第55話「ルール説明会と選手を決めましょう」
リレーのルールと、借りもの競争のルールを紙に書き上げ、会長らに提出する。
学園内に捨てる予定の箒やモップがいっぱいあったから、棒だけ八本貰った。
洗濯ロープに、麻紐、洗濯バサミ。借りもの競争の大道具は一通り揃った。
リレーは、外園の円路を四等分する。バトンゾーンを三十メートルに設定。
借りもの競争は、南北に等分。三十メートル毎に、バトンゾーン、指示書ゾーン、借りる用人物に分けた。
各学年の組分けは、先生らがやってくれたので俺はノータッチ。
能力の関係があるので、上手いこと分散させてくれてた。
組分け内容は、ガリ版で刷った紙が配られた。
昭和の時代は、コピー機が無かったとかでガリ版で学校のプリント配ってたらしいけど、俺初めて見た。
二年と三年の借りもの競争の走者選出は、会長と前会長が行った。
一年の選出は、説明会と共に俺の仕事。
大教室にて。資料を持って黒板の前に俺は立つ。
「リレーで二回走る人は決まりました。次、借りもの競争の代表選出に移ります。男子で出てくれる人は?」
これはあっさり決まった。士官学校組の奴らがさっさと手を挙げた。彼らの名誉の為に言うが、三年のアホの先輩らと違って、勝負事には真摯な態度で挑んでるだけだ。
で、女子。
なかなか手を挙げてくれない。
「はいっ」と、手を挙げたのが我が姉ジェルトリュードだった。
誰もいなかったらよろしくと伝えていたからな。
すると良い具合に三チームに別れていた似非三姫も手を挙げた。姉の取り巻きよ、ありがとう。
前の方に座っていたピンクちゃんとおひぃさんが、何か話している。「どちらか一人しか参加出来ないので、どうしよう」と言ってるのが聞こえた。
「あたし達出まーす」と、元気な声が後ろの席から。
カフェテリアでバイトしてるエイミー嬢が手を振り、隣の黒髪眼鏡ちゃんが申し訳なさそうに手を挙げてくれた。
「全員決まりましたので、これにて終了します。各チームの顔合わせと説明会は、明日の放課後この教室です。以上。解散して下さい」
これで一年の選出作業は終わった。
放課後の会議室。
「どうだった選出会は?」と、ケイリー前会長。
「うちは、男子は士官学校組がさっさと手を挙げてくれて。女子はなかなか立候補がいませんでしたが、姉上と取り巻き達で決まりました。皆さんところは?」
銀髪を指でくるくるセレスタ現会長。
「二年は、実力主義かしら。足が速そうな人を自薦他薦。穏便に決まったわよ。皆さん、納得してたし」
「三年は?」と、俺。
「うちは、女子は自薦他薦だ」
意味ありげだな。
「男子は?」
「拳で掴み取らせた!」
「はっ?!」
「立候補者が無駄に多かったので、殴り合わせた」
俺、目が点。
「いいんすか? 前会長の一存で、そんなことしちゃっても……」
「有志の抽選にしたかったのだよ。だけど、当選券の取り合いになってしまってね。それで実力行使に出た。立会人の副学長が構わないって言ったので。治療魔法の使用許可も出たし」
黒髪先輩クスクス笑う。それ狙ってたな。
副学長……。
学園長は、いかにも魔法使いのお爺さんみたいな髭眼鏡の好好爺だ。
が、副学長は、すえた金髪の中年でガタイが良く、プロレスラーみたいな見た目のグラサンかけたおっさんだ。メガネ先生も鍛えてるから良い身体してるが、そんな比ではない。
「欲しければ、力ずくで奪い取れ!」
あのおっさんなら言いかねない……。
それより殴り合っても構わんくらい、女子と一緒の競技がしたいって、三年の士官学校組ってどんだけあいつら女に飢えとんねん! あほか!