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第74話「試験の後の重苦しい空気」

 試験終了後の打ち上げのケーキは無くなった。

 厳密に言うと姉御以外……。

 夕食前に、俺とヴォルフは、実験棟の学長室に呼び出される。

 机の上で指組んで肘ついてる学長。右脇前で椅子にどっかり座る副学長。で、左手脇に立ってるティーダ先生。

 尋問とまでは言わないが、部屋を充満する重苦しい空気が俺らを押し潰そうとしてるようだ。単に、そんな感じに思えたとも言える。

 墓場の件と合わせて、ブルジェナ嬢についての事だった。

「知ってる事を語ってもらおうか」

「わかりません!」と、俺は力強く答えた。それに釣られて「ぼっ、僕もわからないです」と、ヴォルフ。

「レポートにも書きました。初めての事に逃げるのが精一杯で、俺もヴォルフも何が起こったのかきちんと覚えてません。すみません」

「ヴォルフ君。何故、サラマンダーは君を護ったのだろう」

 学長は問う。

「わかりません。一番近くにいて、ブルジェナ嬢が危ないと感じたのが僕だったからじゃないですか……」

 まぁ、そう答えるしかないがな……。

「わかった。しかしまあ、在学中の女子が紋章を発現させるなんて、ワシが三校在籍する中で初めてだよ」

 学長は上機嫌だ。強面の副学長も。

 メガネ先生だけは、険しいままでいる。

「おまけに、この学園に紋章が」

「その件は」と、ティーダ先生が学長を止めた。

「おっと、すまなかった。君達、もう帰っても構わないよ」

 そういう感じで俺らは解放された。

 パトリシア嬢がブルジェナ嬢に付き添っていたので、姉のジェルトリュードは独り。

 で、取り巻きのアナベル嬢ら似非三姫が俺らの穴を埋めるが如く、姉御とカフェテリアでお茶してた。

 ブルジェナ嬢は、夕食の時間になっても食堂に姿を現さなかった。

 ピンクちゃんは食堂に来てたので、飯食いながら俺とヴォルフでおひぃさんの状況を尋ねた。

「気分が優れないので、夕食は自室で取るそうです」

「精霊の紋章が痛いから?」

 俺は自分の左肩の下を指さす。

「それもあるかもしれませんが、精神的な負担でしょうか……」

「来週の月曜日に臨時の全校集会だそうですね……」

 沈痛な面持ちのヴォルフがなんか見ていて、俺はしんどかった。

「おひぃさんが紋章持ちになった事、全学生に発表するんや……」

「見られてしまったから、秘匿出来ないからだと思います」

 パトリシア嬢も難しい顔してる。

 二人とも食が進まない感じ。

「本来、おめでたい事やろう? 友達の俺らが不安な顔してんのも違うくない?」

「そっ、そうですね。ちゃんとご飯食べなきゃだめですよね。でないと、サっ……ブルジェナ嬢を支えてあげられないし」

 空元気なんだろう。ピンクちゃんは、無理して笑うと、頑張って肉とキャベツの煮込みを掻き込んだ。

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