表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/53

16:貴族の練習

 1年間色んな街や村を巡って実地訓練をしてきた。一度行った城塞都市ケイルでは長めに滞在して騎士団の訓練に混ぜてもらい多くの人と手合わせをした。剣、槍、弓、人を守るためしっかりと体系立って訓練された騎士達はガーランドとは違った強さを持っていた。


 魔法の有無、武器種縛り等様々な条件で行い、一対多や多対多なども経験させてもらった。屋敷ではガーランドとの訓練が優先されるためそういった訓練をしたことがなく、またケイルの騎士の方が実戦経験から連携の練度が高い。


 ガーランドは訓練をするなら高いレベルで行ったほうがいいと考えている。簡単に言えば子供と訓練するより大人と訓練した方が上達が早い、ということだ。そのためせっかく質の高い連携訓練が行えるケイルでは主に多数戦を行った。


 この連携、とんでもなく難しい。自分の攻撃と魔法を合わせて隙を消すなどはできる、しかしそれを他者が行う攻撃、回避、移動と組み合わせなければならないのだ。フレンドリーファイアなんてもっての外、しかも俺はあらゆる武器、魔法を使える。つまり味方の編成の足りない部分を補い、組む人に応じて俺が臨機応変に対応する必要があるのだ。


 俺が盾を使って、剣を使って、槍を使って、魔法を使って、弓を使って、さまざまな組み合わせで、さまざまな連携を練習する必要があった。長めな滞在期間を取っていたのもガーランドはそれを予想していたのだろう。


「アルク、少しいいか」

「父様、なんでしょうか」

「ああ、来年にはアルクは10歳、そうなると社交界に行くことになる。今まではアルクの魔具や魔法の都合で時間が取れなかったが、流石にダンスや楽器の練習をする時間を取らないとならない、できずに恥をかくのはお前だからな」

「わかりました」


 魔法が使えるようになってから、その特異性からずっと武術と魔法の訓練をしていた。3年間、ガーランド達にみっちり鍛えられ、9歳らしからぬ戦闘力を手に入れた。しかしその代償として貴族なら当然修めておくべきダンスや楽器を修めていない。貴族の9歳らしからぬ踊れなさを持っている。


「教えてくれる相手はシルバでしょうか?」

「講師も明日から家に来てくれることになっている、到着次第紹介しよう」

「よろしくお願いします」


 ダンス、楽器等の芸術に関しても特別に講師を雇ってくれたらしい、普通の貴族と違って1年で形にしなければならない上、武術、魔法の訓練時間は減ってもなくなるわけではない。実際には半年分ぐらいの時間しかないとなるとかなり腕のいい講師でないと間に合わないだろう。


「は~い、あなたがアルクちゃんねぇ。あら流石武術やってるだけあって体は鍛えられてるわねえ、ダンスに必要な筋肉は問題なさそう!」


 オカマである。翌朝父さんに呼ばれ講師の人に挨拶にきたらイケメンがいた。金髪碧眼の王子様すぎるイケメンだと思ったら喋った瞬間に王子様がオカマ様になってしまった。悪い魔女に魔法でもかけられたのだろうか…。


「こちらのブラン殿は芸術に関しては王国一と言われている。王都劇団を退団した後、フリーで様々な芸事の講師をしている」

「あらやだカイル様、ブランなんて呼び方やめてって言ったじゃない。私の魂の名前、リリィちゃんって呼んでね!」


 これは魔法かけられてないわ、本人の性質だわ、そしてなんだリリィって、ブランとなにもかかってないじゃないか。


「…リリィちゃん、これからよろしくお願いします。」

「アルクちゃんは素直でいい子ね!素直な子は伸びるわよ~!!」


 これから世話になる相手、呼び方ぐらい本人の希望を叶えてもいいだろう。


 貴族として音楽の授業が始まった。楽器はこの国で最もポピュラーであるバイオリン、曲もこの国で最もポピュラーな騎士と姫の恋の曲、時間がないので貴族としてこれができれば最低限。というやつだ。


「うん、リズム感はいいし、体の動きもいい。音感は並だけど譜面を見ながらの演奏も苦にしていないし、これなら短い時間でも十分以上に仕上がるわ!」

「おお、才能ありそうですか!?」

「才能は並かしらね…。アルクちゃんの出来ているところって全部武術なんかの応用なのよ。リズム感、体の動き。譜面を見ながらの演奏なんかは魔法戦闘による意識配分の慣れね。それらの応用が利かない音感の部分が並、演奏は周りと合わせるから音感がすごく大事ってことは才能は…ね?」

「築き上げてきたものが活かされてるってことですね…」


 いいのだ、才能がなくても、今まで行ってきた努力が礎となって音楽の分野になっても俺を支えてくれている。それでいいではないか…。


「まあ音楽の才能は何も演奏に限らないわ、作詞、作曲、編曲、歌唱。音楽は才ある奏者ただ一人だけで成り立つものじゃない、いくつもの才能、いくつもの努力が重なり奏でるもの。演奏の才能がないからと才能を諦める必要もなければ、一つも才能がないからと音楽を諦める必要もない。懐の広い世界よ」

「リリィちゃん…」


 なんやこのオカマめっちゃ良いこというやん。これがソウルネームリリィを冠するものの清廉潔白な魂というやつか。


「さぁそういうわけだから練習練習!懐の広い音楽の世界も、努力をしない者に微笑むほど甘くはないわ!」

「はい!リリィ先生!」


 何を俺は才能なんかに拘っていたのか!必要なのは1に努力2に努力3,4が努力で5に努力なのだ!努力なしに成功無し!うおおおおおおおおお!やるぞおおおおおおおおおおおおお!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