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エセ陰陽師と猫又の不自由気ままな散歩旅~飼い猫から魂を分けてもらったので、二度目の人生はウチの子と異世界を謳歌してみせる~  作者: 虎柄トラ
第二章 ティタニアル大陸編 クラーク共和国

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第40話 いや出て来いよ⁉

 彼らと軽く挨拶を交えたところで、僕は彼女との約束に従い例の場所に同行した。自分ひとりだけなら徒歩で十分もかからない距離だったのだが、大人数での移動となるとその二倍の時間を要した。


 ただそれでも国境町を守っている騎士なだけはある。僕の歩行速度は冒険者の町にいた時よりも速くなっていた。にもかかわらず、彼らはたったその程度の遅れだけで済んでいたからだ。


 ガラス瓶が大量に詰め込まれた麻袋を担いでいる上に、大の大人が丸々隠れそうなほど巨大な盾や、ハルバードと呼ばれる斧と槍を合体させたような重厚な武器を背負っていて、その速度を騎士全員が維持していた。


 もし彼らが冒険者だったとしたら、ゴールドランクは余裕だろう。というか、近接戦闘に関してはいえば僕は全敗必至。勝つ見込みどころか、真っ暗な未来しか見えなかった。


 そんな彼らでさえもバジリスクを倒すとなると、これぐらいの人数を割かなければならない。

 地を這うトカゲと物理的な戦闘を行ったら、それほど脅威だということか……。


 リンから授かった妖力、教わった妖術があって本当に良かったと再認識した。




 その後、案内し終わった僕は石化した人たちが元に戻るのをただ眺めていた。バジリスクだったものは風に煽られて原形がなくなっていた。ただ大地に付着した灰が、そこにいたことを証明していた。


 商店で解石薬を手に取りガラス瓶越しに眺めただけでは気づかなかった。中身が回復薬なんて比にならないぐらいに粘度があって、どぶ水のように濁った茶褐色をしていたことを。それを容赦なく頭からぶっかけられる……石像の時はまだいいとして、元に戻った瞬間に嗚咽が連鎖的に開始されていた。


 何があっても石像にだけはなりたくない。やはりこの狩衣の状態異常無効が、この世界でどこまで通用するのか確かめる必要がありそうだ。


 無事全員を救助することに成功したのを確認すると、騎士の一人が先に帰るように言ってきた。


「この度はご協力ありがとうございました。あとは私たちが行いますので、メグル様は一足先に国境町(プレア)にお戻り下さって大丈夫です」


「分かりました。僕が手伝えることもなさそうですし、お先に失礼しますね」


 犬耳騎士に会釈をして回れ右をした時だった。背後から呼び止める声が聞こえた。


「あっ、すいません、メグル様一つだけお願いしてもよろしいでしょうか?」


「あっはい……何でしょうか」


「呼び止めて申し訳ないです。あの……彼女も連れて帰ってもらっていいですか? 先行で報告だけしておこうと思いまして……」


「はあ~、分かりました。僕でよければ?」


 先ほどまで自信満々に受け答えをしていた彼と同一人物とは思えないほど、弱々しいというか何か隠し事をしている。そんな風に感じ取ってしまえる素振りをしていた。


 この空気感を僕は知っている。トラブルメーカー的な人を紹介されるのではないか。あのアル中痴女のルル的な人物を。


「ありがとうございます。では、よろしくお願いします。イシュラそういうことだから、君は彼と先に戻ってくれ」


「……お願いします」


 彼の背後から何とも弱々しい少女の声が聞こえた。


「……いや出て来いよ⁉」


「…………」


 彼は少々語彙強めで吐き捨てたあと、俊敏な動きで僕の隣に移動した。彼がいた場所にはぶかぶかの騎士服をまとった小柄な猫耳少女の姿があった。身長だけで判断するにニーナと年が近いかもしれない。ただあの看板娘とは性格は正反対のようで、彼女は大人しく内気な性格をしているようだ。


「あの……道中よろしく……」


「…………」


 挨拶がてら握手でもと思っていたが、僕の手は空を切った。彼女は差し出した手をまじまじと見つめるだけで、行動に移すことはなかった。


 俯き口をつぐむ彼女に代わって、彼は申し訳なさそうに口を開いた。


「メグル様、気を悪くしないでほしい。イシュラは少々……いやだいぶ人見知りなだけなんです」


 第一印象は間違っていなかった。この世界に来る前の僕も似通った性格だった。彼女の心境も手に取るようにとまではいかなくても、何となく理解することはできる。拒絶されたわけじゃないと分かるだけで十分だ。


 それに一番懸念していた残念系じゃなかっただけで、何も言うことはない。花丸百点、万々歳だ。


 さて、国境町に到着するまでの僅かな時間ではあるけど、できるだけ彼女に歩み寄るように頑張ってみるとしよう。


「あっいえ、気にしてないですよ。じゃ、イシュラさん行きましょうか?」


「……はい」


 聞き耳を立てなければ聞き逃しそうなほどか細い声だった。彼女はすぐに踵を返して一人そそくさと歩き始めた。


 何度も頭を下げて謝罪する犬耳騎士と、その謝罪に対してまた謝罪する僕。その様子を興味なさそうに先行く猫耳少女という構図が完成した。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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