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エセ陰陽師と猫又の不自由気ままな散歩旅~飼い猫から魂を分けてもらったので、二度目の人生はウチの子と異世界を謳歌してみせる~  作者: 虎柄トラ
第二章 ティタニアル大陸編 クラーク共和国

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第53話 一発本番やってみるか!

 バジリスクとはまたベクトルは異なるが、これまた厄介で面倒くさいことで有名なマンティコア。

 年老いた男の顔、赤黒い肌をしたライオンの体にサソリの尾をもつ合成獣(キメラ)に分類される魔物。

 俊敏な動きから繰り出される鋭利な牙、強靭な爪はどれも強力。だが、それよりも一番警戒しなければならないのが尾の先端にある毒針。一度でも刺されてしまうと、身体の自由を奪われ意識は混濁し最後には死に至る猛毒。

 近づかなければ安心というわけでもない。この毒針は飛ばすことができる。一発だけとかでもなくて連射可能というチート技だ。


 僕は彼らが戦っている場所から後方二十メートルの位置で立ち止まり戦況を見守っていた。

 普通に考えればそんな時間的猶予などがあるはずものない。今すぐにでも加勢するべきなのだが、僕はかの魔物を倒すべく策を巡らせることにした。


 迂闊に今この戦闘に参加するのはマズい……声をかけるどころか、これ以上近づかない方がいいと、細胞一つ一つから危険信号を発している。


「なんだ……この感じ……」


 そもそもこの状況がおかしい……不自然すぎるのだ。魔物大図鑑に載っていた情報では、騙し討ちに失敗した場合は、近距離なら牙、爪、尾による猛撃、遠距離なら毒針による連射で獲物を仕留めにくる。もしくは一度逃走して姿を消したのち、また騙し打ちをしてくるはずだ。なのに、このマンティコアはそのどちらの行動もとらずに、一定の距離から彼らの様子をうかがっている。


 マンティコアは自分からは何もしない。彼らが近寄ってきたり攻撃してきたりと、何か行動を起こした場合に、けん制として毒針を飛ばしたり前足で薙ぎ払ったりする程度で、それ以上追撃もしようとしない。連発できるはずの毒針も足元に単発、薙ぎ払いについても爪は出さないし低速。

 これは手加減を通りこしての完全な舐めプ。だけど、そのおかげで彼らは死なずに済んでいる。


 僕が加勢すればその関係性が崩れてしまう。


 今回に限っていえば、魔物が特殊個体で良かった。ただそれとは別に思うことがあった。魔物が人間を観察し学習するような素振りを見せたこと。


 一抹の不安がよぎるが……報告ついでにそれは冒険者ギルドに全部丸投げしてしまおう。


「ここから鬼火で狙撃したとしてもマンティコアなら軽々と避けそうだ……鬼火あれ速度出ないしな。あーあっちなら可能か? まだ練習中だけど、それしか方法なさそうだし……一発本番やってみるか!」


 僕はケースから鬼火とは異なるデザインの護符を取り出した。護符を挟んだ指をマンティコアに向けて、妖力を指先に流し「紫電!」と発した。口に出さなくても妖術は発動できるのだが、成功しますようにという願いを込めた言霊だ。


 護符が燃え尽きると同時にマンティコアの頭上数キロに雷雲が発生した。


 ゴロゴロと音が鳴り上空に紫色の閃光が走った刹那、その光は一筋の線となりマンティコアめがけて落ちた。避雷針となりえる木々が生い茂るなか、ただ真っすぐと狙い撃った。

 さすがのマンティコアも稲妻を躱すことはできなかったようで、断末魔を上げる時間すらもなく一瞬で全身を焼き焦がされた。


 僕が新たに手にした鬼火に次ぐもう一つの攻撃手段、その妖術の名は紫電。術者が指定した位置や対象の頭上に雷を落とす。この雷は対象が屋外にいる限り、近くに避雷針があろうが関係なく必中する。

 護符のデザインは鬼火同様にデフォルメされている。紫色した太めのギザギザマークの中心に黒く塗りつぶした三角形が三つ。二つは目として残り一つは口の役割を果たしている。

 効果テキストは紫色の雷を頭上に降り落とす。


 またこの紫電には鬼火とは違って、とある機能が付与されていた。紫電を発動するためには指先で照準を合わせる必要がある。対象の大きさや距離に応じて、正確に狙うのが難しい時もある。状況によっては、移動しているのを狙わないといけない場合もある。そこで、役立つのが紫電にのみ備わる機能だ。

 その機能は紫電を落としたい対象に指先を向けると、自動で照準を合わせてくれるというものだ。エイムアシストな上に、屋外限定とはいえ必中ときたもんだからこの妖術が弱いわけがない。


 自分の指が勝手に動く心地悪さだけがこの妖術の問題点だと、思っていたが実践したことで色々と浮上した。


 武器を投げ捨て耳を塞ぎその場で座り込む冒険者三人。そんな彼らのもとへ駆けつけようと思ったが、僕もまた身動きが取れずにいた。


 紫電によって発生した衝撃波にのって、砕けた石畳やらの瓦礫が飛び跳ね身体に当たる。様々な物の焦げた匂いと砂ぼこりが鼻腔をくすぐる。マンドラゴラと引けを取らないほどの雷鳴が耳をつんざく。


 落雷地点から二十メートル以上離れていてなお、これほどの目と鼻、耳にダメージを与えてくる。


 使いどころを間違えると、敵どころか術者にまで被害が及ぶ一撃必殺の妖術。敵以外にも場所や状況をよく見定めた上で、どうしてもという時以外は封印していた方がいいかもしれない。


 彼らが上手いことマンティコアから離れていてくれて本当に良かった。

 まあそれでも僕よりも近くにいた彼らはそれなりの被害が出てはいそうだけど……命があるだけマシだよ、うん……あとで謝っておこう。


 風も収まり目を開けれるようになったところで、僕は被害状況、討伐確認のため彼らのもとに向かった。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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