第63話「瘴気の墓場の骨骨ロック」後編
「だからさ、丸鶏の解体は関節にナイフを入れてパキッとだよ」
姉2が解ったような口でほざく。
「だから、難しいんだよ! 黙っててくれ!」
クリスマスのチキンを解体する為に、おとんが包丁とナイフでチキンの足に突き刺してグリグリしていたな。
「外科医さんなら上手に解体するらしいよ」 と、姉1。
「うるさいわね! なら、あんたがやんなさいよ」と、おかん。
「イギリスだと、ローストビーフの切り分けとか、家長の仕事だよーん! がんばれー、パパーっ!」
ニタニタ笑う姉1。
「だから、ケンタで良いって言ったのに!」と、癇癪起こすおかん。
「丸ごとチキンは、子供のロマンやもん!」
付け合わせのフライドポテトを頬張り、俺はおとんがチキンの足を解体するのを待った。
あの日のクリスマスイブイブの夕飯。
骨を外すなら関節か。
「関節や! 関節に剣突き刺せ!」
「はいっ!」
俺とヴォルフは、剣を骨の手首の間接に突き刺してグリグリ回した。
一体この骨どもは、何でくっ付いてるんだか?
瘴気か?
「カルヴィン様! 土人形にも!」
振り向けば、土人形にも髑髏どもが纏わりついていた。
「ふざけんな!」
土人形動かして、骸骨一体一体をちぎっては投げして、西の遠くへほり投げた。
「あっ……」
おひぃさんが左肩の下辺りを押さえてしゃがみこむ。
助けたくても、ヴォルフはまだ動けない。
「痛い、痛い……」と、肩を押さえてうずくまる彼女に迫る骨達。
「おひぃさん!」
「……どうか……ヴォルフ様を……皆を守って…」
絞り出すように叫ぶブルジェナ嬢は気を失い、前のめりに倒れる。
ブオッ
広場の真ん中。細長い紅い炎塊が現れた。
ふふふふふふふっ
女の笑い声に似た炎のはためきが聞こえる。
突如として、燃え上がる骸骨達。
ヴォルフの足に纏わりつく骨も青白い炎を上げた。
「うわーっ!」
突然の炎にヴォルフは仰け反った。
不思議な事に、ヴォルフの服に燃え移らない。いくら戦闘服の素材が特種仕様でも多少は焦げるなりするはずなのに。
「何が起こったんや……」
呆然とする俺。
揺らめく大きな炎塊の中に、一瞬女の顔を見た。
ふふふふふふふふっ
風の中に響く女の声。
炎の柱が消えた。
我に返る俺。
「ヴォルフ、大丈夫か?」
「腰が抜けて立てません……」
ちょー!
しゃーない。
土人形を動かす。
ヴォルフの身体を引き上げる。土人形の進行方向右腕に彼を小脇に抱えさせた。
「おひぃさん!」
ブルジェナ嬢に駆け寄って、彼女の顔を近付けたが、完全に伸びている。
後ろから両脇持ち上げ、おひぃさんの身体を起こし、人形の近くまで持って行った。
両脇に同級生を墓石にぶつからん高さで抱えさせ、俺は土人形と一緒に一目散で広場を後にした。
「す、すみません。手間かけさせて……」
申し訳なさそうにヴォルフは言った。
「気にするな! 心配せんでも、"泥の弾丸"は後ろ頭からでも出せるんやで」
「でっ、でも……」
いっぺんに、複数の技こなす事が可能か心配なんやろな。
子供の頃、俺ら運びながら、"泥の弾丸"出す遊びなんて豪農さんの村でやってたから平気なんすよ。
前からも後ろからも、土人形の口からスイカの種飛ばすみたいに泥玉飛ばすなんて、姉弟の遊びやったし。ちなみに、同じ「地」属性のキャロリンは、口から出す"泥の弾丸"は出来ないらしい。育ちはいいので、口から種を飛ばすイメージがないから。
「それに。いざとなったら、風魔法くらい出せるやろ、お前!」
「はいっ!」
腰抜けた我が友人と気を失った同級生抱えた土人形は、ひたすらどすどすと走る。
「あっ、空がっ!」
ヴォルフが指差す方を見た。
真っ黒かった空が真ん中から溶けるように消えて、青と赤っぽいオレンジを乗せたキャンバスみたいな色を現した。
「瘴気の元、消えたみたいやな」
「助かったみたいですね」
男二人でほっと一息。
耳元で「瘴気の種は、消去した。行方不明者も全員無事だ。墓地にいる者は速やかに出口へ帰還してくれ」
副学長の声だ。くぐもってはいるがハッキリ聞こえた。
俺と土人形は普通に歩きながら出口へに向かう。
出口の向こう。
額に包帯巻いたランカ先輩と先に逃げた奴らが、こっちに手を振っている。俺ら班のメンバーは全員無事だった。




