12 仲直りの方法
アダーリとエルザと仲直りするには、どうしたらいいのだろう。贈り物をするのはどうかしら? なんだかわざとらしい気がするし、私にはお金もない。
二人の喜ぶことをする? けれど、二人が何で喜ぶのか、私には分からない。
『お互いのことを知らないからだ』と砂男は言った。だとすれば、私がまずするべきなのは、二人のことを知ることかもしれない。
朝、奧さんと二人になった時、私は思いきって聞いた。
「アダーリとエルザは、何が好きなんですか?」
「どうしてそんなことを聞くの?」
奧さんは鋭く聞き返した。途端にしどろもどろになる私。
「えっと……その、二人と仲よくなりたくて……」
「そう」
いつものぶっきらぼうな返事だった。けれど奧さんは続けて言った。
「エルザはお菓子作りが好きよ。よくクッキーやケーキを作ってくれるわ」
それで、私がクッキーを作った時にあんなに怒ったのか。
「アダーリは?」
「あの子は、本を読むのが好き」
「どんな本を?」
「グリムのような、子どものための物語が好きみたいね」
私がこっそり書いていた物語の作文に、真っ先に目をつけたのはアダーリだったっけ。
「あなたは?」
「え?」
「あなたは何が好きなの? ツィラ」
私は、心の中で好きなものを数えた。お母さん、砂男、お茶……。
「私は……」
奧さんは、テーブルに身を乗り出し、私に語りかけた。
「アダーリとエルザも、あなたと同じ。あなたが喜ぶことを知りたいと思っているはずよ」
なぜだか分かる? と奧さんが尋ねた。
「私を……愛したがっているから?」
「そうね」
私はうつむいた。
「私も。私も、アダーリ達を愛したい。でも、その方法が分からないです」
奧さんが椅子から立ち上がる。
「いい、ツィラ? あの子達も、よく喧嘩をするのよ。でも、仲直りする時に必ず二人ですることがあるの」
「何ですか?」
奥さんは音もなく私のそばに来た。そしておもむろに私を抱きしめた。
「不思議ね。つかみ合いの喧嘩をした後だって、二人はこれで仲直りするの。どこで覚えてきたのかしら」
温かい、と思った。夜の庭にいる時よりも。お母さんが生きていた時以来だな、とも思った。
私の目からぽつりと涙が落ちて、奥さんのセーターにしみを作った。たれてきた鼻水を何度すすり上げても、涙は次から次へとあふれ出た。
奧さんはしばらく、そのままでいてくれた。私が泣き止むまで。




