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わたしは、ずっと“ちゃんとした子”だった
「みのりって、なんでもできるよね」
そう言われるのが、ずっと苦手だった。
高校2年の夏、わたしは図書館の自習席に座って、塾で渡された問題集を開いていた。
エアコンの風は冷たいのに、手のひらは汗でじっとりしている。
(本当に、わたし、できる子なの?)
模試の結果は、いつも「平均ちょっと上」くらい。
先生には「指定校推薦も狙える」と言われていたけど、本当は、希望の国立大学に一般受験で行きたいと思っていた。
でも、どれだけ頑張っても、伸びなかった。
英語は何度も読んだのに文法が頭に入らないし、数学の応用問題では途中で思考が止まる。
夜、机に向かいながら、泣いたこともあった。
「こんなに頑張ってるのに、なんで?」
自分を責めることが習慣になっていた。
それでも、塾の先生に「いいところまで来てるよ」と言われるたび、期待に応えなきゃ、と無理やり前を向いた。
でも――秋の模試。
志望校の判定は、E判定だった。
教室の窓から、夕日が校舎の壁を赤く染めている。
模試の結果票を手に持ったまま、わたしは席から動けなかった。
努力って、こんなに簡単に否定されるんだって、初めて知った。




