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第89話「太陽祭。当日」

 午前中で今年の授業は終了。

 午後からはバタバタしている。

 昼食時間はいつもより三十分早く開始され、三十分早く食堂は終了。献立も簡単にパスタ一種類とお茶だけだった。

 演目出演者は、最終調整でバタバタしている。

 舞踏台と音楽台で演者が軽い練習をしている。

 詠唱、舞踏、音楽の舞台は、茶色い木製の薄い箱の様な物だ。高さはニ十センチはない。

 詠唱は一人か二人で座って朗読するだけなので一番小さい。

 四舞台で一番大きいのは、格闘舞台。

 四ヵ所にポールがあってニセンチ以上の太さがあるロープが三本ずつポールに結わえられて、結界みたいにリングになっている。俺が想像していたボクシングのリングより小さい。

 高さは三十センチ以上あり、クリーム色が入った白っぽい幌布に覆われている。

 裸足で行うので、釘や刺等が出ていないか念入りにチェックしている業者の人と学園職員。

 危険な順なら、格闘、舞踏、音楽、詠唱か。

 一週間前から、詠唱担当者は小教室にて通しの稽古をしている。

 皆さん朗読お上手で、特に女子のは天使の囀り。芝居かかった俺の朗読なんてあかんやんと。

 落ち込む俺に先輩方。

「お供物だから。女神様に聞いて頂こうという気持ちが大事なのよ。例え学生がだーれも聞いてくれなくても気にしちゃダーメ!」と、素敵なアドバイスを頂いた。

 舞台確認や出演の先輩らと打ち合わせ、気が付けば夕方。

 夕食は四時から五時半くらいまで。

 献立は、根菜とベーコンの入ったさらっとしたクリームシチューとパン。

 一ヶ月以上塞ぎ込んでるブルジェナ嬢の事も気になるが、俺は自分の事で忙しい。

 ジェル姉やパトリシア嬢が傍におるから大丈夫とは思うが……。

 俺は一人で飯掻き込んで、さっさと食い終わると学生寮に向かう。

 一階ホールでうちのメイドのエマが、着替えの入った白い布バッグを用意して待っていてくれた。

「お着替えでございます」

「ありがとー! 暇やったら俺の朗読回見てね」

「かしこまりました」

 頭を下げるエマを後にして、俺は一階奥の浴室に向かう。

 演者の学生は、演目前に禊代わりの入浴が習わしだとか。

 女子は知らんが、男子はシャワーで終わらせてる人が多いと聞いたので俺もシャワーで。

 シャワーを浴びて、飯を食いにいく学生もいるので、脱衣場には既に数名の学生がいた。

 服を脱いでいると、シャワー室からレオ先輩が出てきた。

 目が合ったのでお互い軽く会釈。

 彼が服を置いていた場所は、俺の棚の裏側。俺から見たら左斜め前。

「カルヴィン様も出られますか」と、ファイティングポーズ。

「わかってて言ってはるでしょ! 俺は朗読担当です。ゴリラみたいな人らに勝てるわけないでしょ!」

「ゴリラ?」

「筋力が人間より滅茶苦茶ある化け物みたいな黒い猿ですよ」

「そんなのがいるんですか?」

「ええ、どっかにいるんです。で、レオ先輩は優勝目指されてます?」

「剣術大会ではありませんので、女神への捧げ物として良い試合が出来ればとは思ってますが」

「ちょっと前に三年のブルーノ先輩が、『アレクシスには絶対に勝つ!』って息巻いてましたよ。剣術大会の雪辱を果たしたいみたいです」

「はははははっ。ならば先輩と対戦は真剣に取り組まねばなりませんな」

 レオ先輩の目の色が変わった。本気でやる気や、この人。

 士官学校組は怖い。

「それじゃ、俺は禊してくるので。健闘祈ってます」

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