27:不器用な恋
1ヵ月また書き溜めてボリュームできたら投稿しようと思っていたら感想をお願いした友人から、週1で読めるほうが前の話も覚えていられるし嬉しい、と言われたので週に1度投稿することにしました。金曜夜~土曜朝ぐらいの時間に投稿していければなと思います。
表現や誤字脱字等の修正もちょこちょこ見直してしていきます。
その瞬間、賑やかな誕生会、その主役がいる壇上は、主役が脇役となり、いなかったはずの者が主役になっていた。そのことに気付いているのは壇上にいる者たちのみ、本来の主役は面白い物を見たかのように顔に笑みを浮かべ、その末妹は目の前で起こった出来事をを憧れの物語のように見つめ、その両親の一人は怒りを、一人は喜びをそれぞれに現し、新たな主役を舞台に引き上げた少年の両親は驚愕に顔を染める。
しかしその少年と新たな主役となった少女には、そんな周りの景色は目に入らない。いや、それだけではない、中央で踊る者達の煌びやかなダンスも、会場を包む音楽も、料理を楽しむ者たちの喧騒も、なにも聞こえていないし、何も見えていない。
2人が今感じているのは、ただお互いの存在と、ただ高鳴る自分自身の鼓動のみだった。
「あっ…と、あの…、その…、ごめんなさい!少々失礼します!」
顔を真っ赤に染めた主役の少女は、引き上げられた舞台から走って立ち去る。それによって時は動き出し、一人残された少年にも周りの音と景色が戻ってくる。
やばい、やらかした。プリムの目を見た瞬間、いや、彼女を彼女と認識した瞬間に俺はそれが自然なことのようにプロポーズをしていた。いくら一目惚れでもそれはない、こんな場所で、こんな状況でプロポーズをするなど、フレアにも失礼だし、プリムにも失礼だ、まして俺とプリムは初対面、貴族の社交界でなかったとしても非常識との誹りは免れない。
「アルクくん?」
「…はい」
「少しいいかな?」
ほらレイン公爵すっごい怒ってるもん。コルンちゃんをあれだけ溺愛していたレイン公爵だ、当然その姉二人も溺愛してるだろう。そんな人の目の前で、今回の主役であるフレアをないがしろにして、非常識すぎるプロポーズをしたのだ。そりゃ激おこですよ。
「コンラート、そのお話私も一緒にしたいわ」
「レイン公爵夫人…?」
「自己紹介がまだだったわね、アルクくん、私はプラム・レインよ。よろしくね、かわいい求婚者さん」
「こちらこそよろしくお願いします…」
なぜかプラム夫人の方は怒っている様子がない、すごく楽しそうに、なんなら喜んでいる節まである。レイン公爵とプラム夫人はセバスさんを呼び、この場のフレアとコルンちゃんの世話を任せる。二人もついてきたがったが、主役がいなくなるのは誕生会の意味がなくなってしまうし、主役の親族が他にいないというのもよくないのでコルンちゃんは残るように言われたのだ。
二人が呼んだ使用人さんと、両親を含む計六人で部屋を移動し、応接室へと通される。
「さて、アルクくん、なぜ私の娘にあのようなことをしたのか聞かせてもらおうか」
「はい…」
レイン公爵がすごい圧で問いかけてくるが、なぜと言われても俺にも答えることができない。ただ彼女をみた瞬間に自然とプロポーズしていたのだ。素直にあの時感じたことを伝えるしかない、前世で恋愛経験なんてないし、こういった時どうすればいいかなんてわからない、たとえ恥ずかしくても、正直にすべてを包み隠さずに話すしかない。それしか俺にできることがない。
「ふふっ、うふふっ、あははははははは!はーっ、はーっ、ねえコンラート、私はアルクくんのこと気に入っちゃった。あなたも怒ってないで、10歳の子供の真っ直ぐな恋心ぐらい許してあげたら?」
