13 ツィラとアダーリとエルザ
夕方になり、私は、アダーリとエルザが帰ってくるのを待ち構えていた。
空の弁当箱を持ったアダーリが先に台所に入ってきて、奧さんに「ただいま」と言った。エルザもその後から入ってくる。
奧さんが、立ち尽くす私の肩をとんと叩き、二人の娘に言った。
「ツィラから、話したいことがあるそうよ」
アダーリ達は私をまじまじと見つめた。胸が緊張で痛い。けれど、私のそばには奧さんがいる。私達を見守ってくれている。
私は、アダーリとエルザに言った。
「今まで、嫌なことばっかりしてごめんなさい」
エルザが「え」と声をもらし、アダーリに小突かれていた。
「私、アダーリとエルザと仲良くしたい。二人とも私を心配してくれてるって、本当は分かってた。素直に認めたくなかっただけなの。……ごめんなさい」
先に動いたのは、エルザだった。姉の手を引いて。私に歩み寄った。それから、両腕を広げて、私とアダーリを抱きしめた。
エルザは、腕の中の私に言った。
「これ、あたし達流の仲直り。覚えてよね」
私の手に、アダーリが自分の手を重ねた。目を合わせると、アダーリは大人っぽく微笑んでいた。
「わたしのことは、姉さんと呼んでくれていいわ」
エルザも言った。
「あたしのことも、姉さんと呼んでいいのよ!」
「いや、あんたはツィラよりも年下でしょうよ」
アダーリとエルザが小突き合う。私はそれを見て笑った。黙って見守っていた奧さんが、
「夕食の支度をしましょう」と促す。
「三人とも、手伝ってね」
「はい」
私達は、素直にうなずいた。




