第3話「俺とかゲーム攻略対象キャラとかについて」
前世の記憶を思い出した翌日。
俺は使用人にねだって、表紙が頑丈なノートというか、白紙の日記帳を用意してもらった。
ゲームの舞台は、魔法を教える学園。
五歳の誕生日からおよそ十年後。
クライン公爵家の姉ジェルトリュードと俺カルヴィンは、王立魔法学園に入学する。
姉は典型的悪役令嬢。ただの意地悪な女通り越して、完全にヒールキャラだった。
姉1 姉2が、このジェルトリュードに「性悪」というあだ名つけても、「うん。そうですね」としか言えないような造形をしていた。
いかにもお嬢様巻き巻きポニーテールで、背は割と高く、見目は良いけどきつい顔立ち。母親のヒスばばぁに似た、いやそれをさらに醜悪にしたようなつり目。
ワタクシ、意地悪キャラでございますわよ!と言わんばかりのキャラデザ感。
「所詮は、平民! 下賤民のすることは違うわね! おホホホホホホッ!」と高笑い、してたと思う。
唯一の長所は、お胸が割りとデカいこと!
俺が記憶してるジェルトリュードのイメージはこれだ。
時々、姉1姉2がリビングのテレビにゲーム機を接続していたり、据え置き機をポータブル状態にしてのダイニングテーブルのとこでプレイしていた。それを、おやつ食いながら端から見ていたので、なんとなく覚えてるいる。
そもそも、ジェルトリュードなんていう仰々しい名前、人生で初めて聞いたわ!と。
で、なんかネクラで陰キャそうな片目を髪の毛で隠してるジェルトリュードの弟、カルヴィン。初めて聞いた時、「カルビ」と聞き間違えてた。「カルビ、カルビ」って、なんでこいつら焼肉の話してんやろと、首を捻ってた。今となっては自分に草生える。
本来なら、こんな顔に傷がある地味キャラ印象に残らないが、姉1が「弟ルート出来ないよー! また死んだーっ!」と叫んで、必死こいて攻略しようとしていた。
姉1姉2の会話と端から見てたゲームの内容を、俺はノートに書き記していった。
でないと、十年後の入学時に、きれいさっぱり忘れている可能性もあったから。
やっかいなことに、 お姉二人は、登場キャラを正式名称で呼ばなかった。
呼んでたかもしれないが、俺には記憶がない。ゲームの音声から、ジェルトリュードや俺カルヴィンの名前を覚えてたくらいだから。
コードネーム的に、それも一キャラに複数ある場合もあり、書留めながら登場人物を思い浮かべるも、さっぱりわからない。まだ会ったことないし、そもそもゲームのタイトルすら俺は覚えていないから。
頭の悪いお姉らのプレイする乙女ゲームなんぞ一々覚えてられるかよ。
「性悪」「ジェル」ジェルトリュード。
「弟くん」「片目」「陰キャ」は、まぁ俺カルヴィンやろ。
「王子様」は、きっとこの国の王子様で、ジェルトリュードと婚約してたが、なんか断罪イベントで、彼女は婚約破棄されてたような……。
「桃子」「ピンクちゃん」これは主人公でプレイヤーキャラ確定。お姉らは「うちの桃子」とか「うちのピンクちゃんは」と言っていたから。
問題は、ここからや。
「おひぃさん」「おぼっちゃん」「ポチ」「レオくん」
「行商さん」「インド先生」「メガネ先生」
「赤いオスカル」「ブラコン」「三人娘」「お兄ちゃん」「シロイさん」
「マリオさん」「オタク三銃士」
無理です。誰が誰だか、わかりません。
先生が付いてるのは、学園の先生やろ。
後は、キャラに付随したであろうエピソードを思い出して適当に書き出していった。