69 摂政王の意図
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紫禁城の電信室には、劉から姉妹墳墓での法要実施要請とその結果についての電報が、一月前に届いていた。そして、秦の遺構での法要電報も届いていた。
西安での法要について、摂政王、載灃は劉からの電信を受け取ると、直ぐに朝廷の祭祀礼儀を取り仕切る内務府、七司の一つである掌儀司理事官の崔道光と宗人府の曹強力理事官を召し出し、彼等の意見を聴聞して、法要の許可を下した。又、廃青からの青龍寺再建に係わる奏上文については崔に丸投げし、宗教事には係わらない姿勢を示した。
しかし、秦の遺構での法要の電報を受け取った時には、彼は宦官を通じて、詳しい報告書を提出するように劉に命じていた。劉からの法要々請の顛末を記した奏上文が届いた時、彼は崔も曹も呼ばず、宦官の丁英泰しか招集しなかった。
「お呼びにより参上致しました」
執務室入口で、丁が甲高い声で参内の挨拶をし、入室の許可を待った。中から宦官のこれも甲高い言葉が聞こえ、丁は恭しく頭を下げたまゝ、入室した。
「丁、直ぐに来てくれたな」
「殿下の思し召しならば」
「もそっと近くに」
入口で投地したまゝ拝礼している丁に、摂政王は近寄る事を命じた。丁は拱手したまゝ頭を上げず、摂政王の前に並ぶ宦官の列の中央辺りで止まった。それ以上進むのは不敬であり、それ以下だと摂政王の意思に反するからだ。微妙なバランス感覚を彼は持っていたから、宮廷内で昇進して摂政王の相談を受ける立場に着いた訳である。
摂政王は、劉の奏上文を持つ宦官に目配せして丁に奏上文を渡し、それを読めと促した。
丁は畏まってそれを読んだ。そして額から湧き出てもいない汗が、滴り落ちる感覚を覚えた。同時に、背中に何やら虫でも這い擦り回るかの感覚にも襲われた。
「どう思うか?」
丁は考えた。直ぐに応えて良いものか、はたまた口を噤むべきか。暫しの沈黙が場を支配する。摂政王が再度発言を促した。丁はようやくそれに応じた。
「殿下。これは恐らく、前にも殿下より伺いました事と思われます。殿下の御意志によって、ご判断為されるべきかと」
「そうではあるが、事が事だけになあ・・・」
又もや沈黙が流れた。
「そこに書いてある通り、この度の墳墓には『厲鬼の類が潜んでいそうだ』と思うか?」
「鬼魂ですとか、厲鬼ですとか私には分かりかねますが、殿下は始皇帝にまつわる墳墓と踏んでおられる訳ですね」
「そう考えている」
「そうでございましたら、劉と申す男の通り、厲鬼調伏の法要を執り行わせた方が宜しいのではございませんか?」
「何故だね」
「殿下も同じ思いと推察致します。廃青なる法師が法力を有しているのならば、厲鬼調伏など容易いでしょうし。調伏出来なければそれは鬼魂、厲鬼ではなく、正しく殿下が探し求めております始皇帝の霊魂では」
「矢張り、そう思うか」
「はい。道士の普度で鎮められなかった厲鬼ならば、その可能性がございますし、阿闍梨の調伏も退ければ、実に殿下の求めるものと・・・」
「そうなると、それを我々はコントロール出来るか?」
「それは、掌儀司の崔道光理事官にお頼みすれば宜しいかと。彼の掌握しております僧侶の中には、この廃青と言う僧侶よりも法力の高い阿闍梨が、五万とおりますでしょうから、それを使役する事など容易いかと」
「もしそれが可能ならば、我が大清帝国は列強に伍する戦力を有する事になる。さすれば・・・」
密やかな笑みを浮かべ、摂政王載灃は丁へ下問した。
「はい。無敵の軍を大清帝国は持つ事になります。この龍土に於いて南蛮、東夷、北狄、西戎を無知蒙昧から覚醒させ、さかのぼる事、大清帝国第5代、憲皇帝陛下(愛新覚羅胤禛)の聖徳を再び知らしめる事が出来ます」
「我が、愛新覚羅家の偉業を公知させる事は良いが、憲皇帝(雍正帝)の功績を如何なる事で公告するのか?」
「殿下のご先祖にして、その有徳を以って大清帝国、臣民を平等に扱う事を宣言し、隆盛の礎を築きました英邁なる皇帝陛下でございます憲皇帝は、始皇帝と同じく、神仙思想に大変詳しいお方でございました。憲皇帝の魂魄と始皇帝の魂魄は恐らく、道教思想によって同調する筈でございます。法力有る阿闍梨を以って、始皇帝の魂魄を憲皇帝の魂魄に同期させ、コントロール出来れば、天帝の軍が生まれたに等しいかと」
「そうであるか。それならば、掌儀司の崔に命じて法力有る阿闍梨を招集しよう」
「それと殿下。一応、咸陽の法要が成功しましたならば、廃青なる僧もお召しになるべきかと。万が一、成功したならばですが」
「考慮しよう」




