第51話「会長姉妹の秘密」
ある程度見えてきたので、三日くらい思案期間を置いて、後日再度詰める方向で話は決まった。
「あのー、カルヴィンはともかく、私まで呼ばれたのは何故でしょうか?」
姉のジェルトリュードは、俺の話を聞いてただけで特に案を出したりはしていない。おまけか?
「実は」「私達姉妹は」「ジェルトリュード様と同じだったのだよ」
「はっ? 誕生日か何かですか?」
「あー、確かに妹は、君と同じ誕生日だったね」
前会長が笑う。
「変則的な姉弟姉妹として語るなら似てますわね。姉は四月一日生まれで、私達双子ですから」
「「えっ?!」」
俺ら姉弟が一年違いでタメなら、会長姉妹は双子なのに年子と。
「お誕生日のお話ではないのよ」
「私達は、エリオット殿下の婚約者候補だったのだよ」
「「はっ?!」」
ケイリー前会長の言葉に、またまた同時に驚嘆。
「最終候補ですか?」
「そう、最終候補の五人の内の二人ね」
銀髪を指でくるくるさせて、現会長は意味ありげに笑う。
「当時は知らなかったわ。でも、王室お抱えの画家が来て、私達をスケッチしていった事が一度だけあって」
「子供の頃だから、何だったんだと不思議に思って、学園で殿下に聞いたんだ」
「五人の候補者の所には、画家がスケッチしに行っていた。その後、肖像画にして。資料と五枚の絵を見て、僕がジェルを選んだ。それだけのことだよ」
王子様、隣のジェル姉を軽く抱き寄せる。
そういえば、王都の別邸にいた時、画家さんが来てジェル姉だけ絵のモデルしてたな。
椅子に座ったまま足をプラプラさせてたジェル姉を、「落ち着きがない!」って母親が平手打ちして……。画家さんに、「泣き止ませて下さい。可愛く描けません!」ってキレられてたっけか。
「えーっ!? 会長姉妹がライバルだったなんて!今だったら絶対勝てる気はしませんわ!」
剣術大会の宣言してた前会長を「カッコいいー!素敵!」と、目輝かせて評価してた人だからな、うちの姉御。
「ジェル様で良かったですわよね、お姉様」
「どっちかが選ばれていたら、気まずいしね。それに……」
「お妃様って、どう考えても性に合わなくて」
「開示したのは、私達はジェルトリュード様の敵ではないと、知らせる為だよ」
「繰り上げ当選もお断りしておりますので」
他の花嫁候補者同士は分からんが、俺は何処の家の令嬢が候補者だったかを、知ってたりする。ただ、十家くらいがそうでないかな程度だったが。
打ち合わせて、まさか開示してくるとは思わなかった。
「王室としては、田舎の公爵家の娘より、銀行家の娘さんの方が良かったんじゃないですか?」
俺は王子様に上目遣いで訊ねた。
「うーん。お金に余裕があるかと言われるとそれほどかもしれないが、銀行家に頼らないといけないほど、経済状況は悪くないはずだよ」
いつまであんたはジェル姉抱いてるだよ。
「お姫様には、頼もしい王子様がついていらっしゃるから大丈夫だとは思うが」
「お気をつけなさいませ。お立場上、政争の具にされる可能性は十分ございます」
「足元を掬われないよう、ご注意くださいませ。カルヴィン様、姉上のジェルトリュード様を護って差し上げてください」
「心得ております」
取り敢えず今日は解散になった。
「デリックは何方へ」「乗馬場で、騎馬剣術の練習しに。ところで、首跳ねる練習したいから土人形を馬に乗せられないかな?」「人より重いですから、お馬が可哀想です」
姉上と王子様、物騒な話してんな……。
お付きと一緒に王子様と姉御は先に出ていった。
「次回は、姉御と王子様は抜きで」
「君の面白い事期待してるよ」
前会長は不敵に笑っていた。