第83話「成績発表」
先生から返却される成績表はペラ一枚。
名字のアルファベット順で、名前が呼ばれる。
ピンクちゃんは、最初の方に呼ばれていた。
先生は、ボードに乗せた用紙を見ながら、一人一人に何かしらの解説をしている。遠目から見ていても喜んだり落ち込んだりしてる学生の様子に、俺は戦々恐々。
で、ピンクちゃん。口元押さえて喜んだり、成績表貰ってがっかりして席に戻って行った。
「カルヴィン・クライン君!」
「はい!」
慌てて席を立ち通路を小走りに駆け降りた。
「数学と、魔法理論はa。君、詩は苦手?」
c評価だ。
「いやー。今回は恋愛ネタだったので入ってこなかったというか……」
苦笑いする俺。事実なんですから仕方がない。
「体術系と剣術はb。こんなもんね。貴族出身なら良い方でしょう。魔法実践だけどね、オールaなんだけど」
オールaならええやん。優秀やろ。なのに含みを持たせる先生。
「治癒系がね今回はaだけど、来年度は下がるかもしれないよ」
「えっ!?」
「普通の治癒力はそこそこだけど、"地"魔法特有の鉱毒系治癒魔法の効力はあまりなさそうだから」
ガーン。
「精進しまーす」
肩を落として席に戻らず。
「ジェルトリュード・クライン君」
「はいっ!」
姉御が席から降りてくる。
俺は先生から近い空いてる席に座り、頬杖付いて姉をニタニタ待ち受ける。
あっちに行きな!と手振りされたが、無視!
我が姉上の成績は……。体術系オールb。それ以上は聞こえないから席に戻った。
何人か呼ばれて、鼻眼鏡の名前が呼ばれる。
奴は"無"属性だからなのか、成績について先生からの解説に一喜一憂する事なく、静かに対応していた。
別の学生の名前が呼ばれ、奴が戻ってきた。
「なあなあ。成績表見せてよ。俺のも見せるから」
「はぁ……」
鼻眼鏡は四折にした自身の成績表を俺に突き出す。
「サンキュー!」
俺も奴に自分の成績表を渡した。
トマス・ゴーゴイ。鼻眼鏡の本名だ。
成績は、"無"属性で攻撃、防御、治癒に該当しないのでその他となってる。
成績はa。"魔具操作"
こんなんあるんや。
剣術、体術系はc。
筆記は、数学と魔法理論aの、他b。
魔法値は、二百八十八!?
"無"属性にしては高くないか!?
「ありがとう」
交換で用紙を返す。
鼻眼鏡はあまり俺の成績には興味なさそうだった。
なんやかんやで、白デブとチビ眼鏡の成績表も見せてもらった。
白デブ。ドゥエイン・ハムハット。属性"地"。魔法値二百五十。成績は……。筆記系、歴史b、他がc。魔法は、攻撃と防御b 、治癒aa!? ダブルaって、士官学校組の剣術、体術系でしかないって聞いたけど、魔法でもあるんや。で、剣術体術系は……dってなんでっか?
「e だったら補講だったから良かったー」
いや、来年度やばないか、こいつ。
チビ眼鏡。バティス・メイビス。属性"風"と"水"の二種属性持ち。魔法値は二百十。あんまり高くない。筆記は、オールb。 他はオールc だった。
俺も含めてぱっとしない成績であった。
そう言えば今朝からおひぃさんの姿を見ない。朝食は"地"系男子らと食ってたから、女子の動向を掴んでなかったし。
求愛騒動の件を引きずって精神的に疲れて、また授業を休んでるのかと。
「ブルジェナ・サンチ君!」
「はっ、はい……」
おひぃさんの消え入りそうな声。
真ん中の島の中央の席にいたパトリシア嬢の隣。ブルジェナ嬢が、先生の所へ降りていく。
「あの子、今朝からいた?」
俺は後ろの三人の方に身体を捻った。
「そう言えば見かけた記憶ないですね」と、チビ眼鏡。
「ずっと居たでござるよ。ずっと存在感をギラギラさせてるでござる……」
鼻眼鏡は俯いて右手で両目を覆っていた。
「貴女は紋章持ちなので、短期ですが特別授業があります」
「……。わかりました」
成績表を手に、とぼとぼと元の席に戻るおひぃさん。
ピンクちゃんに「どうだった?」と聞かれている様だが、彼女の反応は薄い。
そんなに成績悪かったのか?
それとも、まだ精神的に不安的なのか……。