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15羽 ガールズトーク

『まず、山越高校関係者、で間違いないよね?』

初めて本人と直接対峙した私以外の転生者。彼女の姿は人間だが、日本人とは思えないような顔立ちに黄金色の髪。

どうやら人間に転生しても向こうの姿は引き継がれないらしい。

これはかなり厄介だ。

私には相手の力量をある程度測れるスキルはあるが、相手のスキルを覗き見るスキルは無い。

ある程度の実力者が現れた場合、それがただ単に強いだけの存在なのか、それとも転生者特有の強さなのかを何かしらの方法で見極めなければならない。

「そうだよ。2年3組、板橋ほのか。」

『...!?』

この人、あっさり自分の前世を明かしてきた...?

場合によってはそれだけで相手が転生者だったら狙われる可能性もあるのに。

「...?何ぼけっとしてんの?あなたの名前は?」

『わ、私はネザーランド...』

「今じゃなくて、前世の!さっき【スルーシーイング】でスキル見たし、あなたも山越の関係者なんでしょ?生徒?それとも職員?」

『あ、えっと...』

私は自分の名前とクラスを告げる。

彼女の発言に驚いたのにはもう一つ理由があった。

「え、あなた同じクラス?」

『...そう。私も2年3組。』

彼女が同じクラスだったこと。

板橋...板橋ほのか...

『あー、あの根暗オタクの。』

「オイコラァ!!いくら前世とは言え面と向かってディスられて黙ってられないよ!?」

『いや、雰囲気変わりすぎでしょ...』

少なくとも前世の彼女はこれほどハツラツとはしていなかった。休み時間は教室でライトノベルを読んでいるような、典型的な陰キャって感じで...

「そりゃ、王族として7年も育てられれば人格だって変わるよ...っていうよりは、せっかく転生したんだし、今度はなりたい自分になろうって思っただけ。」

『...嘘っぽい。』

「大概失礼だよね、あなた...」

『読んでた本に影響されたのか...』

「...っていうか、あなたも人のこと言えなくない?」

彼女は私の体を興味深そうに触ったりしながらつぶやいた。

『わ、私は大概前世と変わってないでしょ...?』

「いーや!見た目はまあ仕方ないとして…少なくとも、王よ、ご無礼をお許しください、なんて言うようなキャラじゃなかった!」

『あ、あれは聖獣としての王様に失礼のない態度をとっただけじゃん!』

「それはそうだけど。前世の私が根暗オタクならあなたは根暗ボッチじゃん!」

『ぐっ...!』

「うさぎが仰々しい態度とってたのもビビったわ!ドラゴン、フェニックス、巨大カメに並ぶうさぎって何?さっきのナーガの子の方がよっぽど聖獣っぽいし!」

『あ、あんたの趣味の世界観と一緒にしないでくれる!?これでも聖獣としてこっちもいろいろ苦労してるんだけど!?』

「知らないっての!大体森のせいで苦労してるのは私のお父様も同じだっての!てか何で私うさぎのあんたと会話出来てんの!?」

『私の【思念共有】のおかげだよ!転生して一番最初に貰ったやつだからもうフルオートで使えるの!!』

「【思念共有】?よくそのメルヘンチックなスキルを最初に貰って今日まで生き延びて来られたよね!!」

『それは本当にそう!!!』

【思念共有】で話しているから疲労はしないはずなのに、なぜか息が上がる…

疲れる…JKのガールズトーク疲れるよ…

…転生してからの年齢足したらアラサー手前だけどさ。

「はぁ…はぁ…っていうか、何であなたはお父様と会ったことがあるの?私、記憶が戻ったのほんの数年前なんだけど、それより前にお父様はあなたに会いに来てるんでしょ?」

『はぁ…はぁ…転生する種族の問題だよ…』

「ああ、転生先の種族までは選べないってあれか…それとあなたとどう関係…しかないように見えるけど、どういう経緯で記憶が私より先に戻ってるの?」

『おそらく、転生先の種族においてその種族のある一定の成熟度を越えれば記憶が戻るんだと思う。大体人間だと物心の形成時期くらいで、野生下で過ごす私みたいな生き物なら生まれて数週間から数か月くらい。』

「なるほどね、それで私より先に記憶が戻ってたんだ…」

異常なまでの呑み込みの速さと冷静になるまでの時間。やっぱり彼女の読んでいた本ではこういったシチュエーションが多々あるからこそなのだろうか。

『えっと、ほのか…の方で呼ばない方が良いか…ルカは…』

「え、何で?せっかく同じ転生者なんだし前の名前で良くない?」

『…そういう訳にはいかない。』

私は少し躊躇して、それでも彼女なら、ほのかなら大丈夫だと自分に言い聞かせて話す。

『…あなたのスキル【ステータス開示】と【スルーシーイング】その2つを使っても効果がよくわからないスキルがあるでしょう?』

「ある、ね。【グリーディキリング】そしてあなたもこのスキルを持っているのを確認して、これがあの体育館の影が言っていた3つ目のスキルなんだっていうのが今日確信に変わった。このスキルは何なの?あなたが3つ以上スキルを持っていることと何か関係がある?」