プラム夫人はひとしきり大笑いをし、レイン公爵をなだめてくれる。なにがそんなに気に入ったのだろう、俺にはわからないが俺のことを庇ってくれているのはとてもありがたい。このことで両親がレイン公爵から一生許されない可能性だってあるのだ、そうなればスティング領が公爵の力を必要としたとき、領民たちが困ってしまう。
「だがなプラム」
「だがもなにもないでしょ。今まで常識を守りながらプリムに求婚してきた連中よりも、非常識だけど真っ直ぐにプリムを見てくれているアルクくんの方が何倍もいい男だわ」
「むう…」
レイン公爵がしぶしぶながらもその怒りを収める。その様子を見た両親はそれまでの緊張が溶け、とりあえずスティング家として窮地に立つことは免れたことに安堵している。
「それにコンラートだって私に一目惚れだったじゃない、それなのにアルクくんの一目惚れは許さないの?」
「それとこれとは違うだろう!」
「一緒よ一緒、いい男がいい女に一目惚れして求婚した、それだけの話よ」
本当にプラム夫人はご機嫌だ、すごいにこにこでレイン公爵をやりこめてくれる。
「プラム夫人はなぜそこまで私のことを気に入ってくださったのですか?」
純粋な疑問だ、ただ俺は正直に聞かれたことに答えただけ、不器用に、誠実に、なぜそれが今まで求婚してきた相手よりもいい男という結論になるのだろう。
「んー、そうねえ。アルクくんの誠実さに免じて教えてあげましょう。ただこれは私が見たプリムの話、あの子の本心はあの子にしかわからないし、当然あの子のために話しちゃいけないこともあるから全部を話すわけじゃないわよ?」
「ええ、それは当然だと思います」
「そういうところが分かってるなら問題ないわ」
そして語られたのはプリムがこれまでどう過ごしてきたかだった、父と姉と一緒に戦うと言っていたプリムが、本洗礼以降引きこもりがちになっていたこと、社交界には進んで出席してくれたが、求婚してくる相手はみんな公爵家次女という立場しか見ておらず、プリムを見て求婚している人なんて一人もいなかったこと。普通ならば面白くないはずだが、なぜかプリムはそんな社交界に出ていると気が楽そうだったこと。
そうか、誰もプリムを見ていなかったのか、それはプリムを見ずに求婚した人間より、プリムしか見えずに求婚した俺の方が何倍もマシだろう。
「プリムが何を思ってこもりがちになったのか、何を感じて社交界に出ていたかは私にはわからないわ。親ながら不甲斐ないけどね。本洗礼の時になにか事件があったわけでもないのよ、魔力量と出力は低かったけど、魔法が使えないわけじゃないし、水と光の二属性持ち。魔具も盾という形で普通に発現してるわ」
母親でわからないことが初対面の俺にわかるわけがない、しかしそこは本人から聞き出すのが惚れた者のすべきことだろう。たとえプラム夫人がその答えを知っていたとしても、本人以外の口から聞いていい内容ではない。
「さて、ここまでアルクくんに知ってもらったところで、私はアルクくんとプリムが婚約することには賛成します。ただしそれには条件を設けさせてもらうわ」
「プラム!?」
「条件ですか?」
「ええ、この条件を満たしても私が婚約に賛成するだけでまだコンラートを認めさせないとダメだけどね。コンラートも後でなにか考えてアルクくんに条件を出してあげればいいんじゃない?」
「レイン公爵にも認めていただかないといけないのは当然だと思います、条件をお聞きしてよろしいでしょうか」
どんな条件を出されるのだろう、しかしどんな条件であってもクリアする以外俺には考えられない。俺はプリムが幸せになればそれでいいのはない、俺がプリムを幸せにしたいのだ、そして俺に笑いかけてほしいのだ。
「なーに、ドラゴンを倒せ!みたいな突飛な条件じゃないわ、むしろ恋人同士ならみんなクリアしてる簡単な条件と言ってもいいわね」
「なんでしょう」
「簡単よ、あなたの手で、プリムを惚れさせてみなさい。どんな恋人もやってることよ」




