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第48話「泳げる者とそうでない者と」

 湖に浮かぶ小さい島。地図を見る限り、さーどーがーしーまーに似ている。

 上陸してどうこうするような場所ではないので、遠泳出来る奴は、島の周りを回って戻ってくるコースを泳ぐらしい。

 前世で俺は四年生くらいまで水泳習ってたから泳げないわけではない。が、二十五メータープールを数回往復する程度しか泳いだことないんだよな……。島の岸辺まで行って戻ってくるをしたいが、岩が多くて岸に上がれる感じではない。反対側は砂浜らしいが、そこまで行く自信ないな。

 子供の頃、豪農さんの村の川で泳げていたから、多分いけるやろうと思って湖に入って適当に泳いでみた。

 意外と泳げた。が、足が着かなくなったので怖くなって岸に戻った。どっかの小学校は六年生で一キロくらい遠泳するそうだが、ようやるよな。

 馬車の荷台に乗せてあるビート板代わりの木の板を取りに行っていたヴォルフが戻ってきた。

 姉御も王子様が、岸辺で水掛けあったり、湖に走っていって水面に潜ったりしている。お付きの学生二人は、岸辺から主の様子を伺っていた。脇に短剣携えてるあたり……。お疲れ様です。

「仲がよろしいですね、お二人」

「うん。ええことや……」でなかったら、王子様、ピンクちゃんの攻略対象者になってしまうやんけ。

 仲良しさん二人を尻目に、俺はヴォルフに木の板の先端をがっつり握らせて、水に浮かせる。

「そのまま足をバタバタさせて」

「こうですか?」

 水飛沫が無駄に多い。

「膝下からじゃなくて、足真っ直ぐで太もも動かすんや」

「こうですか?」

 ヴォルフの身体がぐいと前に進んだ。

「うん。そんな感じ」

 ヴォルフを追いかける。水が俺の肩位の位置にある。

「そろそろ止まろ。足着かなくなるぞ」

 俺は木の板を掴んだ。

「ヴォルフ様、カルヴィン様」と、パトリシア嬢の声。ボート小屋の辺りの湖の中からブルジェナ嬢と一緒に手を振ってる。

「頑張って下さい」と、おひぃさん。

「うん、頑張る……」と、おぼっちゃん。

 女子二人が水面に潜る。あっちはあっちで楽しくやってるようだ。

「なんか恥ずかしいな……」

「出来ないから、練習してんだろ。地道に頑張ろうぜ」

「はい……」

 水面が胸の高さの場所まで戻って、またバシャバシャばた足。

 いい加減疲れてきた頃。

「ジェル様、水練手伝って下さい」と、似非三姫の白雪姫がジェル姉を呼ぶ。

「ごめんなさい、殿下。約束がありましたので」と、姉御は殿下のもとから去っていった。

「がんばってねー」と、王子様。岸に上がり、黒髪の家来の肩に手をかける「あー、楽しかった」

「殿下。一泳ぎさせていただいてよろしいでしょうか」と、デリック。

「ああ。いいよ。行っといで」

「それでは」と、助走をつけて湖に飛び込んだ。ほとんど音がしない。

 もう一人のお付きの学生と一緒にデリックを眺めるエリオット殿下。

 岸辺に戻る俺らも、王子様の家来の泳ぎを見つめていた。

「速いですね」「めっちゃ速いな」

 デリックが島を反時計回りで回ろうとする。

「はっ!」と、湖に走り込んできて飛び込んでいったのが一人。

 レオ先輩だった。

 奴を追いかけるように物凄い速さで泳いでいく。

「レオ先輩も凄いですね」「バケモノや、あいつら」

 二人に続いて、五、六人の筋肉野郎が飛び込んでいった。

「女子たちー! ボートの用意してくれるー?」と、叫ぶエリオット殿下。

「はーい」とボート小屋の姉さんらが、ボートを二台用意して、二人ずつ乗り込んだ。魔法で水か風を使って動かしているのか、オールを漕いでる力より速くボートが動く。そして島の裏手に向かっていった。

「あのー、殿下、ボートって何故?」俺の問いに「あの中の奴ら、何人か絶体沈むから」「はっ?」

 ヴォルフと顔を見合せ首を捻る。

「うちの家来と、アレックスは大丈夫だよ。ほーら、戻ってきた」

 前髪かき上げてデリックが浜辺に上がってきた。

 後ろの長い毛を絞りながら「只今戻りました」

「お帰り」

 遠くから女子らの黄色い声。

 水も滴るってか、長身筋肉なイケメンは違うよな。

「短剣持ったままよく泳げましたね?」

 ヴォルフがデリックの腰の短剣見て驚いている。

「水草が絡まる可能性もありますし。それ水棲馬が出る事もあるそうなので念の為」

 涼しい顔で答える王子様の家来。

 なんで、こんな筋肉あんのに泳げるねん!? 水泳選手と違って、体操選手とか格闘家とかガチ筋肉だから脂肪が足らなくて浮かないから泳げないってテレビでやってたの見たぞ。あれ、ウソか?

「ぷはー」と岸辺に上がってきたのがもう一人。茶色の髪を犬みたいにプルプルする。

「はー、負けた!」

 いや、よーいドンしてないから。距離あったよね。なんで勝てると思った。そもそも、こいつも筋肉ダルマやんけ!

 筋肉の強さで、筋肉の重さを凌駕するエネルギーを出して、水搔いてたんか!

 遠くから「やっぱり、溺れてます!」と、女子の声。

 島の向こうで見えない。

 男子数名がなんとか泳いで戻ってきた。

「回収しましたー!」と、島の向こうから。

「息があるんだから、人工呼吸なんかするわけねーだろ!」と怒声も続けて。

気がつけば50話目。

読み返せば、筋肉回……。

水着回は何処へ……。

いやはや。それだけです。

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