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第95話「太陽祭」星見の塔

 ヴォルフと別れ、姉御と待ち合わせの場所へ。

 わたあめ屋台横野渡り廊下だが、人多い。 わたあめが一番高いのに、珍しい物なので列が三回折り返している。

「ジェル姉、パトリシア嬢?」

「ここです!」と、ピンクちゃんが手を降る。渡り廊下挟んだ屋台の反対側に女子二人がいた。

「さっき、外側半周したけど見当たらない。庭園で会ったヴォルフがもう半分の外側探してくれてる」

「そうですか……」

「もう一度宿舎の部屋確認してもらいましょう」

 俺らは渡り廊下に繋がる講堂校舎のドアを開けようとした。

 ガチャガチャ。開かない。

「ちょっと前に、わたあめ屋台が凄い事になってたから、ドア閉め切られたよ」

 知らない学生さんに説明された。

「あざーす」

 俺らは遠回りして、宿舎に行く羽目に。

 丁度格闘舞台は大盛りあがりしていて、人集りが出来ている。

 わたあめの列とかち合いかけて、人混みかき分けて進まなければならなかった。

「あのーっ」

 聞き覚えのある女子の声。

 黒髪眼鏡ちゃんだった。制服の上に救護用の白いエプロン、左腕には赤い腕章を着けている。

「もしかして、ブルジェナ嬢探してます?」

「うん、そやけど」

「彼女、塔にいますよ」

「「「えっ?」」」

「数分前にここを通って、あっちに行きましたから」

 黒髪の同級生は、北西の塔の方向を指差した。

「塔?」

「星見の会は、前半は終わりましたけど……」

 ピンクちゃんがジェル姉の顔色伺った。

「早く! 早く、行って! 間に合わなくなる! 早く!」

 突然怒鳴りだす黒髪眼鏡ちゃん。

 あまりの剣幕に気取られて、俺らはたじろいだ。周りも凍り付いて一瞬沈黙。

 が、格闘に夢中の奴らは全然聞こえてないのか、我関せずでワーワーと観戦していた。

「わかった、わかった。取り敢えず、行ってみるわ」

「ありがとう、リリアナ嬢」

「ありがとうございます」

 人混み掻き分け北西の塔に向かって、俺らは走った。

 建物と建物の間を抜ける。さすがに誰もいない。

「本当に塔の方にいるのかしら?」

「わからんが、リリちゃんが見かけたんなら行くしか……んっ?」

 薄橙色した石造りの塔は、チェスの駒の様ないかにもな形をしている。

 塔最上部の縁の上に人が登って立っていた。

「あれって!?」

「ブルジェナ嬢っ!」

 一学期に、一度塔の中に入った事があったから、屋上の作りはわかる。縁は人一人余裕で立ち上がれる程度の広さはある。

「何してんの、あいつ」

 立ち尽くして彼女の様子を伺う。

 見張りの為に高低ある縁の低い場所から高い場所によじ登りだした。

 縁に立ったブルジェナ嬢は、西の方に向かってキョロキョロ。

「星でも見てるのかっ?!」

 ビューっと突風が吹いた。

 土埃から顔を守る為両腕で防ぐ。

 腕の間から塔の上の女学生の姿を確認する。

「あっ!」

 バランスを崩しブルジェナ嬢が落ちる。

「やっべー!」

 反射的に姉御と二人で走り出す。

 そして、しゃがみ込み地に両手を付けた。

「「“泥の傀儡(マドパペット)”!」“大きな手(ビッグハンズ)”!」

 錬成陣無しで錬成宜しく俺らが叩いた地面から、魔力が伝わりスパークする。

 塔の下の土がむくむくと盛り上がり、盛り上がった土の周りの地面は同心円状に抉られた。

 うず高く盛り上がった土の山。

 側面から二本の腕が生え、落下する女学生の華奢な身体を大きな両掌で受け止めて壊れる。

 直ぐ様下から生えてきた大きな両掌で受け止め壊れ、受け止め壊れ、これを数回繰り返し、地面から高さ五十センチの辺りで彼女の身体を完全に受け止めた。

「よかった……」

 パトリシア嬢の安堵のため息。

「おひぃさん!」「ブルジェナ嬢!」

 大慌てで三人でブルジェナ嬢の下へ。

 二つの掌の形をした土山の上で、おひぃさんは目を開けたまま放心していた。

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