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40 渭水の北と南

 ビットル・セガランは西安に戻って来た。摂政王からの命で、姉妹墳墓の現場に戻る事を宗人府の劉保へ北京から手紙で伝え、列車と自動車でやって来て、宿舎にしていた宿にて劉と再会した。

 そこでセガランは隋王朝が隠匿した財宝の場所が、姉妹墳墓の地下水路ではなく、渭水の河床遺跡であると彼から伝えられた。どうやら碑文の解釈から、地下水路の床下ではなく、地下水路の水が注ぐ渭水の水中ではないかと劉が思い至り、巡撫に気付かれずに試掘をした結果、河床遺跡を発見したとの事だった。

 しかしながら、1300年の経過は余りにも長かった。遺跡の殆んどは渭水の水流に洗われて消滅したか摩滅破損し、出土品も青磁や白磁の焼き物が大半であり、金銀等の工芸品の出土は少なかったと説明を受けた。

 それでもセガランは喜んだ。彼の碑文解釈は大筋で間違っていなかったから。

 今は出土した磁器の整理に取り掛かっており、完形品が多く出土した為、骨董市場への売り出しで、出資金の回収が可能になる位の額は得られるだろう、と劉はセガランに語った。


 セガランは今後の予定について劉に伝え、隋王朝の秘宝探索が一段落したので、秦朝の埋蔵品探索に取り掛かると宣言した。磁器の写真撮影と平面図、断面図、詳細図作成を終えてから劉は手伝いたい旨伝えると、セガランは4週間後に咸陽へ移動する事を伝えて宿舎を後にした。

 セガランはその足で陳と呉に依頼した咸陽の現場に向かったが、日も暮れていたので咸陽の宿屋に泊まり、翌日現場に向かった。



 セガランは渭水の北にある現場に3週間ぶりに帰って来た。そして現場では、陳と呉が彼を出迎えてくれた。しかし出迎えはその二人しかいなかった。現場で作業をしている筈の人足が一人もいないのだ。

「陳、呉よ。留守の間、済まなかったな」

「どう致しまして。日本での仕事は済んだのですか?」

 陳が笑顔でセガランに応えた。呉はその脇で、申し訳なそうな顔をしている。


「休暇として赴いたから、仕事と言う程のものではなかったよ。それでも帰国報告には、監国様は満足して頂いたな。それよりも、今日の作業は休みなのか? 人足が誰もいないようだが」

 セガランがそう尋ねた処、笑顔の陳が急に跪き、地にひれ伏した。同じく呉も平伏した。

「申し訳ございません、セガラン様」


「どうした、陳。何かあったのか?」

 陳と呉は陳謝したまゝ、顔を上げようとしなかった。

「そうして平伏したまゝでは、何があったのか分からないではないか。先ず、顔を上げなさい。そして何があったのか教えてくれ」


 その声に促されたのか、陳がようやっと顔を上げた。それにつられて呉も顔を上げた。

「申し訳ございません。俺達も何があったのか、訳が分からず。何時の間にやら人足がいなくなったのです」

「いなくなった?」


「はい。人足が消えてしまったのです。或る日、人足が現場に姿を現さなくなり、翌日には又一人、更に次の日には二人と。次々に姿を見せなくなったのです。それで、呉を人足達の家にやったのですが、夫婦者の家では『暗い内から現場に向かったまゝ、帰ってこない』と言うのです。独り者の家は、もぬけの殻でした。可笑しな事を言うなと思ったのですが、こうして誰も現場に姿を見せなくなりました。そうだよな、呉」

「はい、親方の言う通りでございます、セガラン様」


 二人の話しを聞いて、セガランは困惑した。人足に支払う金銭は決して安いものではない。収入として見れば、割の良い仕事の部類に入るだろうに。それを捨てゝ、別の仕事に行くのか、と思ったのだ。しかし、それが見当違いである事を知らされた。


「セガラン様。これは何かの祟りではないでしょうか?」

 呉が恐る恐るセガランに尋ねた。彼の言葉を聞いて、セガランは劉が廃青に法要をお願いした事を思い出し、己が見当違いをしていた事に気が付いたのだ。


 来週、友人と温泉に行って来ますので、火曜日の投稿は休みます。金曜日に投稿しますので。宜しくお願いします。女房が私と行くのを拒否しましたので、仕方なく友人の誘いに応じた次第です。

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