『このスキルは、私たちがこの世界に転生させられた最大の理由で、そして最大の切り札…』

近くを飛んでいた蝶を捕まえ、地面に押し付けて彼女に差し出す。

『この世界では、生物の基本的生態もスキルの一部として認識される。魚なら【遊泳】鳥や虫なら【飛行】と言った風に。この虫だって他にスキルは持っていないけど、きっと【飛行】のスキルは持ってるでしょ?』

彼女の目が力強く輝く。近くで見るとよく分かるが【スルーシーイング】を使っている間は虹彩が黄金色に輝くようだ。

なんというか、まさにロイヤルなスキルって感じがして少し羨ましさもある。

「…それはまあ、生まれた時から持ってたスキルでよく見てたから知ってるけどさ…それとこの虫とどんな関係が…」

『この虫の全てが欲しいと思いながら、この虫を殺して。』

「はぁ?いや、私虫嫌いなんだけど...」

『良いから。能力も飛行以外持ってないから、靴の裏で潰すだけでいい。』

「...分かったって。ほら、危ないから手退けて。」

私が手を避けると彼女は顔をしかめながら蝶を踏み殺した。

『...ッ!?何、これ...!?吸収対象...獲得スキルって...まさか!!?』

恐らく彼女が今見ているのは、【ステータス開示】と【グリーディキリング】の2種類によって脳に流れてくる情報だろう。

『...多分考えてることと同じ。【グリーディキリング】は殺した相手のスキルを奪うスキル。』

「それであなたはそれだけのスキルを持ってるって訳...【支配者(ロード)】を持ってる理由も納得いった。文献にあった数年前の【獣の支配者(ビーストロード)】の入れ替わりってこれが原因だったんだ...確かにこれは、迂闊に正体明かさないほうがいいね。」

彼女は腕を組んで辺りを歩きながら、自分の考えを整理するように話した。

「多分、転生したことで人格が変わってしまった関係者は他にもいると思う。劣悪な環境に生まれていれば尚の事歪んだ方向に狂っちゃう可能性は高そうだね。そういった人間がこの事実を知ったとき、それは私たちにとって大きなリスクになる。」

『強力なスキルを持っている山越関係者は、より強力なスキルや珍しいスキルを持っている可能性の高い同じ山越関係者を狙いに来る。』

「オンラインストラテジーゲームみたいなもんだね。そう考えると、私なんかは絶対にスキルを奪われちゃ駄目なタイプだ。」

『【ホーリーゲート】も強力だけど、ロム王国の王族継承スキル【スルーシーイング】が厄介だね...』

【スルーシーイング】があれば一度スキルの仕組みに気づきさえすれば、こちらのブラフも関係なしに転生者ということが割れてしまう。

だから、彼女には転生者であることを隠して強くなってもらって、なおかつ私の味方で居てもらわなければならないのだ。

今の私にとって彼女はリスクでありリターンでもある。

『...だから、ルカ...王女様、相談が...』

「うむ!許可しよう!堅苦しいから森の聖獣殿は私を呼び捨てにして良いものとする!」

『はは、助かります。じゃあ私も...個体名とかは無いから、うさぎでいいや。』

「種族名を名乗るの?それって私とかがニンゲンって呼ばれるようなもんでしょ?嫌じゃないの?」

『野生だと別に珍しいことでもないし、むしろ個体名がある方がレアだよ。』

「じゃあさっきのナーガの女の子はレアケースだったんだ。ヘビ子ちゃん、だっけ?」

『あの子は私が名前をつけたからね。育ての親ってところかな。』

「聖獣が育ての親かぁ。どうりで強いと思ったよ。王国の中でも精鋭のラドバが手も足も出てなかったから。」

『私のスキルをいくつか分けてるってのもあるけどね。それでも私は力を分け与えただけで、使い方を学んで判断してるのはあの子自身だから。それはあの子の才能かな。』

「なーんかホントにお母さんしてるみたいだねぇ?」

『前世の歳もカウントすればもう子供がいてもおかしくない歳だったから。』

私はルカの足元で彼女の足に触れる。

抱きかかえられて見るその顔は非常に整っていて、その強さを秘めた瞳に吸い込まれてしまいそうなほど美しかった。

『この世界じゃ、私たちはかなり強い。けれどそれ故により強い奴らに襲われる危険がある。そしてそれは私たちの周りを巻き込んでしまいかねない。私は、私の大事にしたい命を守りたい。』

「同感。私もお父様やお母様、そして国の皆を守りたい。民の安全を担保するのが王族ですから。」

『...その為にルカ、あなたには強くなってもらわなくちゃいけない。』

「あははっ。私のためじゃなくて自分の為に私を強くするのかぁ...強欲なうさぎさんだね?全然メルヘンじゃないや。」

『そうだよ?だって私は強欲な兎(ネザーランドウサギ)だから。』

「いいね、それ。向こうでも話してたら、私ら良い友達になれたかもね。」

『どうだろ。私オタクって苦手だから。』

「うーわ、偏見キツ...良いよ、やっぱ私だってボッチは生理的にNGだから。で?これから私は何をすればいいの?」

私を頭に乗せてクルクルと回る。まったく危機感が感じられないが、本当に自分が今一番狙われているという意識はあるのだろうか。

とは言え、伝えないことには始まらない。私は彼女の頭にしっかりとしがみついて、上から顔を覗き込んで告げた。

『私のスキルを使いこなして。』



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