第一幕 神への嘘
真夏の地中海に日光が乱反射している。見慣れた真紅と対照に、真っ青な表情をする空。五月蝿い程の色彩が入り乱れる。彼はただ、立ち尽くしていた。
俺は見てないと言わんばかりの視線が集まる。それは不気味で、不愉快で、誰もが吐き気を催すような。
そんな、黒い風に、また彼の心も靡いていた。それは決して美しくは無い、醜い情景だった。
「ようよう、良くやった。さぞかし心が痛むのでは無いのだろうか。だがな、これがお前の宿命だ、真っ当に果たせ。ライフ・ライアー。」
そう、彼には重い宿命が宿っている。永遠と殺人を繰り返し、幾つもの運命を断ち切る。そう、彼は生まれながらの処刑人であった。その日は、処刑が終わった後、同じ宿命を宿した友と共に酒場へと向かった。
彼の心には、アルコールのはっと目が覚めるような、気分が悪くなるような香り。血の、あの咽せ返るような、あの香りで充満していた。
「何故、私らは、神にこんな宿命を背負わせたんだろうか。考えても知るよしも無い。ああ、どうか私に救いをください。」
神に祈りを捧げて眠りに着いた。寝床は貧相であり到底良い眠りに就けるとは思えない。だが彼にとっては心の泉、潤いを保つ為に重要なものであった。
また、真夏の光が、彼らに差し込む。まだ、処刑をしなくてはならない。神の為だと、そう思ってまた、殺人をする。心なんて傷めれることも出来ない。その日処刑するのは、悪魔に取り憑かれ、禁忌の知識へと手を伸ばした者だ。彼は、これによって、世が美しくなると考えていた。
だが、彼は、嘘をついている。彼は、神なんて信じていない。神から渡されし宿命がこのような物なのかと、何度思ったか分からない。処刑をされた者も本当に死ぬべきだったのか。彼らは、何にあんなに興味を引いたのか、どれだけ考えても、分からない。
そう彼は、心へ嘘をつく者。そして、神へ、嘘をつく大罪人、ライアーであったのだ。この宿命に抗あるのなら道化師にだってなれる者だったのだ。