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第82話「俺の前世では有名なファンファーレ」

 二年と三年に会長姉妹から接近禁止令が出されて、めっきりブルジェナ嬢へのナンパは無くなった。

 そういう理由で以前の様な日常に戻った……とは言いがたい状況だった。

 その日の午前中の授業は大教室だった。

 試験結果の返却日。

 士官学校や王都の魔法学院に通っていた事のある学生でも、初めての試験結果に緊張していた。一年は朝食時間からその話で持ちきりだった。

 授業開始前。今日は少し遅く教室に入る。

 既に顔馴染みのメンバーは席に着いていた。

 俺はいつも座るエリアの席ではなく、黒板を背に右側の島の奥に向かった。

 一番後ろの席の平民出身の男子学生三人。二人のメガネと大柄のデブ。

 彼らはいつもここを定位置にしている。後ろと横窓際は通路なので白デブが座り易いらしい。

 お姉らがオタク三銃士と呼んだゲームのモブキャラ達。

 頭に眼鏡を乗っけて真ん中に座って本を読んでいる黒髪の鼻眼鏡は、ゲームの何かを知っている可能性がある。もしも、俺と同じ転生者だとしたら……。

 彼らの前の席に近いた時、俺はとある曲を鼻唄として口ずさんだ。

 ご機嫌な感じて前の席の横に立つ。教科書とノート類の入ってる布カバンを机に置く。その間さりげなく鼻眼鏡を観察していた。

 俺の鼻唄の曲。ゲーマーだったら絶対知っている世界で有名な曲だ。

 知ってるなら絶対何かしらの反応するはず!

 しかし、彼はぴくりともせず、ずっと教科書ではない本を読んでいた。

 魔法の術式を魔具に落とし込む方法が書かれていた。そう言えば、こいつの実家は新興の魔具屋だ。

 得心しながら、俺は例の曲を口ずさみ続けた。

「クライン卿、それは何の曲ですか?」

 にこやかに話かけてきたのは、鼻眼鏡の隣のチビ眼鏡だった。

「こっ、これ? 子供の頃観たお芝居の曲なんだ」

「何のお話です?」

「多分、勇者が世界を闇に沈めてしまった竜の魔王を退治する為、魔法のクリスタルを集める話だったかな……。子供の頃過ぎてタイトルは忘れた。曲だけ耳に残っていて、気分がいいと口ずさんじゃうんだよね」

 俺はどっかり席に座った。

「へー。そんなお話があるんですね。まるでこの辺りに伝わる」

 ガラガラガラ

 扉が勢い良く開く。

 中年の女性教師が、大きめの白い布製のトートバッグを持って入ってきた。

 先生が教卓の上にバックを置いた。

「起立」と、今日の当番の女学生の声。

 皆一同立ち上がる。

 一礼を終えると皆席に着いた。

「それでは皆さん。お楽しみの試験結果です!」

 拡声器の魔具も使わない女教師の声が、教室の後ろまで響き渡った。この先生、地声がデカいというかよく響く……。

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