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第50話「二学期がはじまったら、学生会に呼ばれた」

 湖の水練後から、学生が増え始めたので、俺は秘密の特訓が出来なくなった。

 八月の残りは、魔法値の増強訓練と、「地」属性魔法の強化訓練、剣術の稽古。

 ジェルトリュードが闇堕ちしてドラゴンになって大暴れしたら、俺、高確率で死亡だから、ちゃんと強くなっておかないと。

 そして夏休みは明けて、二学期。

 講堂での全校集会の後、学生会会長選挙の立候補者が発表された。

 立候補者が一人しかいないので、一週間以内に異議申し立てが全校生徒の三分の一なければ、その人で決定とのこと。

 立候補者は、湖で馬鹿先輩らに"氷の矢"を投げつけていた銀髪の氷大根先輩だった。

 九月いっぱいかけて、新旧学生会役員が仕事するらしい。その後も旧会長は卒業するまで学生会でお手伝いするのだとか。会長以外の人選は、会長自ら行うそう。俺は、小学校以外で学級委員とかめんどくさい事に関わらないできたので、関係ないと思っていたんだが……。

 異議申し立てが規定数に届かず新会長が決定して直ぐの事。

 その夜、宿舎の廊下にて。俺は、エリオット殿下に呼び止められた。

 新会長らが、俺ら姉弟に会いたいそうで、明日の放課後、学生会が使っている校舎の三階にある会議室に来て欲しいとの事。

 新役員のメンバーのお誘いかと思ったが、そうではないらしい。

 本当は、ヴォルフ達と乗馬の練習する予定だった。が、王子様直々のお誘いなら、乗馬練習はキャンセルするしかない。

 翌日の朝食の時、ピンクちゃん達に謝りを入れた。

「また埋め合わせはしますので、さーせん」

「大丈夫ですよ」「またの機会に」

「エリオット殿下からのお誘いなら仕方ないですよ」

 皆様、快くキャンセルを受け入れてくれた。

 そして放課後。

 校舎三階南側に学生会室がある。その隣の会議室。学園で一番大きな会議室らしく、先生らも使用してるらしい。

 授業の関係で俺ら姉弟は、会議室への到着が少し遅れた。

 黒っぽい茶色い木製のドア。割りと重厚で緊張する。

 コンコンッと俺がノックした。

「遅れて申し訳ありません」「失礼します」

 既にエリオット殿下は着席していた。

 お付きの学生が一人、王子様の後ろに控えていたが、それはデリックではなかった。

 テーブルの向かい側には、黒髪の前会長と銀髪の現会長が並んで座っている。

 髪の色以外はよく似ている。鼻筋とか特に。

 俺は殿下の左側、姉は殿下の右側に座らされた。

 会長らの名字はイズデイル。つまり姉妹だ。実家は銀行家だそうだ。

 お互い軽く自己紹介が終わった後、銀髪の現会長セレスタ先輩が本題を切り出した。

「実は、九月の終わりか十月上旬頃に、全学年交えた催し物をしたいと思っているの。カルヴィン様、何かアイデアがないかしら?」

「エリオット殿下のお話だと、君は子供の時から色々な遊びを思い付くそうだから」

 前会長ケイリー先輩が、にやりと俺を見つめる。

 思いついてるのではなく、知ってるから、知ってる遊びを皆でやっただけ。

 学年の違うお姉らの友達が家に来たら、テレビゲームだけでなく、トランプやウノみたいのに参加させられた。小学校でも、クラブ活動で、校庭でなく学校近隣の公園を先生に借りてもらってひたすら色々な鬼ごっこをするだけのクラブに所属してた。この世界どころか同年代でも色々な子供の遊びは知ってる方だとは思うが……。

「意図が分かりません。具体的には?」

「九月は、二年三年合同の野営訓練があるが、これは男子だけだ。十月半ばの収穫祭は、一年と二年だけ。二月の紅白旗取り合戦も二年と三年だけだ。十二月の太陽祭と学年末のプロムまで、全学年合同行事がない」

「十一月は?」

「「実技試験がある」」姉妹の声がハモります。そうでした。試験です。

「一学期は、剣術大会がありますが、あれもほぼ男子のみの参加です。入学してきた一年生が学園生活に慣れないまま、全体イベントに参加というのも大変ですので。二学期が良いかと。なるべく継続する的に続けられるような物がよいかと」

「コストもあまりかけたくない。有り合わせの物が使えるなら尚良し」

「コストを掛けずに有り合わせ……」

 椅子にもたれて、俺は軽く天井を見る。

「うーん。秋だし、運動会……か?」

「運動……かい? 何だね、それは?」

 黒髪の前会長が少し前のめりになる。

 やっべ、運動会なんてこっちにないんだ。

「あっ、その皆でスポーツ的なことしましょうイベントですよ。全学年が参加出来て、ゲーム性もある」

「例えば?」と、銀髪会長が軽く身を乗り出す。

「なんですかね。棒の上に籠つけて、布の玉を投げて、入った玉の数競う玉入れとか、でっかいボールを皆で転がしてゴールを目指す大玉転がしとか」

「道具を作るのが大変そうだな」

 前会長は腕組して困った顔をしている。

「綱引き。棒倒し。騎馬戦。パン食い競争?」

「ねぇ、パン食い競争って何?」と、ジェル姉が覗き込む様にこっちを見る。王子様も意味ありげににやりと笑った。

「洗濯の竿みたいのに、洗濯バサミつけた紐垂らして、パン挟んで吊るすんです。スタートから走っていって、口だけでパン咥えてゴールインするってだけの競技です」

 正直言って、パン食い競争ってくまちゃんの絵本や、ドラマでしか見たことないんだが……。

「面白そうなんだけど、全学年参加って無理じゃないかしら」

「ですよね。そもそも競技出来そうな場所って、闘技場くらいですが、各学年ならまだしも全学年ってのは……。ただ、マラソンするのも違うし……」

 しばらく沈黙が続く。

 ふと幼稚園の頃、それなりに盛り上がった保護者リレーが頭を過った。

「リレー……。でも、トラックがないし」

「トラックとは?」

「ランナーが走る場所です。楕円形の道みたいな所で。走者が走って次の走者にバトンやたすきを渡していく競技がリレーなんですけど」

「楕円形の道ならあるじゃないか」と王子様。

「はっ?」

「外園にある内園の塀と外園の塀の間の小路。ぐるっと内園を囲む形の路だよ。幌馬車二台ギリギリ通れる幅はあるよね」

 そういえば、体力増強訓練の授業で春は時々走ってたな。

「リレー! いける! 各学年用の色違いのバトンかたすきがあれば! 北と南の二ヶ所で、走者がバトン回していけば全員参加可能です。ただ、時間はかかりそうですが」

 なんか手応えが出てきた。

調整の為、次回2024年11月1日up予定です。

よろしくお願いします。

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