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55 海洋民族 1

 フラフラしながらも陳は林から道に出た。陽は天空に有り、昼頃なのだろう。陳は5、6時間気を失っていた勘定になる。彼は道に出て左を見、右を見て自宅のある右に向かった。



 自宅に帰ると、陳は呉に連絡するように家人に伝え、そのまゝ寝こんでしまった。数時間前後不覚に眠り込んだ陳が目を覚ますと、呉とセガランの顔が彼を見詰めていた。

「親方、目が覚めましたか?」

 呉が不安気な顔で陳を見詰め、心配げに尋ねた。

「呉よ、済まんかった。どうやら追いはぎに会って身ぐるみ奪われてしまったよ」


「盗人が追いはぎに会うなんて、笑い話にもなりませんよ」

「あははは、そうだな」

 陳が力なく返した。二人のやり取りを見ていたセガランは陳の具合が大丈夫な事を知り、安堵して陳に尋ねた。


「皆心配していたんだが、もう大丈夫なようだな」

「セガラン様、ご心配を掛けて申し訳ありませんでした。充分寝ましたので大丈夫です」


「それを聞いて安心したよ」

 セガランも呉も一安心したのだろう、表情が緩んできた。

「それより、仕事の方はどうなんですか?」


「親方、安心して下さい。知り合いの方士様にお祓いをして頂いたので、

新しく雇った人足達も安心したようです。直ぐにでも再会出来ます」

「それは良かった。人が集まるか心配していたんだが、良かったな」


「そうですよ」

「それじゃ、早速出かけようか」


「親方、そろそろ夕方ですよ」

「そんな時間なのか?」


「陳よ。今日はこのまゝ休んで、明日から働いてくれ」

 セガランは気を利かせて陳に休養を伝えたが、陳は現場の指揮者としての責任感なのか、床から起きようとした。それを見た呉が心配気にセガランの顔を見た。

「休んでいなさい。医者としての命令だよ」


 セガランが再度休むよう伝えると、陳も渋々それに従った。それを見て安心した呉が、セガランに今後の予定を聞いて来た。

「明日から石蓋を外してもらうから、人手は多い方が良いな」

「そうですね。人手は限られていますので工夫して当たります」


 セガランの話しを心配そうに聞いていた陳に向かって、セガランが言った。

「ぐっすり寝て良い夢でも見なさい」

 その言葉に反応した陳は、セガランに尋ねた。

「セガラン様、私の話しを聞いて頂けますか?」


「良いよ、何だい?」

「夢の話しなんですが」


「夢?」

「はい」


「夢がどうかしたかい?」

「今朝見た夢が、賊に襲われて気を失っていた時も、演劇の続きのように見たんですよ」


「それで?」

「初めの夢には輪郭のぼやけた霧状の白いものが現われて、私の頭の上を通り抜けたんです」


「うん」

「その時何処からともなく、塔洛阿たろあと聞こえて来たんです」


「Taloa?」

「はい。そして次に見た夢の中では、白波の上に小舟が見えて、それらが又しても私の頭の上を通り過ぎ、今度は塔内たんねと言う言葉が聞こえて来たんです」


「Tanne?」

「はい。それで小舟に乗ったまゝ南支那海の島に流されて、そこの島民は支那語を話すんですが、私の事を塔洛阿様と言うんです。私が『俺は陳泰山だ』と言っても、聞こえない振りをして。どういう事なんでしょうか?」


 暫くセガランは腕を組んで考えた。TaloaとTanne、南支那海の島で話される支那語。


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