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第42話 その11「友情の証とさよならと」

 冬の太陽祭に合わせて、豪農さんを通してマリ姉宛て色々送った。

 内職のお針子さんが使う裁縫道具一式。カラフルな糸を沢山揃えた刺繍セット。そして、我が家や使用人達からかき集めた古着や古布。そして手紙を添えて。

「使用人が誤ってピエロさん人形を処分してしまいました。つきましては新しい物を作っていただけないでしょうか? 材料はお送りします。余ったらお好きに利用下さい」

 母親が捨てたとは絶対に言えないからな……。

 翌年の夏。

 後に俺のトレードマークになった傷を隠す前髪に、皆心配したり驚きながらも、前年の夏知り合った子供らは迎えてくれた。

 何人かの子供達は、マリ姉宛てに送った古着のリメイクを着ていたので、ちゃんと俺の意図が伝わったと安堵した。

 よりピエロさんらしいデザインになった人形をマリ姉から受け取り、ジェル姉は目を輝かせて喜んでいた。

 さて、俺達姉弟は、子供らと外で遊んでばかりいたわけではない。

 通り雨が降ったある日の午後。

 豪農さん宅の土間で遊ばせてもらっていたが、ある子供が文字を学びたい、数を知りたいと言う。だから、我が家から持ってきていた落書き用の紙を用いて、勉強会が行われた。俺は算数、ジェル姉は文字担当。

 それぞれ順繰りに教えていた。

 中身が高校生だから、中等教育程度の内容はいけるのよ。

 それから毎日一時間弱、豪農さん宅の土間借りて勉強会。

 気が付いたら村のほとんどのガキが、お勉強会に参加してた。

 農作業の手伝いの関係もあって、村の大人達から煙たがられたが。

「町に出稼ぎに行く事になった場合、名前以外の情報も読み書き出来ないと、悪い人に騙される危険性があります」と、教育の必要性を説いた。

 豪農さんも思うところがあるらしい。

 町と違って村には学校はない。仮にあっても通える条件が限られる。

 豪農さんは、毎年春先から数ヶ月、町から家庭教師を住み込みで雇って二人の子供らに勉強させてたそう。

 なので、なんで分数の割り算を年下の俺が豪農さんのお子さんに教えてんだかな状態だったし。

 さて別の勉強と言えば、俺らの魔法修行も怠らずやってた。

 柔らかい畑の土なら直ぐ魔法は展開出来る。が、硬い土での魔法の使用はなかなか骨が折れる。

 どんな状態の土でも、魔法が展開出来るように、ならなければならない。

 本邸の庭も、王都にある別邸の庭も、魔法利用可能な部分は掘り返されまくって、"泥の傀儡"の強度訓練とかにしか使えない。

 そういう理由で、村の開墾予定の土地を借りた。

 鍬一つ入っておらず、大小様々な石が転がる固い大地。

 頑張った結果。数年かけて、柔らかい土と同じ様に術の展開出来るようなった。

 秒で、"泥の傀儡"が立ち上がった時には、お付きのピエールと三人で、跳び跳ねて大喜びした。

 開墾予定の土地は、土人形に石等をどけさせ、畑にしやすい状態にして、村に引き渡した。

 帰宅後。これを知って母親は切れる。

「貴族が領地の農民の代わりに働くなど、どういうつもりですか!」

「働いていたのではなく、魔法修行です。開墾は修行の副産物。それに、領地の耕作面積が増えれば収穫高も増えます。領民も、領主も、跡継ぎの俺も得しかありません。開墾した土地をさっさと畑耕して、種蒔いてくれれば、税収増えるじゃないですか?」

 俺は笑いながら答えてやった。

 でも、楽しい田舎の生活も終わりを告げる。

 我が姉ジェルトリュードが十一歳になった初夏。

「今年は何しようか?」と、二人で話していると、「もう村には行っては行けません!」と母親。

「なんでよ、お母さま!?」

「立場を考えなさい。貴女は、エリオット殿下の婚約者ですよ。将来のお妃様です!」

 そんなの関係ねー!と言いたかったが、俺は納得した。

「また、私の楽しみを奪うのね……」と、ジェル姉は泣いていた。

「それは違うぞ」と、俺は姉の頭を撫でた。

「もう潮時だよ。大人になったってこと」

「また来年会おうねって言ったの。約束を破ることになる」

「それは、俺とセバスでなんとかする。みんなわかってくれるよ」

 グスグスと泣いていたが、ジェル姉はなんとか納得したようだ。

 そもそも、お付きのエリーヌの縁談が決まって、次の後任どうするって悩みどころだったんだよ。

 それに、ワルガキ三人組でも中学生くらいになってて、農作業の手伝いとかしてたから遊べなくなってた。

 小学校中学年くらいだと、親も遊んでても許してくれてたようだが、ガタイも大きくなった高学年くらいだと、畑仕事手伝えってなるがなと。

 それに、ワルガキの奴ら、割とジェル姉の事好きだったよう。で、俺に「何をあげたら喜ぶのか?」聞いてくる。

「虫とかやめろよ。きれいな花とかきれいな小さい石までやぞ!」

 そしたら、最後になった夏の別れの日。

 川で拾ったらしいキラキラ光る小石をくれた。黒い塊のようで所々紫色の鉱石が含まれていた。

 アメジストか何かやろと思ってたら、魔石だったらしい。

 それで、親父らは、領地内の魔石調査をしたとか小耳に挟んだが、その後どうなったかは俺は知らない。

 結局、執事のセバスにお願いして、豪農さんに色々送ってもらった。俺らと遊んでた子供らには、簡単な算数と文字を覚える教材とクッキーの缶詰めを。マリ姉には、毛糸の束。そしてまた古着等。

 田舎に行けなくなったジェル姉は、同じ年頃の良家のお嬢さまと友好関係を築くようになる。

 やっべー娘らだったらどうしようと観察してたが、穏やかな娘さんらで、悪さすることもなく、まったりお茶会等する関係で収まってた。

 翌年の三月末。俺達姉弟宛てに、豪農さんから荷物が届いた。

 一緒に遊んだ子供達からの寄せ書きの様な手紙。拙い字で、「元気でね」「また遊ぼうね」と書かれていた。

 それから、マリ姉手作りの人形二体。

 二頭身で、ピエロさん人形みたいに単純な作りだ。毛糸を染めてジェル姉と俺を模した 人形に、俺らはびっくり。

 俺の人形は俺が貰おうとしたのに、二つとも嬉々として取られてしまった。

 時々、ジェル姉は人形遊びに使ってた。

 あの人形、今は何処に行ったやろ。

 本邸か別邸の使わなくなったおもちゃ箱の中やろか……。

ちょっと文字数の割に話数多かったかも。

すみません。

次回から本編です。

夏と言えば……、あれですよ、あれね!

挿絵が無いのが残念です。

(ワイは絵が描けない……)

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