第52話「乗馬場の事件と食堂での噂話」
校舎を出ると、俺は外園の円状路を反時計回りに一周する。
軽く走ってみて気が付いた。思ってたより距離がある。
一学年九十人前後。二回に分けたら、時間どんだけかかるんだか……。
乗馬場の近くに来た。ヴォルフ達はまだいるかと思ったら、乗馬部の連中数名と馬一頭だけ。
早めに切り上げたのか……。
内園の門限もあるので、俺は足早に東門を目指した。
食堂にて。
ジェル姉は、取り巻きの三人娘と一緒だった。俺は俺で、同じ学年の「地」属性の男子学生ら四人で飯を食ってた。
同学年の「地」属性者で一番なのは誰かという話題になる。
やはり、我が姉ジェルトリュードだろうという結論になった。やろうと思えば、"泥の傀儡"五体生成とかやってのけるからだ。それもデカ目な奴を。
では、次はとなると、何を基準にするかで悩む。俺!と言いたいが、魔力値が滅茶苦茶高くはないので、良くて三位じゃないかなと。
「女子に限定すれば、二番手はキャロリン嬢じゃないかな。あいつ取り巻きやってるからか知らんけど、ジェル姉の土人形を譲渡操作出来るから」
ここまで言った辺りで、ヴォルフ、パトリシア嬢、ブルジェナ嬢が食堂に入ってきた。
そして、二年の島で誰かを探していた。
「あっ! いらっしゃいましたよ」と、ピンクちゃん。
三人は、エリオット殿下の真後ろに座っていたデリックの所に駆け寄った。
「ありがとうございました」「助かりました」と、三人で何度もお礼をしていた。
妙に目立っていて、食堂にいた学生の三割くらいが、彼らのやり取りを見ていた。
「あいつら、何かあったん?」
「ご存知ないですか? 乗馬の練習中、ブルジェナ嬢が落馬しかけて、殿下のお付きの方が助けたそうです」と、「地」学生1。
「マジで?」
「気を失ってたブルジェナ嬢を、医務室に連れて行くの見ましたよ、オレ」と、「地」学生2。
俺がおらん間にそんな事が。どうりで俺が行った時には、あいつらおらんかったわけか。
まあ、おひぃさん元気そうやし、怪我もなさそうやから、大丈夫だろう。
でもなんやろう。何かが凄く引っ掛かる……。