第93話「太陽祭」休憩
演目の詠唱が終わり、一旦解散。
俺はクレープの屋台に並んでいた。
おかずクレープもあるが、女子のが多い。
室内訓練場と校舎の間にある舞踏用舞台が見える。
激しいギターの音。黒髪をアップにした赤いドレスの女性がカスタネット片手に踊っている。
フラメンコのようだ。
ひゃっはーと歓声上げてるアホな男子らが群がっている。
スカートがヒラヒラするからなのか……。
中身は見えないと思うが。
次のフレンチカンカンみたいのは中身見える……。が、あれも別に下着ではないし。見せパンやぞ、見せパン。
りんごのコンポート包んだそば粉クレープ受け取って、人集りの舞踏舞台へ。
見せパンを視姦しても良かったんだが、落ち着いておやつ食べたいから食堂に向かった。
カウンター側寄り前方のテーブルにジェル姉達がいた。
「カルヴィン様!」「ただいまー」
ピンクちゃんがいち早く気がついてくれた。フラグの予感、って別に食堂をベースキャンプにしてるわけでもないんだが。
カウンターでお茶を貰って、三人の席へ。
「カルヴィン、なかなか良かったわよ」
「そりゃ、どうも。で、どんだけバター盛ったんや?」
「えっ……」
ジェル姉のじゃがバター。握り拳大の皮付きジャガイモの半分くらい掘られている穴に、まだバターが薄っすら固まりで残っている。
「バターは好きなだけ乗せられるらしいね……」
俺はジト目で姉御を見つめる。
「んー、どんだけ乗っけたかな~?」
無言でぷいっと視線を反らす姉御。
「で、どんだけ乗っけてたん?」
わざと首を傾げてにこやかに再度問うた。
「ジャガイモの三分の一か半分くらい……」
パトリシア嬢がボソッと答えた。
俺はじっとジェル姉を見つめた。
「あまり脂肪分をお取りになりますと、お胸以外がお肥えになりますわよ、お姉様っ!」
「いやー、赦して! バターの誘惑に勝てないのよーっ!」
クレープかじってる女子二人が呆れていた。
「お祭りですから、普段と違う事をしても良いじゃありませんか」
ブルジェナ嬢が優しく庇う。
「そうよね、そうよね」と、言わんばかりにウンウン頷くうちの姉御。
たく、しゃーない人だ。
「結局、君等は格闘は見ず? 二回目はデリックが出てるはずなんだが」
「人集りが凄いのと、勝っても負けても選手のお顔が凄い事になっていますから……」
パトリシア嬢が遠慮がちに言った。
「治療係してるアナベル嬢が『あんなにお顔が腫れた人、初めて見ましたわ』って、びっくりしてたのよねぇ」
「なんだか怖くなっちゃって」
ピンクちゃんが、ジェル姉とおひぃさんの顔を覗き込んだ。
「九時頃の決勝戦は観たいかなとは、思ってるんですけど……」
なんか怖いもの見たさ的な反応だ。
決勝戦。多分、デリックとレオ先輩がやり合うのだろう。剣術じゃないならどっちが勝つのか。魔封じの首輪して尚強いって、やっぱりあいつ等規格外の化け物だと思う……。