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第44話「夏休みのボランティア活動」

 夏休みに入ると、次々に学生達は帰省していく。

 パトリシア嬢は、同じく方向に帰省する女子学生らと一緒に馬車で故郷に帰っていった。

 ブルジェナ嬢は、二人の同級生と一緒にヴォルフの馬車に乗せてもらって王都に行った。

「なんで王都に来ないんだー!」と、王子様はジェル姉に嘆いていた。学生してるお付きの人ら含め俺らは困り顔というか呆れてた。あんたどんだけジェルトリュードの事好きなんだよ……。俺的には、その方がありがたいが。

「来年は考えておきます」として、王子様達を見送った。

 交通費節約の為なのか残っているのは、勤労学生達。

 有志の補講授業受けてる以外に、園庭や校舎の掃除なんかもしていた。

 そうでない学生。時期をずらして帰省する奴らか、俺らみたいに家庭環境がちょっとあれな奴らもいたようだが……。

 うちは、メイドのエマに十日程の暇をやって王都に戻ってもらった。

 建前は「有事において、平民の振りする為に、最低限の日常生活が出来るようにする訓練」

 本当は、エマっち経由で王都の別邸の執事に頼み、とある事を調べてもらう為。姉御には内緒!

 人がいないと寂しいもんで、一学期に関わったことのない同じ学年の学生や別の学年の先輩らと一緒にご飯食べたり訓練受けたりしてた。だから退屈はしなかった。

 さて、学園の東と南に町がある。町にはちょっと大きめの教会があり、教会が運営する孤児院がある。

 孤児院の子供達の世話をするのが、学園の学生に与えられたボランティア活動だ。朝飯食って馬車に揺られて、やる事終わったら夕方馬車で帰る生活が一週間程。

 俺らは南の町の孤児院でボランティアに行った。

 先生経験ある神職の人が、幼稚園くらいから低学年くらいの子供に同時に授業をする。子供の学習レベルがバラバラなので、俺らは補助監督みたいに子供に文字の書き方読み方、数字や計算を説明してやる。

 算数系を教えるのは俺で、文字とか国語系はジェル姉が上手だった。

 勉強を見てやるだけでも懐かれる。これがみんなで遊びましょうとなると、めちゃくちゃ懐かれるわけで……。

 俺が色々な遊びや物語を知ってるからか、まぁ男女関係なく、お子さまからモテモテだった。もっと年いってから来てね一部の女子とか思いつつ。

「バムとケロ」のケロちゃんみたいな無邪気にやんちゃなチビッ子に手を焼かされたり、昼飯やおやつの時間に大喧嘩するガキ共を仲裁したり。女子学生、特にうちの姉御のお胸を揉もうとしてくる、というか揉みにくるガキがいたりで、てんやわんやだった。

 ボランティア期間の一週間が終わり、最終日に子供らが手紙をくれた。

 帰りのは馬車の中。

 俺ら以外のボランティア参加学生らも、貰った手紙を読んでいた。

 微笑ましく思ってる中。姉のジェルトリュードは震えていた。

「遊んでただけなのに。また会いたいって……」

「そんな泣くことか?」

「ありがとうって。私、大した事してないのに」

 ハンカチで涙を拭いグスグスしている。

 多分、もう何年も会ってない村の友達の事も重ねてたるんやろう。

 ちょっと気になったのが、いつも部屋の隅っこに座り一人で人形遊びをしている女の子の事。

 みんながフルーツバスケットやハンカチ落とし等をしている時、部屋の隅で布の人形数体並べて遊んでいた。ジェル姉や他の学生が話かけても無視していたので無理強いはしなかった。

 最終日の今日。俺がその子に近付いて話かけようとした時だった。

 振り向く事なく「これが、最後」

「?」

「彼女は希望。耐え得る不幸の闇の先。あなたも希望の一つ」

 妙に大人びた口調で遊んでいる。邪魔するのもなんだかなと思ったが、ちょっとだけ構ってみる。

「何ごっこしてんの?」

「なんだろう。女神さまとお使いごっこかな?」

 まぁ、教会の孤児院やし、神様相手にごっこ遊びするのも普通か。

「おやつですよー!」

「わーい!」

 孤児院の世話係の呼び掛けに、人形をほったらかしにして食堂にかけていく。

 あんなに何日も人形に張りついて遊んでいたのに。

 責任者の人に、「あの子、いつも大人しい子なんすか?」と、聞いた。

「いえ。いつもはお外遊びや、他のお友達と一緒にいるのが好きな子なんですけど。珍しいですね」と不思議そうにしていた。

「どうしたの? 浮かない顔して」

 一頻り泣いてスッキリしたのか、ハンカチをポケットに仕舞い、ジェル姉が俺に語りかける。

「うーん。一人、人形遊びしてる女の子が気になって」

「あー、あの子ね!ずっと人形で遊んでけど、今日はやっと懐いてくれて、帰り際まで私の側をちょこまかしてたわよ。知らない人達が来たから、緊張してたんじゃない?」

「そうか……」

「あの子、別れ際に、抱きついてきて『がんばってね』って、応援してくれたし」

「えっ、何を頑張るの?」

「さぁ?学生生活じゃない?」

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