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第80話「一応陳情したけれど」

 夕食後。我が姉ジェルトリュードの部屋。

 姉御は、エマのベッドにどっかり腰かけている。俺は腕組みして立ったまま彼女の対面にいた。

「で、ブルジェナ嬢周辺どないよ?」

「同級生女子と相談して、彼女を独りにしないようにしましょうってなった」

 ちょっと一安心。

「でも、それだけじゃ足らんよな」

「会長にお願いしない?」

「じゃあ、今から双子会長にお願いしに」

「待って。学生同士の話よ。会長室で話した方がちゃんとしてると思うの」

「陳情って感じ?」

「そう。アポは私が取るから。明日以降に会長さん達にお願いしましょう」

 姉御の提案で今日はお開き。



 翌日の放課後。

 姉弟、そして紋章持ちの三人で、会長室へ。

 俺らがおひぃさん挟む形で三人並ぶ。

「学業に支障が出ているのでは仕方ありませんね」

「うちの同輩共が迷惑かけて申し訳ない」

「すみません、よろしくお願いします」

 ブルジェナ嬢が頭を下げる。

「一応、接近禁止言い渡すけど、あくまで通常の時だけね」

「「「えっ?」」」

「禁止しても、馬鹿は来るよ。ガス抜きが必要だから」

「学年末のプロム。これだけは接近許可させてね」

「ちょっ、待って下さいよ。またいっぱい男に集られますやん!」

「そうですわ!」

 俺ら焦る。押し寄せる男子学生におひぃさんが困惑するのは目に見えていた。

「だからだよ」

「一年生は、三人としか踊れません。ご自分でお誘いになるか、それともお誘いを受けるか、それはブルジェナ嬢の判断でお決めになれば良いことでしょ」

 セレスタ会長はクスクス笑う。

「不純異性交友は禁止されているけれど、健全な男女交際は特に禁止されてないのだよ」

「プロムが社交界の代わりでもある以上、こちらもそれ以上は対応出来ないのよ」

「それで、いい?」

 ジェル姉の問いに、ブルジェナ嬢は小さく頷いた。

「カルヴィン様が仰られていた懸念は、ちゃんと学長達に報告しますから、安心してね」

 銀髪会長は、にっこり笑う。

「冗談であっても、とんでもない事をほざく馬鹿もいたもんだ」

 黒髪姉さんが苦々しい顔で頭を掻いた。


 会長室を出て、三人並んで学生寮に向かう。

 会長達から接近禁止の通達を出してもらうに至ったが、それは明日以降の話。

 今日から明日の授業開始までは、おひぃさんは狙われる。

 会長室や大教室のある校舎から出た途端、「おー、いたいた」と数名の男子学生らが駆け寄って来た。彼らのスカーフ留めが青かった。

 ブルジェナ嬢は下を向いて小さくなる。なんも悪い事してないのに。

「もしかして寮に帰る? なら、夕食までお話しない? お茶なら奢るよ」

 俺ら無視して、歩きながら真ん中のおひぃさんを覗き込むように話かける学生。

 学生寮の入口近く。

 姉御がおひぃさんの腕捕まえて立ち止まる。そして、くっと引っ張って、自分の後ろに友達を隠した。

「先輩方、レディに対して厚かましくございませんか? 彼女、平民出身とは言え紋章持ちの特別な存在ですよ。公爵家の子女を差し置いて軽々しく話し掛けてよろしいとお思いですか?」

 怒気を含んだ低い声。

 目を吊り上げて恐ろしいお顔をしている美女に、先輩らびびっている。いや、俺もびびるって。

 怖い、怖い、怖い。

 怖じ気づいたようで、一人が咳払いして「いっ、行こう」と仲間連れて食堂の方に逃げて行った。

 姉御は軽く目を閉じる。軽く深呼吸して、

「大丈夫よ」

 ブルジェナ嬢に微笑んだ。

「ありがとうございます」

 安心しきったおひぃさん。小動物みたいで可愛い。

「明日まで、食堂以外行けそうにないって不便ね。ビリヤード台の予約取れそうだから」

「あっ、いたいた。ブルジェナ嬢! 俺達と一緒にお茶しませんか?」

 南側から数名の男子学生。今度は何年生だ……。

 折角温和に戻ったのに、姉御の顔が再び般若みたいに変わっていった。

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