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第81話「嵐は去って。風呂場にて」

 陳情した日の夜。既に俺は二年のエリオット殿下と三年の脳筋先輩らに事のあらましを伝えていた。

 殿下とは、寮の二階廊下で会ったので立ち話程度。その時に、王子様の傍らにいたポチが無表情のまま安堵した様な気がした。何故?

 三年の兄貴達には、寮一階の浴場で偶然鉢あったから湯船に浸りながら話した。

「貴殿ら大変だったなー」と、ブルーノ先輩はガハガハ豪快に笑っていた。

「先輩方は、紋章持ちの女子に興味ないんすか?」

「うーん。騎士たるもの、武勲を挙げて認められたいではないか。嫁の存在で出世するのは騎士の名折れ」

 二人の先輩がうんうん頷く。

 ストイックやな。

 三人の熊みたいにでかい先輩らが先に上がっていった後も、俺は湯船に浸かってぼーっとしていた。

 ゲームのラストバトル。

 "風"属性のブルジェナが"火"属性魔法を使ってたのは、"元素精霊の淑女"だったからだ。

 他に、赤い髪の女と青い髪の女。

 でも、彼女達を学園内でそれっぽい女子学生を未だに見かけた事がない。

 来年度の新入生……。

「痛てっ!」

 時々、ゲームの展開を考えていると頭が痛くなる。大体、左の前頭葉から眼球にかけて、ズキッとした痛みが走る。

 痛みは、考えるのを止めると暫くして治る。

 俺は左頭を押さえたまま湯船に浸かっていた。

 頭痛が治まったので、脱衣場に向かう。

 自分の服を置いてある場所で身体を拭いていると、シャワー室からレオ先輩が出てきた。

 目が合ったのでお互い軽く会釈。

 レオ先輩は筋骨たくましく、おまけに色々でかい。どっかの女性ゲーマーさん言うところの“人権”のない俺からしたら羨ましい限りだ。ちくしょう、前世ではジェル姉くらいの背丈があったのに。

 レオ先輩は俺と同じ棚に衣服を置いていて、俺の二つ左隣の一番上だった。

 服を着替えながら例の話を振った。

「エリオット殿下達には伝えたんですが、会長経由で『紋章持ちに気安く話しかけないように』と明日通達が行きます」

「時々見かけてましたが、貴殿の同輩女子の件、大変でしたな」

「求婚目的のナンパが後を絶たず、学業に支障が出たので、会長に直談判してきました。レオ先輩は"火"属性ですから、特に興味ないですよね」

「騎士ならば自ら手で武勲を掴みとるもの。将来の伴侶の力で出世など、騎士道から外れていますからな」

 この人もストイックや。

 でも、アレクシス・レオポルドは、ゲームでは主人公の攻略対象者だ。

 俺が知る限り、彼は今のところピンクちゃんとは王子様より接点少ない。とは言え、油断は禁物。

「ところで、俺の友達のパトリシア嬢からクッキー貰ったそうですね。甘いものお好きだったりします?」

 ピンクちゃんはパティシエ志望だ。この兄貴、実は甘党だったりすると大変まずい!

「クッキー? あぁ、以前カフェテリアに寄った際、殿下達と一緒に切れっぱしをご相伴させて頂いたあれか。自分は出された物は食しますが、好き好んでは食べないです」

 良かった。甘党じゃない。なら、

「ただ、彼女達の作るクッキーは、なかなか美味かったですよ」

 ほぼ服着替え終えて、頭をタオルでわしゃわしゃしながら、レオ先輩満面の笑顔。

 頭にタオル被ったままジャケット着る俺の手が止まる。

「おや? ジェルトリュード様が、貴殿用のクッキーを受け取ってましたが。受け取っていませんか?」

「えっ? 知りません」

「んー。姉上にとられてしまいましたかな。姉弟ならよくあることですよ、クライン卿」

 頑張れ!と言わんばかりのサムズアップをされる俺。

 姉御、俺用のクッキーがめよったな。

 俺は時々姉御の部屋に行く。たまに、エマがお茶出してくれた時に、お茶請けのお菓子を少し出してくれるのだが。

「私の部屋に来た時、渡しておくから」と、受け取って、全部食べてしもうたんや!

 ちくしょい!

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