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14:反省

「アルク様、夕食のお時間です。お目覚めください」


 ゆさゆさと、眠りに落ちていた意識が心地よい声と共に揺り起こされる。お風呂で寝落ちした後、リースが布団まで運んでくれたのだろう。ゆっくりしたおかげで体の疲れは相当とれた。


「起こしてくれてありがとう。すぐに行くよ」


 戦いの緊張も解け、あふれ出した疲れをお湯で洗い流し、睡眠で頭の疲労も取れた今、体は消費したエネルギーの補充をぐぅぐぅと猛烈に訴えかけてくる。ようするにめっちゃ腹減った。


「アーくん、私ともお風呂入ろう…?」

「リースはお姉ちゃんみたいなものだからいいの、サラはダメ」

「よう色男!さすがは貴族様だ、いい身分だな。嬢ちゃんとの風呂は気持ちよかったか」


 欲望を即却下された変態はしょんぼりし、筋肉は大人気なく8歳児をからかってくる。前世の記憶があるおかげで精神年齢高めな俺だからいいけど、リアル8歳がやられたら間違いなく拗ねるぞ。


「姉に世話されて入るお風呂は気持ちよかったよ、ガーランドもサラとお風呂に入ればいいんじゃない?一日中繋がってる相手なんだから」

「いや流石にこいつと風呂は無理だろ…。俺にも選ぶ権利ってもんがある」

「…筋肉の癖になんで私が断られる側なの…?」


 変態の顔が驚愕に染まる。まあ俺もどちらに選択権を渡すかと言われたらガーランドに渡すかな…。サラは美人だけど日頃の行いがね…。サラが来てからパンツが行方不明になる事件が稀によく起こってるの知ってるよ?


「アルク様、イノシシを退治していただき本当にありがとうございます。村のみんなも安心できます。」

「アルクくんイノシシ倒せちゃうなんてすごいね!もし村に来てたらミル村じゃどうしようもなかったよ!」


 夕食を食べ始めると村長とリーンが嬉しそうに感謝を述べてくる。いやいや、領民では解決できない問題を解決し、安心して暮らせるようにするのは貴族の義務ってだけですよ。本当、それだけですよ。マジで。だからこれ以上この話はしなくていいんですよ?


「っと、そうだ坊主、今回も反省会するぞ。振り返って反省点や今後の訓練の方針を決めておかねえとな」


 深く追求されないように話を終わろうとしたら頭脳派筋肉が至極全うな理由で話を終わらせてくれなかった。しかもこの話題は微妙にまずい、反省点を上げると俺が何を隠そうとしたのかアルク君最大の秘密が露見してしまう。


「とりあえずなんで坊主は相手が森豚だと思ってたんだ?森豚程度なら対処しないとなんて話にもならんだろ?」


 さすがAランク冒険者のガーランドだ、しっかり初手で急所をえぐってくる。そして俺の秘密は白日の下にさらされた。あまりの間抜けっぷりにみんなの瞳が点になる。わかるよ、お前さっきの発言なんだったんだってことだろ。8歳児の見栄ぐらい笑って許せよ領主ご子息の誇りに関わるんだ。


「昔に話をした人が森豚のことをイノシシって言ってたんだよ。ずっと東にある国の出身だって言ってたから国の違いだったみたいだね!」


 そんな人はいない。だが証人がいなければ俺が話を聞いていないという証拠もでない。こうして真相は闇に葬られるのだ。


「なるほどな、それで勘違いしたわけか。だが魔物を狩りに情報なしで現場まで行ったことにかわりはない。フォレストウルフの時とは前提条件が違うからな。しっかりと情報収集をする癖をつけろ。」

「はい…」


 森に向かう前にイノシシについて聞いておけばよかっただけの話である。それを思い込みで怠ったのだ、今は問題ないがガーランドがいない時などにやらかしたら命に関わるだろう。


「まあ今まで武術の訓練ばっかで魔物の勉強させてねえしな、冒険者になりたいわけでもないんだろ?」

「スティング家が没落しない限りはないかなあ」

「俺とサラを雇える家が一代で没落ってお前親父が何をしてると思ってるんだよ…」

「メイドをお風呂で侍らせて酒池肉林…?」


 ガタッ!


 俺の発言を聞いてリースがビクッと飛び上がる。あっ、シルバがすごい笑顔でリースを引きずっていく。えっ、給仕ができなくなる…?ああ大丈夫だよ、親子で話しておかないといけないことができたんでしょ?うん、気にしなくていいから…。


「…。まあこの感じだと坊主が冒険者になる必要はなさそうだな…」

「まあ…うん…。ガーランド達に鍛えて貰うことになったのは父様の教育方針が大きいかなあ。俺的には何かしたい、何かになりたいっていうのは今はないから、できることをできる限り増やしておきたくてやってる。魔法は初級でも色々と便利だしね」

「まだガキなんだし英雄に憧れるぐらいの夢はあってもいいと思うんだがなあ」

「英雄なんてもっと強い人に任せるよ。せっかく貴族の家に産まれたんだから、その利点を最大限に活かして安定した人生を送るんだ」

「理にはかなってるが8歳の考えじゃねえな」


 やりたいことがないわけではない、だが恋をしたいだなんて8歳児が言うようなことではない。やりたいことは正直学園に通う3年間で探せばいいかなと思っている、だから今はできることを広く増やしておきたい。


「まあ訓練は真面目だしそれでいいか、坊主の場合やれること多いからそれぞれ鍛える時間もかかるからな」

「…アーくんの魔法は効果的に組み合わせて使わないといけない、実践して試していくしかないから魔法も時間がかかる…」


 そうしてフォレストウルフの時と同じく、戦闘中に考えたこと、そう考えた経緯を伝え、何ができたらもっと楽に戦えたかなどを洗い出し、今後の訓練方針を決めていく。成長を阻害しない程度にどこの筋肉を増強するのか、もっとうまい魔法の使い方はないか、自分に足りないものや補うべきものが見えてくる。


 あっ、シルバとリースが帰ってきた。いつも完璧な笑顔を見せるリースのそれが、今は若干の疲労感を感じさせる。そしていつもよりも歩くスピードが遅い、ロングスカートで目立たないが腰から下がなにかぷるぷるしている…?リース、どうしたの?なんか初級のパラライズを受けたみたいだよ?なんでもない?大丈夫…?それならいいけど…。


 リースとの話し合いで反省会の内容を聞けなかったシルバに改めてイノシシ戦と反省会の報告をする。父さんには今後の訓練の方針などをシルバの方から報告してくれるそうだ。今回のことの報告のついでとのことだ。ん?なにシルバ?もう報告終わったよ?えっ、父さんはメイドさんとお風呂に入ってない…?でもリースはメイドと主人がお風呂に入るのは普通だって…。そういう人もいるだけで父さんは違うと…。母さんが怖くてそんな真似できない、そうなんだ…。


 母さんが怖くてできないの…!?

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