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第68話「地の御曹司」

「ところでさ、この前の墓場の件、どうよ?」

「炎の柱ですか?」

「うん……」

 瘴気の種に侵され、瘴気の迷宮と化した南の町の墓場。

 瘴気の種と行方不明者を探索する為の選抜メンバーに選らばれた俺達。

 二チーム合流して休憩で使った広場は、実は大昔、無縁仏を適当に埋めた場所だった。

 瘴気に侵されたモグラが地中に潜ったせいなのか、魔物化した骸骨に俺らは襲われる。

 骸骨に囲まれ、先に五人は逃げられたが、俺、ヴォルフ、ブルジェナ嬢の三人は取り残される。

 骸骨に襲われる俺達を、突如現れた炎の柱が骸骨を燃やして助けてくれた……としか思えない状況だった。

 何で燃えたのかわからなかったので、「"火"属性魔法が後で効いたみたいです」と適当に報告しておいた。

「お前、二種属性持ちじゃないよな?」

「持ってません。母はわかりませんが、父方は代々"風"か無属性の配偶者しか選んでませんから」

 属性因子の関係で、婚姻制限設けてる口か。我が家もそうだが。

「うーん。おひぃさんも、母親が風使いで、 父親は魔法使えない人ってたからな」

 暫くの沈黙。

「女神様の御加護があった! それで、ええやん。みんな日頃の行いが良かったからって事で」

「そういう事にしておきましょう。ところで、失礼な事を聞いて申し訳ないのですが……」

「ん?」

「お顔の傷……」

「これ?」と、俺は左の髪の毛掻き上げた。「気になる?」

「はっ、はい」と、なんか申し訳無さそうなヴォルフ。「気が付いたら、お顔が……。子供の頃は怖くて聞けなくて……」

「あぁ、これね」俺は髪の毛を簾に戻す。

「子供の頃。本邸にいた時、ジェル姉と鬼ごっこしてて、火の着いたアロマポット持ってた母親にぶつかった姉御庇ったら、油掛かって火が着いて」

 俺は笑いながら話した。

「傷が残るって、かなり酷い火傷だったのではないですか?」

「腕のいい治癒能力者が身近にいなかったから。母親は、泣き喚く俺を抱き抱えて外に連れ出して、"地の癒し"掛けてくれたよ。メイドも俺に水バシャバシャ掛けてたし。でも、母親は地脈に届く程の技量はなかった。お抱えの使用人にも火傷の跡消せるほどの技量のある治癒系使えるのはいなかった。おまけに、近くに居る医者も出払ってていなかったし」

「傷痕で、心ない事を言われることもあったでしょ……。誕生会で、よそのお子さんと喧嘩した時……」

「キズの事言われたな。『きめーくせに』とか『オバケ』とか」

 思い出してワロた。そして、ヴォルフは、このキズの事を悪く言わなかったし、悪口言ってきたアホを止めてくれてた。ほんと良い奴や。

「子供なりに傷付いたけど、気にしてないよ。変なキズとかケロイドとか見たら、人間って本能的に拒否反応出るらしいし。皮膚感染の伝染病の可能性があるから。ただ、それをお口に出して『気持ち悪い』と言うか、表に出さず腹の中でのみ言うかの違い」

 感染症云々の話は、大学生だった姉2が飯食いながら俺らに話してくれた奴。有名な美容研究家とアニメ監督の対談だったような。

「誰が悪いというなら、俺も含めて皆悪いし、悪くもない。仕方なかったんだよ……」

 俺は、カルヴィン・クラインは傷跡を隠す為左の前髪を簾にしてる事を知ってた。だから、火傷の傷なんて気にしてない。そういうキャラデザなんだからと。

 でも、本当(ゲーム上)のカルヴィン・クラインはどうやったんやろうか。

 中身高校生で割り切りの出来る俺と違い、年相応のカルヴィンは大人しい陰キャだ。余所の子供や見知らぬ大人に悪し様に言われ辛かったかも。母親を恨んでいたのか、それとも姉のジェルトリュードを憎んでいたか……。

「母親は、ジェル姉のせいだって詰ってたけど、俺からしたら大人の責任やろと。それに、姉御の綺麗なお顔を守れて、このキズは勲章みたいなもんやで」

 チラリと左の髪を上げて、俺はニヤリと笑った。

「で、さぁヴォルフ。ブルジェナ嬢とどないよ?」

「どう? と言われましても」

「えっ? 俺とブルジェナ嬢がお茶してたら気にする程度には、気にしてるよな」

 によーっと俺はヴォルフの顔を覗きこむ。

「いやっ、そのっ、同じ"風"属性の学園で初めての友達ですし……。最近、彼女、色んな男子学生とお茶してるなと……」

「俺の時は、バイトのエイミー嬢も一緒だったからな。俺はあの娘に、姉御の友人以上の興味はないぞ」

「そうですか、良かった。一緒と言えば、彼女とパトリシア嬢が一緒にカフェテリアでクッキーを作ってた時に、二年の男子学生もいて……」

「だっ、誰?」

「剣術大会の引き分けの方ですよ。背が高くて」

「ポチ? レオ先輩?」

「レオ先輩の方です。ポチって誰ですか?」

「レオ先輩!? 何で?」

「クッキーの切れっぱしを貰って召し上がってました」

「なんでー! 俺、ピンクちゃんからクッキーなんて貰ってないぞ!」

「クッキーは、カフェテリアの新メニューの試食です。あの二人がスイーツ製作に参加してたから。僕も、サっ、ブルジェナ嬢から少しだけお裾分け貰っただけで」

 困る! ピンクちゃんが、レオ先輩と接触するのは!

 折角、王子様には我が姉ジェルトリュード。ヴォルフにはおひぃさんがくっついてくれてるのに。ポチは婚約者おるからええとして。

 今、フリーなのは、俺とレオ先輩だ。

 難関攻略キャラの行商のにいちゃんは、最近、学園に来てないし。

 カルヴィンルートにならないと、俺、死ぬやんけ!

 俺、青くなった。

前半戦の半分まで終わりました。

長いようで短いようで。

一応、異世界恋愛のカテゴリーにしてますから、恋愛要素はちゃんと入れてます。

本編の主人公とゲームの主人公の関係がいまいち進展してないですね。

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