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45 陳、セガランを訪ねる

 その夜、呉と打ち合せた内容をセガランに伝える為、陳はセガランが泊っている西安の宿舎を訪ねた。セガランは部屋で碑文の拓本と格闘中であったが、彼を部屋に招き入れた。

「夜遅くにどうしたんだ?」

「遅くに申し訳ありません。呉と相談しまして、彼の知り合いに方士がいるという事で、その者に法事を依頼するにしました」


「そうか、それは良かった。こちらの現場も人足頭が寝込んでしまい、人足が浮足立って仕事にならなかったらしい」

「それで法事を催したんですよね」


「全て劉が取り仕切ってくれて助かったよ。法事も有り難い阿闍梨様にお願いしたらしいからね」

「阿闍梨様にお願いしたとなると大層掛ったでしょう?」


「それが、金銭の授受はなかったらしいんだが、その換わり廃寺の再建を頼まれたらしい。それで宗人府を通じて、監国様にお願いするそうだよ」

「そうなんですか。それで上手く行くんですか?」


「どうだろうね。遺構から出土した金製品や磁器の数が、当初見込んでいた程多くなくて、財政の足しになるか、ならないか・・・」

「そうなると、阿闍梨様の本願も・・・」


「何でも、昔は国寺だったらしいから、再建の願いは叶うんじゃないかな。清朝は西安の寺院に可成り寄付しているそうじゃないか」

「そうなんですか?」


「義和団事件の折も、皇帝や西太后が西安に避難していたし、或る寺には西太后が寄贈した額もあるそうだね」

「そんなつながりがあるんですね」


「それはさておき、用事は何だい?」

「実は祟りの噂が立ちまして、現場で募集する人足の賃金を上げないと、人が集まらないんです。それで私の判断で賃上げして募集を掛けましたので、セガラン様にご了解を頂きたく」


「仕方ないさ。こちらも法要に大層掛ったそうだから。噂が流れるのも仕様がないな」

「そう言って頂けると安心します」


「それで追加の募集に集まったかい?」

「法事を催した後でならという条件付きですが、何とか集まりました」


「法事の後、直ぐに集めてくれ。そして再開だ」

「その事でもご相談が・・・」


「何だい?」

「倒伏した石碑の下に加工したと思われる石蓋がありまして、その大きさから類推すると、予定員数の倍位いませんと・・・」


「それなら、募集範囲を近隣の村々にも広げてくれないか」

「秘密にしなくて良いので?」


「あゝ。監国様から正式に、秦朝遺構の発掘許可が下りたから、これからは巡撫に隠れて密かに作業をしなくとも良いんだよ」

「そうですか。それは良うございました。そうなりますと、賃金も少しは抑えられそうですね。早速、明日にでも呉に知らせます。奴も安心するでしょうから」


「そうしてくれ。私も私的に進めていたものが官用となり、安堵した処だったからね。後はないかい?」

「それだけ教えて頂ければ十分でございます。遅くにお訪ねして申し訳ありませんでした。これにて失礼致します」

 そう言うと、陳はセガランの部屋から出て行った。


 夜も更けている時間、これから西安の街を出て自宅迄帰るのか、と思うセガランは、呉に寝床を提案しなかった事を少し悔いた。夜道には外灯などなく、漆黒の闇に包まれる帰路を無事に帰れるのか? そんな事を思ってもいたが、セガランは直ぐに思い返した、そもそも彼は陳や呉の自宅を知らなかったのだ。西安や咸陽近くの村や町に住んではいるのだろうが、そんな事も彼は両者に聞きもしなかった。


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