春の縁結び相談所_プロローグ
春・・それは時に出会いの季節でもある。そして別れの季節でも・・・
ここに一軒の古びた店がある。縁結び相談所。そこにときおり訪れる相談者のお話です。
「カランコロン」ドアを開ける音が鳴り響く。今日のお客様だ。
「いらっしゃい!」店主の掛け声はいつも通り。
「あの・・・縁結びをしてくださるお店はここですか?」おどおどした声のお客様。
「はい!そうですぜ!」相変わらず陽気な声で答える店主。
「あの・・・縁結びをお願いしたくて、どんな方でも大丈夫ですか?」意味深な質問だ。
「大丈夫だよ!」
「そうですか・・安心しました。実は・・・」
ここにくるお客様は人間のみとは限らない。今回のお客様も訳ありではあるが神様だ。
とある人間との縁結びを希望してここにきている。
「実はかれこれ生まれてからずっと守護神として働いてきたのですがその人間との縁結びをお願いしたくてですね」矢継ぎ早に話す彼女は守護神だという。
「ほう?それはまたどうして・・・」店主は聞く。
実をいうと守護神と人間との縁結びは滅多になく禁忌に近いものでもあるからだ。
「はい・・なんといいますか」頬を赤らめて彼女は答える。
「その人間と夫婦の縁結びの約束をしまして・・・それでなんです。」簡潔に答えた彼女の顔は真っ赤だ。
「なるほど、かなり人間も安易な約束事をするもんですね。」冷ややかに言う。
「はい・・・そうだとしても誠実な方なんです。」彼女は負けじと答える。
「試練のことはお伝えは?」空気が変わる。
「いえ・・・まだその人には伝えてないです。」赤らめた顔に影が落ちる。
「伝えなくてもいいんですか?」重ねて質問をする店主。
「恐らく」矢継ぎ早に彼女は答えた。彼女には分かって居たのだ。大丈夫だと。