よりも姉の方と親しげなのは確かに気になるだろう。


「それじゃあ、プリム、これでいいかな?」

「はい!」


 初めて、プリムの笑顔をみた。初めて、彼女を笑顔にすることができた。彼女を喜ばせようとしたわけじゃない、ただ彼女の望むままに、ありのままの自分で接しただけ。特別なことなんてなにもない、他の誰にでもしてること。


 けれどそんな普通のことが彼女の笑顔を引き出した。その柔らかで、陽だまりのように暖かなプリムの笑顔は、無意識で行えるほどになっている魔法の制御を忘れさせるのに十分な魅力をもって、再び俺を恋に落とした。


「プリムに見惚れてるところ悪いけどね、アルク。床びしょびしょなんだけど、どうするのよこれ?」

「あっ」


 水を操作して窓から外に捨て、濡れた床を温風で乾かす、セバスさんに平謝りしながら。濡れただけだしすぐ乾かせば問題ない?本当ですか?全力で乾かさせていただきます!ええ、これでも地元では人力乾燥機として雨に困る奥様方に大人気だったんですよ!


「プリムから聞いてはいたけど本当に全属性に適正があるのね」

「初級魔法しか使えないけどね、それでもちゃんと訓練すれば本当に便利だよ」


 魔法はそれぞれに出来ること、出来ないことがはっきり分かれている。面白いところだと魔力量による魔力障壁からの影響だろう。初級でも土魔法だけは魔力障壁の影響を受けずに相手にダメージを与えることができるのだ。なぜか。他の魔法は形状が不定形なために相手に当たるまで魔力による形状の維持をしなければ空気抵抗で霧散してしまうために魔力障壁の影響で霧散する。しかし土は生成した固形物に初速を与えて飛ばす、そう、相手に影響を及ぼす段階ではただの物理現象となっている。


 まあただ石を飛ばしてるだけなので殺傷力は低い、そこを補うにはもう一工夫必要だし、その難易度も高いために訓練は必須となる。


「アルク様は魔法をどちらの方に教わっていらっしゃるのですか?」

「B級冒険者のサラってわかるかな?火、水、風の3属性を使う魔法使いなんだけど」

「それって"変風"のサラ?3属性を相手によって上手く使う優秀な魔法使いだって聞いてるわ」

「多分それであってると思うけど"変風"って何?」

「本人に教わっているのに知らないの?B級冒険者サラの2つ名よ」

「サラって2つ名とか持ってるの!?」


 話を聞いてみるとどうやら有名な冒険者には2つ名がつくらしい。それは冒険者ギルドとしての宣伝、家名を持てない平民の家名代わり、本人の箔付けという意味合いでもって半ば強制的に冒険者ギルドから与えられるらしい。ちなみにサラの2つ名は変わりゆく風のように、魔法を使い分ける変幻自在な戦い方から付けられた2つ名らしい。


 …多分本当の理由は変態の風使いとかだと思うけれど、そんなことギルドは言えないだろうし、サラの武勇伝を楽しそうに語るフレアと、それを興味深そうに聞く二人の姉妹を前にしたら、流石にそれを言うのは野暮がすぎる。

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